水泳も習字も「目に見える成果」はなかったけど…自閉症息子の習い事、20歳過ぎた今「やっててよかった」という理由
医師のすすめで水泳を始める
わが家の凸凹兄妹の兄、タケルは、3歳ごろから喘息の発作を起こすようになり、定期的に通院していました。幼稚園の年長になるころには、発作を起こすことはかなり減ってはいましたが、少し運動すると息が苦しくなってしまうということで運動に対する苦手意識がばっちり育ってしまいました。
6歳になるころには体形も目に見えてぽっちゃり…そこで医師に「筋肉と心肺機能を鍛えるためにも何か習い事をしてみては」とすすめられ、小学生になると同時に近所のスイミング教室に通い始めました。
私は運動なら何でも良かったのですが、すでに「将来はフィールドワークをするハカセになる!」と思い決めていたタケルは「やるなら水泳がいい!」と、自分でスイミング教室を見つけてきました。詳細はよく覚えていないのですが、確か学校の友達でそのスイミング教室に行っている子どもがいて、新入会員募集のチラシをもらってきたんじゃなかったかな…と思います。
いつのまにか始まった習い事ライフ
以前にも書かせていただきましたが、私は何か習い事をさせたいとぼんやりとは思っていましたが、以前自分がやっていた書道をやらせてみようかな〜というぐらいで、特にこだわりを持っていませんでした。
3歳ぐらいですでにほかの多くの子どもとは違う興味関心を持ち、自分なりの日々のルーティンを持っていたタケル。
小学校に上がって、同級生が習い事を始める時期になっても、今の生活パターンを守ろうとするだろうから週に何時間と決めて練習する余裕もないし、ほかの子どもと一緒にじっと座って何かを習うのも無理かもしれない…。
なので、「何かやらせたいとは思うけど、今じゃないよね~」とのんびり構えていたのです。私としては、あれれ?勝手に行先が決まってしまったぞー!?という感じでした。
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また心配していた「ルーティンが壊れるのを嫌がるのではないか問題」については、通うコースを決める段階で話し合い、本人が「夕方の工作の時間をなくす」と言い出したことで、すんなり新しいルーティンをつくることができました。
しかし、そうすると平日にスイミングスクールのない曜日が3日できてしまいます。「予定をぎちぎちに詰めたい」「空いた時間は何をすれば良い?」とタケルが言うので、私の希望でお習字教室も入れてもらうことにしました。残りの2日はその交換条件でゲームをして良い日です。
小学生だというのに、全く勉強の時間を増やしてなくて大丈夫か?とも思いましたが、まあヨシということにしました。
以前に、タケルといっちゃんがやっている習い事について書かせていただいた記事はこちら
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マンツーマンで力を発揮
いざ、習い事が始まってみると、水泳も書道も個人技ということもあり、先生が直接指導してくれるので、ほかの子どもたちとそれほどコミュニケーションを取らなくても大丈夫だということが分かりました。
元々ASDならではの凝り性で、同じことを繰り返し練習することが苦にならない性格のタケル。自分なりに追求したいことを見つけては、マイペースで技術を積み重ねることができたようです。
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また、たまたまでしたが、両方とも人から話しかけられることの少ない静かな環境で学べることだったというのも、聴覚過敏があるタケルにとってプラスでした。
記録には残っていないけど
今は22歳で大学生になったタケル。子どものころの希望通り、フィールドワークに出るような学部に属しています。臨海実習ではスイミングスクールで培った自在な泳ぎを見せ、周囲を驚かせたそうです。
プールで速く泳げなかったので、スイミング教室ではなかなか進級できず、ほかの子どもにからかわれたりすることもあったそうですが、「浮くことと潜ることを納得いくまで練習したので、仕事に必要な泳ぎができることには自信がある。嫌なことを言われるからと途中で辞めなくて良かった」と言っています。
書道も水泳も、何か賞を取ったり、周囲から褒められるような結果が得られたりしたわけではありませんが、今振り返ってみると、タケルの「周囲があまり気にならない特性」が幸いし、誰かと自分を比べて一喜一憂することもなく、自分なりのやり方で成功体験を積むことができたのかなと思います。
執筆/寺島ヒロ
(監修:井上先生より)
習いたいものについて、本人が自ら希望を言えたり、小学生で自分のルーティンの調整ができるのはすごいことです。また、中学生になって両立できないときに、習い事を調整できたことは、さらに素晴らしいことと思います。
習い事はその道を極めることが目的ではなく、大人になってから教養や趣味として役立っていくことが多いです。習い事は学校と違って、周りと比べないで続けられると、長く付き合えるのではないでしょうか。