自閉症息子が「くるくる回る」のはどんなとき?「常同行動」から感じた友達との関わりと息子の気持ち
くるくる回る
自閉スペクトラム症のある太郎。
回るときはほぼ無言。ときにはスローモーションで回ったりもする。
寝る前にはくるくる回り、その後はコミック本をひらいて数分で眠りにつく。
それが太郎のここ数年のルーティンだ。くるくると回ってるときの太郎はだいたい穏やかな顔をしている。ときには汗も出るほど回っている。
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あまりにも穏やかな表情で回るものだし、それがもう私たち家族の中では当たり前となっている。
発達検査を受けた際、心理師さんやほかの専門家の方から「常同行動を止めたりすることはありますか?」と聞かれたことがある。この質問があるということは、止めてはいけないってことだなと先を読めた。それは私も分かっていたし、ほぼ止めることは今までもしなかった。
過去に一度、激しく高速で回ってたときは流石に落ち着くように声がけはした。表情も強ばってたし、心の整理がついてないのが丸見えだったからだ。
太郎は大人なしで友達と外で遊ぶことをしなかった。理由は私にもハッキリとは分からないが、外への不安があるのか、家が好きなのか、太郎にしか分からない理由がたくさんあるのだろうと思った。
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くるくるを解釈する
ある日の休日、家のインターホンがなった。
ピンポーン。モニターに写ってたのは太郎の友達だった。
私は太郎に声をかけた。
「太郎、○○君だよ、対応してー」
太郎の顔がこわばった。そして高速でクルクルと回り出した。
「太郎とりあえず、ほら、インターホンに答えよう」
太郎はカチンコチンにかたまりながらインターホン越しに友達の対応をした。
「は、、は、、はいーー!」
「太郎ちゃん、遊ぼーー公園行こーー」
太郎はしばらくかたまった…。
「む……無理!!!」
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友達は少し残念そうな顔をしたが「OK!分かった」
そう言ってインターホン越しの会話は終わった。
くるくるくるくる。くるくるくるくる。どんどんどんどん加速する。
太郎はリビングをくるくる高速で回った。
いろいろな感情が私には見えた。友達と遊びたい、外へ出るのが不安、遊び方が分からない、突然の誘いで驚いた、友達の誘いを断ってしまった。太郎は口にはしないが私にはそんな風にそのくるくるから勝手に解釈した。
あまりにも表情が強ばってるし、高速くるくるだったものだし、見るに見兼ねて太郎に声をかけた。
「太郎、急な誘いはびっくりしちゃうから、学校で友達と約束してみたら?準備とかしたら大丈夫かもだよ?」
この声掛けに太郎のくるくるがピタッと止まった。
「約束!!!してみる!!」
名案だ!!的な表情を太郎はした。それからくるくるはゆったりとなり表情も穏やかになった。
そして数時間後に太郎はこう言った。
「お母さん、チャレンジのチャンスはまだあるよね」
なんだか心が癒された。
あとがき
太郎のくるくるは、寝る前や手持ち無沙汰なときに見かけます。何かに集中してるときは静止してますが、なにをしていいか分からないときや空いた時間にはくるくるくるくると回ってます。
本人は「落ち着くのと、回りたいから回る」と言ってました。
もう一つのパターンが、イレギュラーな何かが起きたときもくるくると回ります。心の整理をするためなのか気持ちが行動にあらわれてるのか、突然の出来事をその場で言葉にすることが苦手なため、くるくると回るのかなぁと母の私は思いました。
常同行動にはさまざまな説がありますが、ホントのところは本人にしか分からないわけで…私にも本当のところは分かっていませんが、私から見た太郎のくるくるはこんなところです。
何度か一緒にくるくる回ってみましたが、目が回って気持ち悪くなりました(笑)ある意味すごいと感心しました。
執筆/まゆん
(監修:鈴木先生より)
自閉スペクトラム症のあるお子さんは自己刺激としてくるくる回ったり、ジャンプしたりすることがよくあります。手をひらひらさせる常同運動のあった成人の自閉スペクトラム症のある方は何かを話すタイミングでやっているので止めないでほしいと以前話されていました。よほど他人に迷惑をかけていない限り止める必要はないようです。
自閉スペクトラム症・発達性協調運動症の診断の一つとして、OT(作業療法士)が、お子さんを回転盤に乗せて左右に回すことがありますが、自閉スペクトラム症のあるお子さんは回転後に眼振が見られず目が回らないことが多いようです。