小児科医に聞く「熱性痙攣」とは?熱性けいれんの原因や予兆、対応法は?2回以上だとてんかんの可能性が?救急車を呼ぶ判断のポイントも解説【図解でわかる】
熱性痙攣(熱性けいれん)とは?
熱性痙攣(熱性けいれん)とは、約38℃以上の発熱に伴って起きる痙攣のことを指し、「ひきつけ」と呼ばれることもあります。生後6ヶ月~5歳の乳幼児期に発症することが多いとされており、20〜30人に1人以上が発症します。なお、そのうち生後12~18ヶ月が最も発症しやすいとされています。気になる熱性痙攣の原因や予兆、種類、対応マニュアルなどについて小児科医に聞いてみました。
Q:熱性痙攣の原因はなんですか?予兆などありますか?
A:熱性痙攣は、いわゆる風邪といわれるようなウィルス性の感染症などによって体温が急激に上昇したときに、脳が痙攣を起こしやすい状態になるために起こります。
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熱性痙攣を発症する体質は、親やきょうだい間で家族性があるともいわれています。ただし家族に熱性痙攣を発症した人がいたとしても必ずしも発症するわけではありません。
Q:熱性痙攣にはどのような種類があるんですか?
A:熱性痙攣には「単純型熱性痙攣」と「複雑型熱性痙攣」の2つの種類があります。
ほとんどの例が単純型で、複雑型は1割ほどといわれています。
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単純型熱性痙攣
・全身での痙攣(全身発作)が起こるが15分未満で治まる
・意識を失うことがほとんど
・24時間以内に2回以上起こらない
単純型は良性の熱性痙攣なので後遺症が残ることはほとんどなく自然と治ります。単純型の場合、正しい対処を行えば後に大きな後遺症を負う危険性も少ないため、あまり大きな心配をする必要はありません。
複雑型熱性痙攣
・全身で痙攣せず、体の一部または左右非対称の痙攣が起きる
・発作が15分以上持続する
・24時間以内もしくは発熱中に痙攣発作を数回にわたって再発する
このいずれか1つがみられる場合は、複雑型熱性痙攣となります。複雑型の疑いがある場合、検査を受けることが推奨されています。
また、表情の特徴として、単純型熱性痙攣は両方の黒目が上方に偏移していることが多く、 複雑型熱性痙攣は顔面が片側だけピクピクし、黒目が横に偏移しているなどの特徴があります。複雑型熱性痙攣は後にてんかんが発症する可能性があるので、場合によっては治療が必要になります。そのため、熱性痙攣が起きたときには複雑型かどうかを見極めることが重要です。
その際、痙攣の様子、時間、回数が判断のポイントとなります。
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Q:子どもが目の前で熱性痙攣に!対応マニュアルなどありますか?
A:子どもが熱性痙攣を起こしたときには、以下のような対処法を実践してください。
・首の周りなどを締めつけないように衣服を緩める
・抱きかかえず、平らなところに寝かせる
・嘔吐や口の中に固形物がある場合は、顔を左に向けて吐いた物が気道に詰まらないようにする
・口や鼻の周りの吐物を拭き取る
・診察時にそなえて、痙攣の様子(左右差)や持続時間、体温などを確認しておく。余裕があれば不謹慎だと思わずに動画などを撮影してください(診察時、てんかんとの鑑別に役立ちます)
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また、してはいけないこととしては、
・大声で名前を呼んだり、身体を揺すったりしない(刺激となり、痙攣が長引く場合があります)
・「舌を噛まないように」と口の中に物を入れたりしない(熱性痙攣で舌を噛むことはほとんどありません。また、噛む力はかなり強いため、ケガをする恐れがあります)
などがあります。
子どもが突然痙攣を起こし、意識を失ったりしたら、驚いてしまう保護者の方も多いのではないかと思います。しかし、正しい知識を持っていれば冷静に対処することができます。
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Q:熱性痙攣で救急車を呼ぶ必要があるのはどんなときですか?
A:多くの場合、熱性痙攣は数分以内に治まります。
数分以内で治まる痙攣であれば、ほとんどのケースにおいて救急車を呼んだり病院に行ったりする必要はありません。
ですが5分以上痙攣が続いたり、痙攣が終わった後に呼びかけても反応が乏しいなどの意識障害が続いている場合は救急車を呼んでください。保護者での判断が難しい場合には「小児救急電話相談(#8000)」に電話相談をして指示を仰ぎましょう。
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多くの熱性痙攣は数分以内に治まりますが、中には緊急性が高く救急車を呼ばなければならないケースや、緊急性は高くないが複雑型の疑いがあり検査の必要があるため痙攣が治まった後に速やかに病院へ行ったほうがよいケースがあります。
緊急性を判断する上では以下の目安を参考にしてみてください。
救急車を呼ぶ
・5分以上痙攣が続く
・痙攣が終わったが、その後も呼びかけても反応が乏しいなどの意識障害が続く(睡眠とは別)
病院へ行く
・38℃より低い熱で痙攣を起こした
・全身痙攣ではなく、体の一部または左右非対称な痙攣がある
保護者で判断しにくい場合
・小児救急電話相談(#8000)に電話相談をする
小児救急電話相談は厚生労働省がすすめる相談事業です。#8000番に電話すると、お住まいの都道府県の相談窓口につながります。そこで小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院などのアドバイスを受けることができます。
熱性痙攣時以外にも使用することができます。
#8000番に電話をして状況を伝えることで、医師や看護師の適切な指示を受けることができ、子どもの保護者も、その場の対処や救急車・通院の判断を行いやすくなります。
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イラスト/taeko