「熱性痙攣(けいれん)」は予防できる?後遺症は?てんかんや急性脳症疑いでの検査、ダイアップや解熱剤など薬の使用方法まで小児科医が解説【図解でわかる】
熱性痙攣(熱性けいれん)とは?
約38℃以上の発熱に伴って起きる痙攣のことを「熱性痙攣(熱性けいれん)」、「ひきつけ」などと呼びます。20〜30人に1人以上は発症するといわれており、生後6ヶ月~5歳の乳幼児期に発症することが多いといわれています。そのうち生後12~18ヶ月が最も発症しやすいとされています。このページでは、熱性痙攣の治療や予防法、服薬は必要なのか、てんかんとの違いや検査についてなど小児科医に解説していただきます。
Q:熱性痙攣の治療や予防法はありますか?後遺症などはありますか?
A:熱性痙攣は一過性のものが多いため特に後遺症などはなく、治療をせずに成長と共に自然に治っていくのを待ちます。しかし、5分以上痙攣が続く場合には、鎮静薬の投与を要する場合があります。
1度に起こる痙攣の時間が長かったりする場合は座薬(ダイアップ)などによる予防投与をすすめられる場合があります。
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熱性痙攣の予防策とは?
熱性痙攣は高熱が出ない限り発症することはありません。
高熱が伴う風邪やインフルエンザなどの感染症に感染することを予防してください。日々の手洗い・うがいを徹底することが大切です。なお予防接種などを積極的に受けることもおすすめします。
発熱時に解熱剤を使用することも効果的です。しかし解熱剤自体には、熱性痙攣を抑える効能はありません。
ジアゼパム投与(ダイアップ)の予防投与の対象は?
ジアゼパムの予防投与は、熱性痙攣の再発を優位に減少させるとされています。
下記の場合に使用します。
・過去に熱性痙攣を認め、持続が長かった既往がある
または、
下記のうち二つ以上を満たした熱性痙攣が2回以上認めた場合
・全身で痙攣せず、体の一部または左右非対称の痙攣が起きる
・24時間以内もしくは発熱中に痙攣発作を数回にわたって再発する
・熱性痙攣またはてんかんの家族歴
・12ヶ月未満
・発熱後1時間未満の発作
・38度未満での発作
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Q:熱性痙攣とてんかんの違いを教えてください
A:てんかんとは、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作が起こる慢性的な脳の疾患のことで、熱性痙攣と同様に痙攣を症状とする疾患です。
熱性痙攣が起こるのは主に発熱時に限られますが、てんかんの場合は発熱時以外にも発作が起こります。
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熱性痙攣は主に乳幼児期に限って発症するのに対し、てんかんは発症してから長く治療し続ける疾患です。てんかんは、意識を失い全身を痙攣させる大発作、身体の一部がピクッと動く発作、話の途中でぼんやりしてしまう発作などがあり、必ずしも痙攣を伴うものではないことも特徴です。
一般的なてんかん発症率の0.5~1%に対して、熱性痙攣が発症した後のてんかんの発症率は2~7.5%程度といわれています。このため、何らかの関係が存在すると考えられていますが、詳しいことは分かっていません。
https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2015GL/4fs2015_general.pdf
参考:熱性けいれんの定義|日本小児神経学会
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また、熱性痙攣と似ている病気として髄膜炎や脳症などがあります。熱性痙攣のように発熱と痙攣が伴います。髄膜は、脳や脊椎を覆っている膜です。
髄膜が炎症することによって高熱、激しい頭痛、悪寒、嘔吐など風邪に似た症状が発症し、痙攣や意識障害を引き起こす場合も珍しくありません。脳症はウィルスが直接脳に感染し、炎症を起こすことによって発症する疾患です。髄膜炎と同様に高熱や痙攣、意識障害がおこります。
Q: 熱性痙攣の検査にはどのようなものがありますか?
A:単純型熱性痙攣の場合は自然と治るため特に問題はありませんが、複雑型熱性痙攣の場合はてんかんなどとの合併症の疑いがあるため検査を行います。
検査を行うのは大体2回目の痙攣が起こったあとだといわれています。初めての痙攣でパニックを起こしている状態でよく観察できていない場合や、痙攣が1回だけで終わる人もいるためです。
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てんかんや急性脳症との鑑別が必要なとき
発達の遅れ、発作後のマヒ、複雑型熱性痙攣で部分発作があった場合はCTやMRIを行います。
細菌性髄膜炎との鑑別が必要なとき
髄膜刺激症状と30分以上の意識障害が伴う場合には髄膜検査を行います。
髄膜刺激症状とは首の硬直や膝を曲げた状態で股関節を直角に屈曲し、そのまま膝を伸ばそうとすると抵抗があることをいいます(ケルニッヒ徴候)などがあります。
そのほかにも医師が必要と認める検査を受けることがあります。
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熱性痙攣が起こった場合、落ち着いた対応を
熱性痙攣を初めて目の当たりにすると、保護者や周囲の人はパニックを起こしてしまうこともあります。熱性痙攣の70~85%が一過性のもので再発することはないといわれていますが、保護者は子どもが発熱する度に不安になってしまうかもしれません。
しかし、痙攣は数分で治まり、脳の発達によって5~6歳までに発症しなくなるといわれています。大きな病気ではないので安心して、その都度落ち着いて対応することを心がけましょう。
熱性痙攣のきっかけとなる風邪や感染症を予防することも大切です。子どもだけではなく、周囲の大人たちも予防につとめましょう。
もし熱性痙攣が起こった場合には、#8000番(こども医療でんわ相談)を利用するなど冷静な判断で対処・判断をしてください。はじめて痙攣が起こった際や単純型・複雑型どちらの痙攣か判断できない場合などは、迷わず病院へ行くことをおすすめします。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html
参考:子ども医療電話相談事業(♯8000)について|厚生労働省
https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2015GL/4fs2015_general.pdf
参考:熱性けいれんの定義|日本小児神経学会
イラスト/taeko
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