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「自分の障害についてもっと知りたい」就職した20才の自閉症娘が中学以来の「障害再告知」を望んだ意味

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本人への障害告知


以前コラムでも書きましたが、娘は中学2年生のときに主治医から障害の本人告知を受けています。

告知は

・娘自身が「自分の障害について知りたい」と思った
・本人に“居場所”があり、精神的に落ち着いている
・告知後、支援者(学校関係者)のフォロー体制ができている

ことを医師が確認したうえで行われました。

そのおかげで娘は障害告知をポジティブに受けとめることができました。

障害告知から6年後に、再告知


その後、娘は高等特別支援学校を卒業し、特例子会社(※)に就職しました。そして20才になったある日、娘は再び私に「自分の診断名を知りたい」と言いました。私は娘に、中2のときに告知を受けているのになぜまた聞きたいのか尋ねました。

娘は「診断名は知ってるけど、自分の障害の詳しい種類と程度を知りたい」と言いました。

SNS上でも発達障害に関する情報や当事者として発信する人も多くなってきていましたし、娘もそういったものを見て何かしら思うところがあったのかもしれないと、このとき私は思いました。


(※)特例子会社は、「障害のある方の雇用の促進、そして安定を図るために設立された会社」のことです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000523775.pdf
【参考】厚生労働省特例子会社制度の概要

「自分の障害についてもっと知りたい」就職した20才の自閉症娘が中学以来の「障害再告知」を望んだ意味

Upload By 荒木まち子

娘は社会人になってからは一人で通院をしていました。何か親が医師に伝えたいことがあるときは、手紙を書き娘から医師に渡してもらっていました。私は医師に『娘が自分の障害名や障害の程度を知りたがっている』旨の手紙を書きました。医師は中学生のときから娘を診ているので娘のことはよく分かっています。二度目の告知は通常診療とは別枠で予約を取り、親同伴で行われることになりました。

一度目の告知のときは


前回の告知のときは、娘と親がそれぞれ感じている“本人の長所と短所”を事前に書き出しました。

・真面目で一生懸命。
我慢強い
・常識を学び、言われたことは直したいと考え努力している
・ルーチンに強く、さぼらない
・興味や関心が深く狭い。技術や知識は多い
・自分から気持ちを伝えることは、落ち着いてるとできる
・会話は苦手で、相手の言葉に不安になることがある
・新しいことや状況の変化・変更に対して臨機応変に対応することが苦手

これらのことを一緒に振り返りながら医師が娘の『特性』を文字に起こして障害の説明をしました。
本人の理解力に合った言葉選びと文字を書きながらの説明は、視覚優位の娘にはとても有効な方法です。

医師からは『これからどのようにして周りの人たちに助けを求めていくのが良いか』のアドバイスもありました。

2度目の障害告知では


二度目の障害の説明でも、事前に本人と親で『娘の長所と短所と思われることの書き出し』をしました。その内容は6年前とほとんど違いはありませんでしたが、新たに

“自分のことばで相談を持ち掛けるのは、ハードルが高い。
相談してくれる人が向いてくれたら話せる。自分から働きかけることが苦手”

が加わりました。


娘は自らに主治医に「自閉症」「発達障害」「アスペルガー症候群」「ADHD」の違いや「自分は何に当てはまるのか」「障害の重さはどの程度なのか」などを質問しました。

娘の質問に対し、主治医は図を書きながら娘に分かるように説明をしました。
そして診断名は大事な個人情報だということも娘に伝えました。

娘をとりまく環境の変化


私は当初、再度自分の障害についての説明を望んだ娘の心境がよく分かりませんでした。でも娘と医師のやり取りを見ているうちに、娘が“学生”から“社会人”になったことが大きく影響しているのだと感じました。

『学生』でなくなると、選択の自由度が増し、煩わしいもの、嫌なことを避けることもできます。学生時代は限られていた交友関係や活動範囲を広げることが可能です。一方で、自ら行動を起こさなければ人間関係は希薄になりがちです。
周りの人は本人の意思を尊重します。そして自身の行動には責任が伴なってきます。

そんな中で娘が自分の障害を再確認したいと思うのは自然なことだったのかもしれません。

これからも


親は子どもが何歳になっても親ということには変わりありません。そして子どもに障害があると、子どもを守りたいという気持ちはことさら大きくなります。でも自分の障害を理解しようとしている娘の姿を見て、私は彼女を一人の大人としてもっと尊重し、対等なスタンスで接していくべきなのだろうと感じました。

これからも人生の節目やターニングポイントを迎えるたびに、娘は自身の障害についていろいろと考えることでしょう。そしてそのとき、私もまた新たな気付きを得るのだと思います。


いつになるか分かりませんが、そのときまで体も心も頭も(笑)元気でいたいものです。

執筆/荒木まち子

(監修:鈴木先生より)
そもそも自閉スペクトラム症を「障害」ととらえずに「特性」ととらえればいいのです。特性を知ることで今後の人生や生き方に役立てればいいと思います。重要なのは会社や周りの人たちがその特性を理解してくれるかどうかです。理解してくれることによって優しく丁寧に具体的に肯定文で話してくれれば、娘さんにとって生きやすい社会になります。最近はSNSなどでさまざまな情報が飛び交っております。重要なのは信頼のできる主治医と向き合って自分独自の特性を正確に知り、どういう対策を取ったらいいか知っておくことです。そしてそれを理解してくれる仲間を増やすことです。

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