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自閉症息子の「独特な視点」をユニークだと思えたとき――「普通がいい」から「この子がいい」へ。母の価値観を変えてくれた息子の存在

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自閉スペクトラム症の息子がテレビのニュースを見て「気になるポイント」


テレビから、JR山手線が止まっているというニュースが流れました。

私はそのニュースを見ながら、予定外のことが起こるとパニックになりやすい息子に「もし、電車が止まってもパニックにならないでね」と伝えました。

すると息子は、
「夕飯は何時になるのか?」
「お風呂は何時に入るのか?」
としつこく確認してきます。

電車が止まって閉じ込められること以上に、その後予定していたことがどうなるのかがとても気になるようです。

電車が止まってどうすればよいのか、どうやって帰ったらいいのかといったことが不安になるのではなく、キッチリカッキリ決めていた予定が狂うことを恐れているようです。

「心配するところはそこなのね。予定が崩れるのが不安なのね。」と思いました。

さらに…

電車が遅延する状況になったわけでもく、自分の身に起こったことでもないのに
「夕飯は7時20分」
「風呂は8時11分」
と予定を組み直そうとしています。

いつ電車が止まるかも予測できるものではなく、いつどのくらい止まるか分からないのにです。

私はそんな息子の様子を見て、「視点が違うのね。面白いね」と思いました。

自分に置き換えて言葉を変えられない


自分が泣いたときも、他人を指して言うように「泣いている」と自分を指さして言います。
「いってらっしゃい」「いってきます」のやり取りができないのと同じです。

私はファミリーサポートの仕事で2歳の子どもを預かっているのですが、あるとき、その子が転びました。息子は「自動的に転んだ」と私に言いました。

確かに息子から見たら、ひとりで転んだ様子を見て、自動的に転んだと映ったのでしょう。
もしかしたら、自分が突き飛ばしたわけではないと言いたかったのかもしれません。

表札への違和感


3年前、私の父が亡くなった当日のことです。病院から実家に帰ってきたとき、表札を見た息子。その表札が私の父のフルネームであることに気づいて
「(亡くなっていて)いないのに表札外さないのか」と息子から言われました。

「みんなが悲しんでいるときに、そんなこと言わないで」と思いました。と同時に悲しみにくれながら息子の言葉を聞いて「そこか!これも息子らしいね。」とも思いました。

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同じ献立にこだわる


息子の外食時のメニューは、いつも決まっています。どのファミリーレストランに行っても、たらこスパゲッティとほうれん草のソテーとポタージュを注文します。
息子の場合は店が違うのはOKみたいです。

表現の天才!


息子に手伝いを頼んだら「僕は使用中だからダメ」と断られました。
別のことをしているので手伝えないという意味です。

「嫌だ!」と断られたら腹が立ちますが、こう言われるとそうでもないので不思議です。

擬人化や見立て遊びができない


幼いころ、ぬいぐるみに「餌をやる」と言っていました。ままごともできませんでした。擬人化したり、見立て遊びをするのは難しいようでした。

ジャガイモを「この子」と言われて戸惑う


料理教室で、先生から「この子を切ってください」と言われ、「この子」を探している風でした。
「子」という表現から、野菜を指しているとは考えつかなかったからです。

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しばらくして、それがジャガイモを指していることが分かったのか、ようやくジャガイモを切りはじめました。

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殿様じゃない


あるとき、威張っている息子に「あんた、殿様だね」と嫌みを言ったら、「殿様じゃない!立石○○だ!(←自分の名前)と言われてしまいました。比喩が分からないようです。

まとめ


まだ息子が4歳ごろのことでしょうか、療育で窓越しに子ども達の様子を見学していたときのことです。

隣にいた、あまり親しくない親御さんから
「立石さん、今度、産むんだったら定型発達の子どもがいいよね」
と同意を求められたことがあります。

あのころは…
「息子がいらないとは思わないが、普通の子になってほしい」
「少しでも皆と同じようにできるようになってほしい」
と思っていました。

ですが今、私は声を大にして、「今度もこの子がいい」と答えたいです。


自閉スペクトラム症の息子は、“普通”という呪縛から解放し、私を自由にしてくれた存在です。これは決して負け惜しみではありません。

そして、変わった視点で楽しませてくれます。

細かいことですが、息子と暮らしていると、いまだに面白い発見があります。
そして、そのように思えるようになったことが、私の成長です。

執筆:立石美津子

(監修者・鈴木先生より)

自閉スペクトラム症のある方は予定の変更が嫌いです。電車が時間通り来ないと時刻表を見せて駅員に苦言を呈すこともあります。
自閉スペクトラム症がある人は、自分を基準にものごとを理解する傾向があります。

例えば、自閉スペクトラム症がある幼児はバイバイするときにも自分に掌を向けて行うことがよくあります。これは、皆がバイバイするときに自分に掌を向けているからです。
また、具体的に言わないと通じにくいため、「あれ取って、それ取って」では分からない場合が多いのです。「白いテーブルの上にある、黒いボールペンを取って、ここまで持ってきてください」と言わないとだめなのです。
外来に来た患者さんに「Aくん、こんにちは」と言ったら、僕は「Aくん」ではありません。「A」ですと訂正されることもあります。
こだわりや特有の感覚などをいかしてタレントとして活躍し、楽しませてくださっている方もいらっしゃいます。

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