小2自閉症息子、読める字が書けない!テストも不正解…担任に「きれいに書くの諦めます」と言い出せず――作業療法士・野田先生に聞いた「褒めポイント」と「工夫」
字が汚い&字を書くのが速すぎます
ゆきみ(以下、ーー)けんとは、3歳のときに自閉スペクトラム症の診断を受けています。文字や数字が大好きで、思いついたことを紙に書くのが昔から大好きでした。小学生になると、国語や書写の時間で「字をキレイに書く」ということを求められるようになりました。
ひらがなも漢字も「とめる」「はねる」などを全く気にしない子どもなので、テストで×になってしまいます。宿題は、私が点線で下書きをして、なぞってもらったりしています。そうすると、ほんの少しだけ自分で注意してくれます。
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そもそも、字を書くのがとても速く、スラスラと目にも止まらぬ速さで書き上げてしまいます。家で漢字の宿題をするとき「ゆっくり書こうね」と、長い線は3秒、真っすぐの線は2秒、濁点などは1秒というように、基準を決めてやったりしているのですが、最初は頑張ってくれていても、途中から面倒になるのか、速くなってしまいます。
褒めてあげたほうがいいと聞いたし、褒めてあげたいけれど…どう褒めてあげていいのかポイントが分かりません。何かアドバイスや、練習方法などがあれば教えていただきたいです。
書字の目的や工夫、褒めるポイントとは…
野田先生:前提として、お子さんが「やってみよう!」と思えるポジティブな雰囲気が大事です。無理にやらせてしまうことで書くことにネガティブな気持ちが強まり、「絶対イヤ!やりたくない!」となってしまうのは良くないんですよね。
まず書字は、本人にとって機能的であるかを考えます。本人が「メモできるように」というのを書字の目的とするのならば、「すごくキレイに書けなくても大丈夫だよね」ということになります。その目的を達成するラインを担保できるかが大事ということです。
例えば書道家を目指すのであれば、今の字は目的を達成していないかもしれませんが、はねと、とめがなくても、読める字になっていれば、本人にとっては機能的なのです。
そのラインをお子さんと相談しながら決められるといいですね。
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実は、私もけんとくんの気持ちが分かる部分があるんです。長文を手書きするときに最初は丁寧に書けていても、最後の方は読めない字になってしまいます。
頭で考えている速度で、字が書けない。そのうえ、書き続けるとすぐに手が疲れてしまいます。結果として手が追い付かなくなり、字が崩れてしまうことがあります。ほかには、「早く遊びたい」と思って焦っている可能性もありますし、キレイな字を書くためには力を入れないといけないので、手の持久力も関係しているかもしれません。
字を書く練習のときのポイントとしては、ゆきみさんも言っていたように「褒めること」。
1文字だけでもゆっくり書けたときに「1文字、ゆっくり書けたね」「1文字、きれいに書けたね」などというように、大人の基準での100点を求めるのではなく、できているときにハードルを下げて褒めていくと「こう書いたらいいんだな」とお子さんも理解しやすくなります。
例えば、立ち歩きが多いお子さんに「立たないで、座って」と言うのは、よくあると思いますが、座っているときこそ「ちゃんと座れてて偉いね」と声をかけるというのが褒めるときのポイントの1つなのです。
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ほかには…
適切な高さの椅子、肘の位置、楽な姿勢でかけているかを確認する。
道具を工夫する。
・えんぴつの長さ、重さを変えてみるなど、文具選びでも変わることがあります。重めで太いものの方が書きやすいお子さんもいたりします。また、筆記用具を持ちやすくする補助具(鉛筆に付けるグリップなど)を使うのも方法です。
・特に覚えたい字だけ、大きな画用紙やA4の紙に、マジックペンで書いてみると、指ではなく腕で書くことになります。
そうすると、大きな動きで書字の練習ができるので、指先の細かい操作が苦手なお子さんに有効なことがあります。
・漢字の練習帳もいろいろあって、マスごとに色分けされているノートもあります。一筆ごとに色が変わっているなど、視覚的に分かりやすい教材を利用する方法もありますね。
このように、やり方や環境の工夫をするというのもあります。
人によって字への思いの違いがある!?
ーー:就学前は字のキレイさはあまり気にしていませんでした。小学校に入学してから、学校の先生が字をキレイにと頑張ってくださっているのですが、私自身は、若干諦めかけていました。でも学校の先生に「諦めます」とはなかなか言えなくて…。
野田先生:「字をキレイに書く」というのは、学校の先生ごとに思いの違いがありますよね。
お子さんに周囲のサポートや一定の配慮が必要な場合には、合理的配慮という形で作業療法士が同席して先生と話し合いをさせていただくこともあります。
それが難しいようでしたら、お子さんの緊張をゆるめてあげて「100%キレイに書けなくても大丈夫だからね」などと声をかけて、コミュニケーションをとっていくのも1つの方法です。
ーー:年度が変わり、担任の先生が代わったら、方針も違ったりもしそうですね。これからも諦めず、先生にもアプローチしつつ、難しいと思ったら息子と話すということでやっていこうかと思います。
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対談を終えて
野田先生からいただいたアドバイスをもとに、さっそくいくつか実践させていただいています。字をキレイに書くというのには時間がかかりそうなので、環境面を見直すことに。
背が伸びて座りにくそうになっていた、普段使っている椅子と足置きの高さを変更してみました。そして、太い方が持ちやすいかも…と思い、鉛筆につけるグリップを購入。
長めに鉛筆を持ちがちだった息子も、持つ位置が分かりやすくなり、以前より筆圧も上がり、力が入りやすくなっていそうな気がします。
とめ、はねの練習は、私がもっているA4サイズほどある大きなタブレットを利用してみることにしました。漢字練習アプリを使うことで、書き順や、とめ、はねを、腕を使って書きながらゲーム感覚で覚えて楽しそうです。
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そしてアドバイスをもとに褒め方を細分化。「できないこと」に目を向けるのではなく「できたこと」に目を向けて褒めることを意識し、1本の線をゆっくり書けたら「今の横棒、ゆっくり書けたね」と声をかけるようにしています。
あまり褒められて嬉しい感情を出す子どもではないので、喜んでくれているのかは分かりませんが、お互いイライラすることが減ったように思います。どんな「いいところ探し」ができるのかを、私も楽しんでいけたらと思っています。
執筆/ゆきみ