「無理!」暗闇イベントで発達グレー小1息子が大パニック!こだわりの強い娘とのはざまで母も半泣き…スタッフに助けられて感じたわが子の成長と勇気ーーユーザー体験談
特性のある子ども2人連れての暗闇体験
わが家には、こだわりが強い小学5年生の娘と、感覚過敏で不安になりがちな小学1年生の息子がいます。その2人の子どもとある体験に参加したときのエピソードです。
私は以前、視覚障害のある方の世界を体験できる「暗闇体験」に参加しました。自分の身体すら見えない真っ暗な部屋に入り、視覚障害がある人が使う白杖をたよりに90分間のプログラムに参加します。普段当たり前に見えているものが「見えない」という状況に怖さも覚えましたが、誘導してくださるスタッフの方の声、一緒に参加している方の声が聞こえてくると少しずつ不安がなくなっていきました。そして、聞こえる音、触れる感覚を研ぎ澄ますことで、知らなかった世界を知っていき、心まで解放されていきました。帰宅後は、わが子たちにもこの体験の話をしました。
娘と息子に話すと前のめりに「行ってみたい!」と言いました。
怖がりな息子なので、多少の不安もありましたが、私もぜひ子どもたちに体験してほしいと思い申し込みました。
申し込みから「暗闇体験」の当日までは1週間ほどありました。当日が待ちきれない子どもたちは「真っ暗な世界ってこんな感じかな?」と家の中で目をつむって歩いてみたり、イメージを膨らませていました。
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不安なんてない?誰よりも張りきっていた小1息子は
いよいよ、「暗闇体験」当日になりました。
その日参加していたのは、私と子ども2人、ほかに4人の参加者がいました。真っ暗な部屋に入る前に、アテンドを担当する視覚障害のあるスタッフが事前の説明を丁寧にしてくださいました。待ちに待ったこのときが来たので、娘も息子も真剣に話を聞いていました。特に息子は、誰よりも張りきっていました。
いつもは恥ずかしがり屋なのに大きな声でその場にいるみんなに自己紹介をして、「エイ、エイ、オー!」と言いました。
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事前の説明が終わると、アテンドの方の指示を聞きながら暗い部屋に入ります。
体験したことのない暗さ…私が初めて体験したときは「少し怖い」と思ったけど、子どもたちはどんな感想を持つだろう?そんなことを考えていたら、「むり、むり、むりだ」とさっきまで張りきっていた息子の不安そうな声が聞こえてきました。そして、泣き出してしまったのです。
小学生になり、人前で泣くことがもうほとんどなかったので、「本当の真っ暗闇」が心底怖かったのでしょう。私は、手探りで息子を見つけ、息子の手を握って「ほら、お母さんここにいるよ。手もつないでるし、大丈夫だよ」と声をかけてみましたが、息子は「こわい、むり、もう出る」と何度も言いました。どんどんパニックになっているのが伝わりました。
娘も、一緒に参加していた方々も、アテンドの方も「大丈夫だよ」「みんないるよ」と優しく声をかけてくれましたが、息子は「こわい、こわい、むりだ」と泣き続けました。
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息子のパニックに焦る母…。スタッフの方は
アテンドの方は、息子と手をつないでくれ、優しく声をかけ続けてくれました。もしかしたら暗さに慣れてくれば不安を乗り越えられるかもしれない、とちょっと希望を持っていましたが、パニックは治まることはなく、どうにも難しそうでした。このままパニックが続くと、周りの方たちに迷惑をかけてしまう。せっかくの体験なのに…、一緒に参加しているみなさんも楽しみにしていたはずなのに…。
しかし、同じく楽しみにしていた娘(一度決めたら止めたくない)は途中で帰るとは言わないでしょう。頭の中でいろいろなことが駆け巡ります。
それに、ここで私たち親子だけが外に出るというのも、プログラムを中断してしまうことになり申し訳ない…。
何が正解なんだ…と焦っているとアテンドの方が息子に「難しそうかな?ほかのスタッフのお姉さんが一緒にいてくれるからちょっとお外で待っててみる?」と聞いてくださいました。その言葉を聞き、息子は安心したのか泣くのを止めて「うん」と言いました。続けて「お母さんがいなくても大丈夫かな?」と聞くと「うん、大丈夫」という息子。
真っ暗の部屋の中で、声だけでやり取りしているので、息子の表情は全く分かりません。はじめての場所で、親から離れて待っていることはできるのかな、と心配がなかった訳ではありませんでしたが、顔は見えなくとも息子がアテンドの方の問いかけにしっかりと答えているのを聞き、きっと大丈夫だと信じて、私も「よろしくお願いします」と言いました。
ずっと息子に寄り添ってくれたスタッフや参加者の方々
息子がほかのスタッフの方と明るい別室で待っていることになり、娘と私、4人の参加者の方と暗闇でのプログラムを再開しました。娘はどんどん暗闇に慣れていき、ほかの参加者の方と会話をしたり、楽しそうな声が聞こえました。息子の件で申し訳ないという気持ちを抱えつつも、娘だけでも参加できてよかったなぁと心の中で思っていました。
プログラム終了まで残り15分になったころ、アテンドの方が「息子くんが、戻って来れるみたい」と教えてくれました。どうやら、ほかのスタッフの方と過ごすうちに元気を取り戻し「もう一回行ってみる」と自分から言ったようでした。
ほかのスタッフの方と、また真っ暗な部屋に戻ってきた息子は「ただいま!もう、怖くなくなった!」とはじめに入室する前くらいに元気な声で言いました。一緒に参加していた方々も「待ってたよ」「よく戻ってきたね」と迎え入れてくれました。最後の15分は、息子も楽しそうに参加することができました。
息子のパニックを見極めて、対応してくださったアテンドの方、スタッフの方、あたたかく息子の気持ちに寄り添ってくださった参加者の方々に感謝の気持ちでいっぱいでした。
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不安になりがちな子どもに新しい世界を見せる勇気
息子はもともと、怖がりで、いつもと違う状況が苦手です。幼稚園のときは、避難訓練などのいつもと違う雰囲気と大きな音が苦手で、その度にパニックを起こしていました。
加えて多動なところがあったりするので、周りに迷惑をかけてしまう心配や、本人の負担も考えてこれまでなにかを「体験する」というプログラムを極力避けてきました。
新しいことを知ってほしいという思いもありつつも、親の私自身がその勇気が出なかったのです。
でも、そんな息子も小学生になり、見通しが立たない状況でのパニックが起こりにくくなっており、本人も「行きたい」と言ったので今回の「暗闇体験」は、きっと息子の第一歩になる!と信じて、私は申し込んだのでした。
そんな中での息子の体験中のパニック。あのときに私も娘も途中で参加を止め、帰ることになっていたら「やっぱり息子には、このような体験は無理だったんだ。新しいことに挑戦するのはまだ難しいのかもしれない」といろいろなことに対してもまた消極的な気持ちになってしまっていたかもしれません。しかし、今回、そんな息子に対してあたたかく対応してくださったアテンドはじめスタッフの方々と参加者の方々のお陰で、体験に参加することができ、息子にも乗り越える力があると知ることができました。
人によって、できることできないことや、できるようになるペースは違うと思いますが、息子の気持ちを聞きながら、周りの方にも協力していただきながら、少しずつ新しいことにも挑戦してみようと思えるような経験になりました。
イラスト/にれ
エピソード参考/カワカワ
(監修:初川先生より)
息子さんにとっては、想像していた暗闇よりも、もっともっと暗闇だったために混乱してしまったのかもしれませんね。混乱し怖さに打ちのめされそうになっていても、スタッフの方と外に出て待つと言えたのは、怖がりで新しいことが苦手な息子さんからするとおそらくかなりの成長だったのではないでしょうか。
さて、お子さんがパニックのような保護者の方からしても予期せぬ展開を見せたとき。親子でその場を撤退するのも1つの対処法ではありますが、今回のように、スタッフの方々のお申し出やご対応に少し委ねてみる、というのも1つですね。お子さんに日頃接しているスタッフの方(こうしたイベントのスタッフのみならず、学校や地域のイベントでも同様に)ですと、さまざまな予期せぬ展開に慣れていたりうまいことご対応くださったりする場合もあります。お子さんによき体験をしてほしいという思いで運営されていると、今回のように息子さんが“よき体験”と思えるよう計らってくれる(最後、また中に戻ってこられるように安心を取り戻し、そう向けてくださる)こともあります。
いつもそうなるとは限らないかもしれませんが、そうした大人は結構いらっしゃるんじゃないかなと思います。お子さんの様子によって、また周りの状況によっても変わってきますが、体験者さんが勇気をもってスタッフさんに少し委ねてみたことそれ自体も、よき体験となられたのではと思います。
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