自傷、退職…子どもの有事に「聞いてほしいことがある」と言える存在を得て。発達障害娘の存在がもたらしてくれた、かけがえのない仲間
きっかけは、娘が紹介してくれた「発達障害」に関する本だった
視覚優位もあってか、娘は小さいときから本が大好きでした。
書籍だけでなく興味のある内容であれば、新聞、辞書、家電の説明書も読んでいました。
中学生になると娘は学校の図書コーナーにある発達障害について書かれた本を読むようになりました。そしてよく私に「ママはこの本知ってる?」と尋ねてきました。 私は娘に教えてもらったある本に感銘を受けブログで紹介をしました。そのことがきっかけで筆者の上野景子さんと連絡を取り合うようになりました。
初めての親の会
上野さんは本の執筆のほかにテレビや講演会で発達障害の啓発活動を行っていました。また親の会の代表もしていました。
私は過去にいくつか親の会に加入したことがあったのですが、集まりの日と学校の行事の日が重なったり、下の子が病気をしたりとタイミングが合わず、継続して参加することはできませんでした。娘が学校でつらい思いをしていた時期は、娘がしょっちゅう早退していたので会費だけ払って集まりに参加できないまま退会したこともありました。
それ以来、親の会とは無縁の生活を送っていたのですが、このときはタイミングが良く、私は上野さんに誘われ親の会に参加することになりました。
このご縁が、子どもが成人したあともずっと続くとは、そのときの私は想像もしていませんでした。
緊張しつつ集まりに参加すると…
親の会といっても会費などはなく、参加できる人がファミレスなどに集まり、昼食を取りながら近況を語りあったり、お互いの悩みを話したりするというものでした。
「以前は講師を呼んで講演会を開いたりもしてたんだけどね」と発足当時のことを笑顔で話す上野さん。
「20年前は発達障害という言葉を知らない人がほとんどで、いくら親が障害について説明しても、なかなか話を聞いてもらえなかったの。でも“専門家の先生”の講演会を開催したら学校の先生方も理解してくれるようになったの」
過去の苦労を気さくな口調での語る彼女はとてもチャーミングな人でした。
頼りになる先輩ママたちの情報やアドバイス!でもそれだけではなくて…
その言葉通り、参加している先輩ママさんたちはみんなそれぞれ多くの引き出しを持っていて、地域の相談先や学校、病院や就労支援事業所、自治体の障害者支援制度など、幅広い情報を得ることができました。
でもそこは決して情報を得るだけの場所ではありませんでした。
つらい話を笑いに変えたり、お互いの子どもの成長を喜び合ったり。
ときには自分の趣味や健康、家族に対する愚痴を話してガス抜きをするーー親にとってものびのびできる場でした。
Upload By 荒木まち子
都合が良いときだけ参加できる2ヶ月に1度の和やかな会で、マシンガントークをした後はいつも心が軽くなり元気になりました。
娘に感謝
最近は新型コロナの影響で集まることはできませんが、今でもSNSや、無料通話アプリを使った交流はずっと続いています。
高校生のころ娘が自傷をしたとき、ショックを受けた私は上野さんに電話でつらい気持ちを聞いてもらいました。
上野さんからは、息子さんが会社を辞めることになったときに電話がきました。
「ねぇ、聞いてほしいことがあるんだけど」これが私たちの合言葉です。
話を聞いてほしいとき、何かを相談したいとき、またつらいことだけではなくうれしかったことも伝えあう、そんな関係が10年続いています。
子育ての先輩であり、遠い存在だった上野さんと、まさかこんなふうに話ができる間柄になるなんて私は想像もしていませんでした。
子どもの年齢、性別、障害の特性が違っていても私たちは親として分かり合える部分が多く、今では心を許しあえる仲となっています。
娘の子育てにはいろいろと苦労がありましたし、今でも悩みは尽きません。でも娘のおかげでこのような素敵な出会いがあったのも紛れもない事実です。
“つながる”ことと“動く”ことの大切さ
2022年5月に上野さんがラジオ(※)で発信した
「一つの蝋燭の明かりは小さいけど、集まれば大きな光になる」
という言葉を私は日々実感しています。
https://youtu.be/b1jtOxtpFpk
※~FMアップルラジコネ2022年5月3日より~ YouTubeのアーカイブ
私にとって大切な存在となった親の会。
そこで子育ての先輩たちに最初にもらったアドバイスは「まずは動いてみること」でした。
私もブログで本を紹介したことで上野さんと知り合い、親の会のみなさんと出会いました。
何かを始めることには勇気がいります。失敗することもあるかもしれません。タイミングの良し悪しもあるでしょう。でも行動を起こした先には想像を超えるような未来がきっとあります。
だから私も、いま子育てに悩み苦しんでいる保護者さんにぜひ『動いてみてほしい』と伝えたいです。
執筆/荒木まち子
(監修:初川先生より)
娘さんがすすめてくれた発達障害に関する本の著者である上野さんとつながることができ、そこからの親の会へ参加。
そして、そこで先輩ママさん方からの情報収集のみならず、心がのびのびできる場であったとのエピソードありがとうございます。なんと素敵な出会い、素敵な親の会への参加なんだろうと羨ましく思われる読者の方も多いのではないでしょうか。荒木さんも書かれているように、「動いてみる」ことは大事なことですね。今はSNSなどで、さまざまな発信がなされており、地域のそうした会合の情報もスマホで集めることができます。発達障害や不登校などの親の会であったり、地域のパパ・ママ会であったり、何らかご自身とつながれそうなキーワードがあれば、そこから連絡を取ってみるのも比較的やりやすい時代です。もし、お住まいの地域で、あるいは、関心のあるテーマでの会合が開催予定と告知されている場合には、問い合わせてみるのもいいでしょう。ただ、情報発信をされている方の中には、会合への参加を広く受けつけていても、DMなどでの個別の相談を受けていない方もいらっしゃいますので、そのあたりは自己紹介欄や問い合わせフォームなどをよくご確認されることをおすすめします。
「ねぇ、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど」が合言葉。
いいですね。それを言い合える仲間がほしくなりますね。聞いてほしいし、自分にゆとりがあるときは、相手の話も聞いてあげたい。そうした仲間がいること、とても素敵ですね。今はそうした相手に心当たりがない…という方も、上記のようにご自身で動いて(調べて)みる、あるいは、地域の教育相談センターや子ども家庭支援センターなどで、親の会などの情報を聞いてみるのもいいと思います。