「家に帰りたくない!」ASD息子の「病院大好き」は良いことばかりではなく…息子の特性と母の困りを振り返って
病院は助けてくれるところ!
わが家の凸凹兄妹の兄、タケルは、小さなころからしばしば泣きすぎては呼吸困難を起こし、夜中の病院に駆け込んでいました。3歳ごろからは喘息の発作も起こすようになり、定期的に通院して呼吸器も使っていたので、病院に行けば苦しいのが治ると学習したようです。予防接種などのほかの用事で病院に行くときも、特に嫌がるそぶりを見せることはありませんでした。
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小さいころからしょっちゅう病院に行っていたということは、良いことなのかは分かりませんが、注射や白衣の人を怖がったりすることもなく、むしろ「ハカセかっこいい!」と、憧れていました。大学に入って購買部で最初に買ったのも白衣だったぐらいです。
病院大好き!な大きな理由
タケルが病院を好きな理由はもう一つありました。それは、病院の先生や看護師さんは、タケルの「変わったところ」を受け入れてくれたということ。
小さなころから「ハカセキャラ」だったタケル。
幼稚園では、自分の興味のあることばかりをまくし立てるので、クラスのお友達とはほとんど対話できていませんでした。
幼稚園は私立で、「良いことは見つけては大いに褒め、好ましくない行動は無視」が基本的な教育方針だったため、先生方に話を聞いてもらうこともほとんどありません。タケルのマシンガントークは「好ましくない行動」だったのです。
「自分も変わった子だった」先生の寄り添い
当時通っていた病院の先生は、発達障害の専門ではありませんでしたが、「こういう子どもってたまにいる。自分もそうだった」と言ってくださって、タケルの話をよく受け止めてくれました。多くの時間を割いてくれるわけではないのですが、タケルが言いたいことを短い言葉でまとめてくれて、的確に答えを返してくれていました。
看護師さんや、ほかのスタッフさんも同様で、病院の機器を見たタケルが「それは何ですか?」「どういうものですか?」といちいち尋ねても嫌な顔一つせず、丁寧に教えてくれていました。
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家か!?と突っ込みたくなる状態に
そこまではまあ良いのですが…ちょっと困ったこともありました。
タケルには何かに熱中すると、なかなかやめられないという特性もあります。病院の待合室で、ブロックやパズルなどを始めてしまうとそっちに熱中してしまい、診察室に呼ばれても行かなかったり、診察が終わっていても帰らなくなってしまうのです。
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診察室に行かないときは、しばらくすると大好きな白衣の先生が待合室まで呼びに来てくれるので、手持ちの遊びから気がそれ、診察に進むことができましたが、問題は帰らないときです。
正直、こちらは打つ手がなく、「お母さんお腹すいたからごはん食べよう!」などと、理由をつくっては引きずるようにして帰っていました。
ごはんを理由に帰ったときは、ごはんを食べ終えると「お腹いっぱい?じゃ帰ろうか!」と言われることもしばしばあり、どっちが家なんじゃ!と、おかしかったです。
自分の「陣地」じゃなくなった?プレイスペースからの卒業
今に病院に住むと言い出すんじゃないか?と思うほど病院が好きだったタケルですが、10歳の誕生日を境に喘息の発作を起こすことが減り、病院に行く頻度も下がりました。そうすると、たまに病院に行っても帰りしぶるような様子も見られなくなりました。
しばらく行かなかったことで、自分の「陣地」ではなくなったのかもしれませんね。
優しかった先生方のことと共に、今では良い思い出です。
執筆/寺島ヒロ
(監修:藤井先生より)
病院の先生や看護師さんとのやりとりを通じて、タケルさんの居場所になっていたのですね。喘息発作が落ち着くと共に、少しずつ病院からも卒業された様子で、タケルさんの居場所が病院以外にも広がって、世界が広がったのかもしれませんね。マシンガントークは、好きなことを人に伝えるという点では良いところで、状況に応じず話しすぎるという点では好ましくない点なのかもしれません。好きなことを人に伝えられたという、良い点に注目されたことで、病院がタケルさんの好きな場所になったのですね。