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てんかんの治療薬、デパケン(バルプロ酸ナトリウム)とは?どんなてんかん発作に処方される?効果や副作用、ほかの治療薬についても解説【てんかん専門医監修】

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てんかんと診断されたらどんな治療をする?てんかん発作の種類や治療薬、全般てんかんに処方される薬「バルプロ酸ナトリウム」って?


てんかんとは、脳の一部または全体がなにかのきっかけで過剰に興奮してしまう病気です。この興奮は「発作」とよばれ、意識を失ってしまうものや痙攣のほかさまざまな症状があり、発作は一度ではなく繰り返し起こります。

100人に1人の割合で起こるという身近な病気で、3歳以下での発症が特に多く18歳までに80%が発症するといわれています。しかし、近年では高齢者の脳血管障害によるてんかん発作も増えています。てんかんの原因の多くは特定されていませんが、現在ではてんかんの約80%が薬による治療で発作のコントロールが可能といわれています。

このコラムでは、てんかんの発作の種類や、それぞれの発作のに対して処方される薬について解説します。また、全般てんかんに処方される「バルプロ酸ナトリウム」について、詳しくお伝えします。

てんかんは、診断されると長く服薬が必要になることが多いため、最初に本当にてんかんなのか、またどのようなてんかんなのかを見極め、長期的な治療の見通しを立てることが重要になります。
脳波、MRI検査はもちろんですが、本人や発作を目撃した人からの情報も大切です。発作を目撃すると動揺してしまうと思いますが、冷静に発作の様子を動画で撮影するなどすると問診の際症状を伝えやすくなります。

てんかんの治療方法には服薬と外科治療があります。外科治療は、抗てんかん薬では発作を抑えることができない「難治性てんかん」に行うことがあり、完治が期待できる場合もありますので、早期の診断が大切です。一方、薬で発作のコントロールができる場合は、正しい服薬によって就学・就労といった社会生活への影響を最小限にすることが治療の主な目標となります。

てんかんには大きく「全般てんかん」「部分てんかん」の2つがあります。

全般てんかんは大脳の広い範囲(全般発作)が、部分てんかんは脳の一部(部分発作)が、興奮状態になり発作が起こるものです。全般てんかんの発作は、意識がない場合がほとんどですが、部分てんかんの発作は意識があるもの、ないものがあります。
またそれぞれ「特発性」「症候性」にさらに分類でき、「特発性」とは脳に損傷がなく年齢に関係して発症するてんかん、「症候性」とは脳の損傷(異常)により発症するてんかんになります。
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全般発作に対してはバルプロ酸ナトリウム、部分発作に対してはカルバマゼピンが第一選択薬として広く使用されています。

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【全般性強直間代発作】
第一選択薬
・バルプロ酸ナトリウム

第二選択薬
・ゾニサミド
・フェノバルビタール
・プリミドン
・フェニトイン
・ラモトリギン
・イーケプラ
・トピラマート
など

【欠神発作】
第一選択薬
・バルプロ酸ナトリウム
・エトスクシミド
など

第二選択薬
・クロナゼパム
・ラモトリギン
など

【強直発作、脱力発作】
第一選択薬
・バルプロ酸ナトリウム

第二選択薬
・ラモトリギン
・レベチラセタム
・トピラマート
など

【ミオクロニー発作】
第一選択薬
・バルプロ酸ナトリウム
・クロナゼパム

第二選択薬
・レベチラセタム
・トピラマート
・ピラセタム
・フェノバルビタール
・クロバザム
など

単純部分発作、複雑部分発作、二次性全般化強直間代発作と概ね3種類ありますが、薬に大きな違いはありません。

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第一選択薬
・カルバマゼピン

第二選択薬
・ラモトリギン
・レベチラセタム
・トピラマート
・ゾニサミド
・フェノバルビタール
・プリミドン
・ガバペンチン
・フェニトイン
など

https://shizuokamind.hosp.go.jp/epilepsy-info/news/n4-4/
参考:てんかんの薬物治療|てんかん情報センター

https://www.neurology-jp.org/index.html
参考:日本神経学会

てんかんの薬・バルプロ酸ナトリウムは、どういうてんかん発作に処方される?効能、効果、用法、用量は?


バルプロ酸ナトリウムは、全般発作に有効な抗てんかん薬です。

全般発作とは脳の広い範囲、または全体が興奮して起こる発作になります。発作の始まりに意識を失うことも多いです。全般発作には以下のような種類があります。

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強直間代発作
突然発症して強直発作と間代発作を起こします。
発作後に30~1時間位の眠りにつくことも多く、その後は普段通りに戻ることが多いです。意識のもうろう状態による事故などに注意が必要です。

・症状
強直発作:突然意識を失い、口を食いしばる、手足を伸ばした状態で全身が硬くなり呼吸が止まった状態は数秒~数十秒間続く
間代(かんたい)発作:膝などを折り曲げ、手足を曲げたり伸ばしたり、一定のリズムでけいれんが起きる。数十秒で終わることが多いが、1分以上続く場合もある

欠神(けっしん)発作
数十秒間意識がなくなる発作です。けいれんを起こしたり倒れたりはしないが、会話などの途中で突然意識がなくなる場合も。周りの人が気づきにくく、集中力や注意力がないなどと思われることがあります。

・症状
突然意識がなくなりぼんやりした目つきになる
呼びかけに反応しない
まぶたがピクピクする

脱力発作
崩れるように倒れてしまうことがありますが、発作の持続時間は数秒と短く、発作と気づかれにくいです。

・症状
全身の筋肉の緊張の低下、消失

ミオクロニー発作
一部分の筋肉が一瞬ピクっと収縮する瞬間的症状のため、自覚することも少ない発作です。
ですが、連続して起こることもあり、転倒したり持っているものを投げ飛ばしてしまう強い症状が出ることもあります。寝起きや寝入りに多く起こる傾向があります。

・症状
全身、あるいは手足の一部分の筋肉が一瞬収縮する

どの全般発作も第一選択薬としてバルプロ酸ナトリウムが選ばれることが多いです。
先発医薬品ではデパケン、デパケンR、セレニカR、バレリンなどが、後発医薬品(ジェネリック医薬品)としてはバルプロ酸ナトリウム(商品名)があります。

主な作用機序としては、神経の興奮を抑える作用を持つγ-β酪酸(GABA)を分解する酵素(GABAトランスアミナーゼ)の働きを抑制して、脳内のGABA濃度を維持・増加させ、発作を抑えると考えられています。

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前述したように、バルプロ酸ナトリウムは全般てんかんの第一選択薬として広く使われています。全般てんかんには子どもに多い欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作、強直発作などがあり、こうした発作に対して用いられます。

また、てんかんの症状には、脳の異常な興奮が原因となって怒りやすくなったり、すぐ機嫌が悪くなったりするような症状もあります。
こうした症状は双極性障害の躁状態でも起こりうることですが、バルプロ酸ナトリウムはこうした性格行動障害に対しても効果を示します。

さらに、こめかみや目のあたりが発作的にズキズキと拍動性の痛みを感じる片頭痛などにも用いられています。ただし成人とは異なり、12歳~17歳の小児片頭痛患者を対象とした臨床試験では有効性を示す十分な科学的根拠は得られていません。

バルプロ酸ナトリウムは以下のような錠剤、顆粒、シロップ、徐放性製剤とさまざまな剤形があり、患者の状態や治療の目的に合わせたさまざまな選択がなされます。

・バルプロ酸ナトリウム錠100mg
・バルプロ酸ナトリウム錠200mg
・バルプロ酸ナトリウムシロップ5%
・バルプロ酸ナトリウム細粒20%
・バルプロ酸ナトリウム細粒40%

例えばシロップ剤は、主に小児に投与することを目的としており、バルプロ酸ナトリウムの特異な臭いとわずかな苦味があるために服用しやすくなるよう甘味がつけられています。また、徐放性製剤の場合は服用してから長時間かけて薬剤が放出されるよう設計されているために、血中濃度を一定に保ち、服用回数をコントロールすることができます。

用量ですが、通常1日量8〜24mL(バルプロ酸ナトリウムとして400〜1,200mg)を1日2〜3回に分けて経口投与します。ただし、どのような剤形が選択されるか、またそれの服薬量は、患者の状態に応じた医師の治療方針に基づくものであり、勝手な薬剤の増減や停止をおこなってはいけません。
医師の判断に基づかないで服薬を減らしたりやめたりすることで発作が起こってしまったり、回復が遅れるなどの不利益が生じることがありますので、必ず医師の指示に従いましょう。

バルプロ酸ナトリウムの副作用は


眠気、ふらつき、吐き気、食欲不振、けん怠感などがあります。副作用は飲み始めに多く、やがて軽減することが多いのですが、症状が強い場合は医師に相談してください。重い副作用として、まれに肝臓への悪影響(劇症肝炎などの重篤な肝障害、黄疸、脂肪肝など)があります。肝機能障害などがある場合は肝障害が強くあらわれる場合があるので、必ず医師に伝えましょう。また、食欲亢進し体重が増えることがあります。

カルバペネム系抗生物質などは併用禁忌、そのほかさまざまな薬と相互作用を起こしやすいです。飲み合わせによって、バルプロ酸ナトリウムの作用が強まったり弱まったりするので、服薬中の薬は必ず医師に報告しましょう。


バルプロ酸ナトリウムは胎児の形成に影響を与えたり、産まれてきた子どもの発達に影響を及ぼすことがあるので妊娠可能な年齢の女性、妊娠中の女性に処方する場合には注意が必要です。

妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ処方されます。処方される場合は、できるかぎり単剤で、かつ必要最小限の容量となり、妊娠前の女性には血中濃度の安定をはかるため徐放錠で600mg/日以下が望ましいとされています。そして、妊娠期間中は、血中濃度の変化を注意深く観察する必要があります。

まとめ


てんかんの約80%は服薬でコントロールができます。てんかんかもしれないと思ったら、すぐに医師の診察を受けましょう。抗てんかん薬にはさまざまな薬がありますが、バルプロ酸ナトリウムは代表的な抗てんかん薬です。医師の指示に従って、正しく服用しましょう。

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