わが子の障害、実母や義実家、ママ友にどう伝える?それぞれの反応と私の考え【専門家アドバイスも】
大切なわが子に障害がある可能性。祖父母や親族にはどう伝えよう…?
長女のまゆみに神経発達症(発達障害)の可能性があると気づいたのは1歳ごろ。定型発達なら9~10ヶ月ごろにできるようになるはずの指差しが一向に見られないことがきっかけでした。
まだ可能性の段階で祖父母世代(私から見た父母世代)の面々にこのことを伝えるべきか少し考えましたが、私はまゆみのありのままを伝えることにしました。
「まゆみ、指差しがまだ出ないから何か障害がある子かもしれない」
当時はどちらの親とも居住地が離れていたので、隠そうと思えばしばらくは隠せたと思います。そんな中で、たまに会いにくる孫についてそんな風に告げられて、どちらの祖父母もショックだったことでしょう。
けれど、これが一番まゆみのためになりそうな選択だと思いました。もし実際に障害があった場合でもあらかじめ伝えておくことで心構えができますし、障害がなかった場合でも「あのときは心配のあまり考えすぎていたね」で済むと考えたのです。
時間がかかっても、両祖父母ならまゆみのありのままを受け入れてくれるだろうという信頼もあり、祖父母世代には心配なことや1歳半健診で引っかかったことなどは全て共有しました。
祖父母世代の中で、孫娘に障害がある可能性について強い拒否感を示したのが私の母でした。
まゆみの発達の遅れを伝えたとき、私の母は涙を流していました。そして「でもまだ1歳だから、これから成長するから」と愛情はありながらも受け止め切れない様子の言動が多くありました。
しかし、まゆみと接していく中で、きっと納得する部分があったのだと思います。時間はかかりましたが、「この子は何か障害があるかもしれないけれど、大事な孫娘ということに変わりない」という考えに至ってくれたようです。親子の関係性にもよるので何でも話すのが万人にベストとは言えませんが、わが家の場合は確証のない段階から全て話してきて良かったと思っています。
2歳10ヶ月になり、まゆみに正式に自閉スペクトラム症と知的障害の診断がついたとき、母は「診断がついただけで、まゆみちゃんは昨日と何も変わらない可愛くて自由なまゆみちゃんよ」と言ってくれました。今ではまゆみの最大の理解者のひとりになっています。
昔からの友達、子どもを通じて知り合ったママ友、ご近所の人には何て言おう…?
祖父母への告知と同時に、日常的につき合いのある人にどう言おうかも悩んでいましたが、こちらも『ありのままの状態をオープンにする』ことにしました。
困りごとや心配を話すことで何か良い情報を教えてくれるかもしれませんし、何よりまゆみのコミュニケーション不全は誰が見ても明らかだったので、そのことについて何も触れない方が不自然で憶測を招くのではと思ったためです。
そんなわけで、私は診断がつく前から「この子ちょっとゆっくりなんだ」「何か障害がある子なのかも」と周囲に伝えていました。
気を遣わせてしまわないように、なるべく普通のトーンでサラッと言うと、周りも「そうなんだ、何か困っていたら話してね」とそのままを受け容れてくれたように思います。
診断がついた後も、昔からの友人たちとは定型発達のお子さんたちと一緒に遊ばせながらのつき合いがずっと続いています。
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また、日ごろから挨拶する間柄のご近所さんたちにも診断がついていることを話しています。可能な限り自助努力するというのは大前提ですが、「もしまゆみちゃんが1人で出歩いていたら保護して家族に知らせてあげないと」という空気が醸成されたことは心強いまゆみのセーフティネットになっています。
田舎住まいで町内のつながりが強いわが家ではこうした形になりましたが、この辺りは周囲との人間関係やお子さんの年齢・性格、お住まいの地域などによっても多少判断が変わってくるのかもしれません。
ただ、子どもを通じてできたつながりのママ友は一部の人を除いて疎遠になってしまいました。これは私に原因があります。
月齢の近い子どもばかりのママ友会では、「うちの子はこんなことができるようになった」という話がどうしてもメインになるので、最初のうちは「みんなすごいね、まゆみはゆっくりだからな~」と笑えていたのが、どんどん開いていく発達の差を目の当たりにして参加するのがつらくなってしまいました。仲の良かったママ友とは個人的に連絡を取り合っていますが、不参加を続けるうちにコロナ禍で集まり自体がなくなってしまい、今に至ります。
きっとその場へ行けば受け入れてくれた人たちだったと思いますが、当時の私は行けばつらくなると分かっている場所へ行くことがどうしてもできませんでした。
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一期一会の人にも
公園で話しかけられた人や初めて会った人なども、友好的な素振りを感じた場合はそのままの状況を伝えています。
話をしていると数分と待たずまゆみが相手のことを無視するタイミングが来るので、それに合わせて「自閉スペクトラム症のある子でして、ご挨拶ができなくてすみません」と伝えると大抵の人は理解してくれます。
一番避けたいのは事実ではない憶測をされたり、まゆみのことを「変な子だな」という判断をされたままお別れになることなので、こちらから必要な情報のボールを投げた後は、どう受け取ってどう対応するかは相手側にゆだねています。
びっくりされる人もいますが、ほとんどの人はそのまま受け入れてくれたり、身近な神経発達症(発達障害)の子どものエピソードなどを教えてくれる人もいたりします。
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もしまゆみの特性のことを知って離れていく人がいたら、それはそれで仕方のないことだと思います。理解してくれたらもちろんうれしいのですが、受け取り方は自由ですし、障害の話題にトラウマのある人かもしれません。どちらにしてもご縁のない人だったのでしょう。
こちらに無関心な人にまでわざわざまゆみのことを宣伝しませんが、少しでも関わりを持とうとしてくれる人には「自閉スペクトラム症の子どもが地域にいる」「笑顔で、普通に暮らしている」と知ってもらうことが、こうした障害への理解を少しずつ広めることにつながっていくのではないかと思い、このようにしています。
振り返って思うこと
まゆみの言動に表れる特性は強く、隠そうと思って隠せるものではないので結局は「どうすれば本人が生きていきやすいか」を軸に考えています。
この春からまゆみは保育園に通い始めて集団の中で過ごすようになりましたが、やはりマイノリティであることはどうしようもない事実です。今後、親の手を離れて目の届かないところで過ごす時間が増えていくことを思うと、少数者であるまゆみが健やかに社会の中で育っていくには身近な人たちに理解を求めていくほかないと感じています。
決して直接的な手助けを求めているわけではなく、「まゆみちゃんはこういう子なんだ」「身近にこんな子がいるんだ」と知っていてもらうだけでいいのです。それが私たち家族にとってはとても有難いことなのです。
幸いわが家の現状では、ありのままを伝えることがありのままを受け容れてもらえる結果につながっているため、偏見を持たずに接してくれる周りの人たちへの感謝をこれからも忘れないようにしたいと思います。
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執筆/にれ
(監修:新美先生)
お子さんに自閉スペクトラム症の特性があることについて、身近な人や周囲の人にどう話していくかについて、詳しくエピソードを聞かせてくださりありがとうございました。
にれさんも記事中にも何回か言及いただいているように、カミングアウトを誰に、いつ、どういう言い方でしていくかについては、個別の状況によりまちまちで、こうするとよいという正解はないかもしれません。だからこそ、一つの例として聞かせていただけると、うちの場合はどうするかということを比較して考えやすいかと思います。ありがとうございます。
まずは身近な人について、少なくともお子さんの親(配偶者)に伝えることは、ちょっと抵抗がありそうな場合であっても必須ですが、祖父母に関しては世代が違うととらえ方もさまざまであり、悩める場合もあるかもしれません。
知ってもらって味方になってもらいたいので、伝えていくとよいとは思いますが、受け止めかたには個人差があります。相性の良しあしは祖父母―孫であってもあり、特性・診断名として伝えたから理解度・協力度が上がるとは限らないものだと割り切ったうえで、状況に応じて伝えていけるといいですね。
さらに周囲の人(ママ友・クラスメイトの保護者など)に関して伝えるかについては、診断名は子ども本人の個人情報であるということもよく念頭に置いて、検討していただけたらいいかなと思います。
にれさんの場合は、オープンに話されることによって、周囲の味方を増やしていけたことはとっても素晴らしいエピソードで参考にさせていただきたいと思いました。ありがとうございました。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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