てんかんの治療法は?発作の種類によって合う薬は違う?単剤で抑えられない部分発作に処方されるトピナ(トピラマート)の特徴や副作用も解説【医師監修】
てんかんと診断されたらどんな治療をする?発作の種類や症状、処方される薬は?部分発作治療薬「トピナ(トピラマート)」も紹介
てんかんは「てんかん発作」を繰り返し起こす大脳の病気です。日本ではてんかんの患者は100人に1人程度で、乳幼児から高齢者まで誰もがかかる可能性がある身近な病気といえます。
てんかん発作にはさまざまな種類がありますが、患者一人に現れる発作症状はほぼ一定していて、ほとんど変わることはありません。薬を飲まなくても自然になおるものから、数年以上薬を飲み続けなくてはならないもの、外科手術が必要になるものまでさまざまですが、約7~8割は治療薬により発作を抑えることが可能です。
抗てんかん薬の種類は多く、発作の種類に合わせて、小児用の抗けいれん剤ダイアップ、大人にも子どもにも使うことができるベンゾジアゼピン系抗てんかん薬リボトリール等をはじめとした薬の調整を行い、長期にわたって服薬します。後述するトピナ(一般名:トピラマート)といった、ほかの抗てんかん薬と併用するタイプの新しい抗てんかん薬も登場しています。
このコラムでは、てんかんの分類や原因、治療法、治療薬の解説に加え、部分発作の新しい治療薬であるトピナについて詳しく説明します。
てんかんの部類は以下のようになっています。
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まずは、発作がてんかん発作なのか、それとも違う疾患の発作かを見極めることから始まります。てんかんは、長く服薬して治療にあたることが多いため、初期の診断でどのような種類のてんかんかを判断することが非常に重要です。
問診では本人の自覚症状だけでなく発作を目撃した人からの情報も大切です。発作を目の前にすると慌ててしまうと思いますが、発作が起こる前の症状、どれくらいの時間起こったか、またどのような発作だったか発作中の行動を冷静に記録できるといいでしょう。動画での撮影は正確に発作症状を伝えられるためおすすめです。そのほか、脳波、MRI検査などを行って、発作型の診断、原因の究明、病型診断を行います。
てんかんの治療法には服薬による治療と、外科治療があります。てんかんの約8割は薬で発作の抑制が可能であり、治療では症状によって抗てんかん薬の調整を行います。
長く服薬することが多いので、自分の薬をよく知っておくこと、正しい服薬をすることがとても大切です。服薬治療によって患者さんのQOLを保つことが治療の目標となります。
外科治療は、服薬で発作のコントロールができず、かつ脳の原因部位が明らかなものに対して行われます。
てんかんの薬治療の原則は?てんかん専門医に聞いてみました。
A:てんかん治療は 「単剤療法」が原則だと言われています。単剤療法とは1種類の薬剤のみを用いて行う薬物療法のことです。
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てんかん薬の単剤療法の利点として
・抗てんかん薬の有害な相互作用がない
・複数の薬を使うことによる相互作用(薬がほかの薬の濃度を変動させること)がない
・一般的に副作用が少ない
・服薬が規則的になりやすい
・発作のコントロールが多剤併用療法より良い場合がある
などがあげられます。
A:約5〜7割程度の患者さんが単剤治療でてんかんを抑えています。
1番目の抗てんかん薬で約50%、2番目の抗てんかん薬の単剤または併用で約12%の方が発作が抑制されたとの報告があります。
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22573629/
参考:Patterns of treatment response in newly diagnosed epilepsy
副作用を考慮しつつ1種の薬を最大許容量まで投与しますが、それでも発作が収まらない場合にはほかの抗てんかん薬に置換して効果を見ます。
A:発作症状の確認と、脳波検査などを行い、適切な抗てんかん薬を十分量用いているにもかかわらず、単剤による治療が不十分な場合には副作用に注意し、2種類の抗てんかん薬を併用することもあります。
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https://shizuokamind.hosp.go.jp/epilepsy-info/news/n4-4/
参考:てんかんの薬物治療|てんかん情報センター
てんかんの薬・トピナの効能、効果、用法、用量は?
抗てんかん薬はすでにさまざまな種類の薬がありますが、トピナ(一般名:トピラマート)は2007年7月に承認された、比較的新しい薬です。トピナは、ほかの抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の「部分てんかん」を対象とした新しいタイプの治療薬で、単剤で処方されることはなく、必ずほかの抗てんかん薬と併用されます。
トピナは幅広い作用機序をもっています。一般的なてんかん薬の作用機序の「脳神経の興奮を鎮める」のほかに「てんかん発作のきっかけとなる受容体の機能抑制作用」など、ほかの抗てんかん薬と異なる作用機序をもつため働きかけが異なる別の抗てんかん薬と併用することによって、治療効果を高めるとされています。
部分てんかんの第一選択のカルバマゼピン、レベチラセタム、ラモトリギンなどを用いて発作を抑えられなかった場合に、ゾニサミド、トピラマートを用いることが多いです。しかし、副作用として汗がかきにくくなることがあるので、体温調整が難しいお子さんには控えることもあります。
※処方内容については症状や体質、年齢によりそれぞれ違います。
興奮性シグナルであるNa+、Ca2+の通り道になるナトリウムチャネルやカルシウムチャネルを抑制する作用、抑制性シグナルであるClーの神経細胞内への流入促進の作用、炭酸脱水酵素阻害作用などにより抗てんかん作用をあらわす薬です。
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海外ではトピナが片頭痛の治療薬として用いられる場合もありますが、日本では適応症として認められてはいません。
トピナには以下のような錠剤、顆粒があります。
・トピナ錠25mg
・トピナ錠50mg
・トピナ錠100mg
・トピナ細粒10%
嚥下能力が低下した患者には細粒を処方されることがあります。ただし、どのような剤形や容量が処方されるかは、患者によって違います。医師の指示なく勝手に服薬量を増やしたり減らしたり、飲むのをやめてはいけません。また、自分の判断で認められていない症状の改善のために服用することのやめてください。
医師の判断に基づかないで服薬を減らしたりやめたりすることで発作がおこってしまったり、回復が遅れる、あるいは重篤な副作用が発生することがあります。トピナは、少量から服薬を開始し、効果や副作用をチェックしながら、徐々に増量していきます。
通常、成人にはトピラマートとして1回量50mgを1日1回、または1日2回の経口摂取することからスタートします。その後、1週間以上の間隔をあけて増やしていき、適切な量として1日200~400mgを2回に分けて服薬します。症状により増減されますが、1日最高投与量は600mgまでです。
小児は2歳以上から投与可能です。小児には1日2回に分割して経口摂取します。トピラマートとして1日量1mg/kgからスタートし、その後は2週間以上の間隔をあけて1日量2mg/kgに増やしていきます。
さらに、また2週間以上の間隔をあけて1日量として2mg/kg以下ずつ増やしていき、適切な量として1日量6mg/kgを服薬します。症状により増減されますが、1日の最高投与量は9mg/kg、または600mgのいずれか少ない方の投与量までです。
トピナの一般名はトピラマートといいます。先発医薬品ではトピナが、後発医薬品(ジェネリック医薬品)としてはアメルがあります。
トピナにはどんな副作用があるの?
目の充血、目のかすみ、視力の低下など、続発性閉塞隅角緑内障を伴う急性近視があらわれることがあるので、症状がでたら投与を中止し適切な処置が必要です。この副作用は、投与1ヶ月以内にあらわれることが多いとされています。
そのほか、腎臓や尿路に結石ができることがあります。以前結石ができたことのある人は、水分を十分に取るなどの対策が必要です。
また、アシドーシス(頭痛、眠くなる、意識の低下、深く大きい呼吸)、汗の量が少なくなって体温が上昇するといった副作用があり、特に小児が使用する場合は、腎臓や尿路の結石、アシドーシス、発汗の減少による体温上昇といった症状あらわれやすくなります。患者に変化がみられたら医師に相談してください。
体重が減少することもあるので、体重が減少し始めたら医師に相談しましょう。
炭酸脱水酵素阻害剤との併用は、腎・尿路結石を形成する恐れがありので、併用注意です。また、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)はトピナの作用を弱めるおそれがあるので、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品の摂取は控えましょう。また、さまざまな薬と相互作用を起こしやすいため、使用中の薬は必ず医師に報告してください。
まとめ
てんかんのほとんどは服薬で治療することができます。てんかんによる就学、就労への影響をおさえ、QOLを上げるためにも、正しい服薬を継続しましょう。
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