愛あるセレクトをしたいママのみかた

カミングアウトは必要?憶測、誤解…発達障害グレーだからこそ悩ましいーー2歳次女の特性の伝え方、どうすべき?

LITALICO発達ナビ

きょうだいで発達障害!? 長女と次女で異なる点


前回は長女まゆみの持つ障害や特性を人にどう伝えているかをお話ししましたが、実はそれ以上に悩ましく感じているのが次女あずさの特性を人にどう伝えるかです。

現在5歳の長女まゆみの場合は2歳10ヶ月のときに自閉スペクトラム症と知的障害の診断もばっちりついています。そして、1分も一緒に過ごせば「あ、何か障害がある子なのかな? 」と誰もが分かる言動なので、「どうしたら本人が生きていきやすいか」を考えたときに「周囲にもオープンにして理解を得ていこう」という結論に至るまで長くは悩みませんでした。

一方、次女のあずさは「人見知りや物怖じをしなさすぎること」「癇癪の強さ」などから自閉スペクトラム症のグレーゾーンの指摘を受けているものの、2歳9ヶ月の今のところ診断はついておらず、知的な遅れもやりとりの困難さもありません。
ただし、特定の場面になるとほかの子どもたちとの違いを感じることがあるので、少し注意が必要と言われている子どもです。

そんなあずさが「どうすれば生きていきやすいか」はまだ模索している最中ですが、現時点での対応について書いていきます。

カミングアウトは必要?憶測、誤解…発達障害グレーだからこそ悩ましいーー2歳次女の特性の伝え方、どうすべき?

Upload By にれ

発達障害グレー2歳次女、あずさの特性


小さな頃から場所見知りや人見知りとは無縁だったあずさ。好奇心も強く、市役所や保健センターなどの大きな建物では私が制止してもズンズンと探索行動を始めてしまうので、そうした点がまゆみと似ているなと思いつつ、「子どもってこんなものなのかな?」とも思っていました。

けれどあるとき、長女の通う療育先の心理士さんに聞くとこんな答えが返ってきました。

カミングアウトは必要?憶測、誤解…発達障害グレーだからこそ悩ましいーー2歳次女の特性の伝え方、どうすべき?

Upload By にれ

その後の検査と診察で自閉スペクトラム症グレーの指摘を受けたのですが、物怖じをしなさすぎる特性は2歳9ヶ月になった今も健在です。
見知らぬ人に自分から声をかけたり、振り返るとハトを捕獲していたり、動物園ではヤギの口に手を突っ込みにいったりする様子が見られます。危険なときや相手に迷惑がかかりそうなときは止めているのですが、警戒心や恐怖心はどこへいったのだろうと本当にヒヤヒヤします。

困難を感じる「待つ場面」


このあずさの『ドンドンいったれ特性』によって困るのが、健診などの待ち時間です。

先頃、2歳半児向けに市の歯科健診があったのですが、40組ほどの親子がひしめく待合室という非日常空間にあずさが大興奮してしまいました。騒がないようにと持参したタブレットに見向きもせず、「ここでお待ちください」と案内された1m四方ほどの待ちスペースを飛び出していくあずさ……。

カミングアウトは必要?憶測、誤解…発達障害グレーだからこそ悩ましいーー2歳次女の特性の伝え方、どうすべき?

Upload By にれ

ほかの親子さんたちの迷惑になるので何度も自分たちのスペースへ連れ戻すのですが、その都度「ママ、や~め~て~」「あずちゃんはあるきたいの!」「はなして!」とひとしきり抗議の声を上げてすぐにまた走っていってしまいます。

だんだん私もイライラしてきて、「今は待つ時間!お願いだからママとここにいて!」と語気が強くなってきたとき、私たちのスペースの目の前で身長体重の測定が始まりました。あずさの目が輝きます。

数人の保健師さんが子どもたちを測定しながら「じっとできて偉いね~」と褒めているのを確認すると、あずさも拍手しながら立ち上がって「じょうず!えらいえらい!よくできたね~!」とよそのお子さんたちにエールを送り始めました。

たしかに私たちのスペースからは出ていないのですが……保健師さんサイドに回ろうとする2歳児の姿が面白く映ったのか、保健師さんや周りの人もクスクス笑っていました。困ったことに、静かにすることを促すと「いや!」と叫んで走り出してしまうので、何度か脱走を繰り返しながら、結局あずさの「褒め係」は私たちの番号が呼ばれるまで続きました。

歯科健診の日、40組の親子の中では多少ウロウロしているお子さんもいましたが、ダントツで私とあずさがバタバタしていました……。
言葉の発達と共に癇癪が落ち着いてきていたので、近頃は「もう定型発達と変わらないんじゃ?」と感じていたのですが、待合での様子は「やっぱりほかの子と違うところもあるな……」と改めて思う出来事でした。

明るくて人懐こいのはよいことなのかもしれませんが、「人類みな兄弟!」と言わんばかりのあずさの人との関わり方は、適切な距離感が分からないのではないかと少し心配しています。


まゆみの場合、こうした場ではヘルプマークをつけたり、「障害があります。困っていたら助けてください」と印刷されたテープを背中に貼ってさりげなく周囲にも事情が分かるようにするのですが、あずさの場合は少し考えてしまいます。

障害というほどではないけれども困っているのは確かで、困っているけれども言葉が通じるので何とかなりそうな気がしてしまうのです。それに困っているのは私だけで、今のところ本人は困っていないのも悩みどころです。性格なのか特性なのか、このお調子者でグイグイいってしまうところを診断もなしに人にどう伝えていいかも分かりません。

相手によって伝える・伝えないを使い分けることに


通常のやりとりでは困らずに受け答えができるため、現在のところ、伝える必要のない人にまであずさの特性を話すことはしていません。まゆみのケースとは正反対になるのですが、あずさのことをよく知らない人に「特性がある」と伝えることで、逆に誤解や憶測を招くのでは?という懸念があるからです。

一方で、関わる中で特性を目にするかもしれない祖父母世代や仲の良い友人たちにはありのままを伝えています。
祖父母はともかく、友人たちはみんな「えっ?あずさちゃんが?全然分からなかった」と言ってくれるのですが、通常のつき合いでは気づかないくらい特性の出る場面が限定的ということなのでしょう。

今は療育園に通っていますが、来年からあずさが保育園の年少クラスに通うようになれば、あずさの特性のことは園にも伝えるつもりでいます。
長い保育時間の中であずさの特性が強く出る場面があるかもしれないので、定型発達の子どもと同じ対処では上手くいかない可能性があることを先生方にも知ってもらっていたほうが、あずさにとって良い園生活が送れるだろうと思うからです。
あずさの特性に対し、ひとまずわが家は「周りの人が困るかもしれないので、あずさと日常的に関わる人には伝えておく」という方針になりました。関わってくれる人も予備情報があるほうが安心でしょうし、知っておいてもらうことであずさの助けになることもあると思います。

激しかったあずさの癇癪が落ち着いていったように、積極的すぎる特性も落ち着いて、この先の集団生活で困らないくらいになるといいなと思います。本人も周りも困らなくなれば、当然ですがカミングアウトについて頭を悩ますこともなくなります。
好奇心旺盛なところも人と関わろうとするところも、節度さえ守れれば長所になると思うので、私もあまりダメダメ言い過ぎずにほどよい加減を教えていきたいです。
カミングアウトは必要?憶測、誤解…発達障害グレーだからこそ悩ましいーー2歳次女の特性の伝え方、どうすべき?

Upload By にれ

執筆/にれ

(監修:森先生)
「発達障害のグレーゾーン」と言われる人は、10人に1人とも、7人に1人とも言われています。専門家によって意見はまちまちです。そもそも病院に来ないで悩んでいる人も多く、正確な人数を把握することがかなり難しいのです。

精神医学では、便宜上「発達障害」の診断基準が定められていますが、実際のところ、「発達障害」、「グレーゾーン」、「発達に偏りのない人」、なんてはっきりくっきりと分かれているものではありません。グレーゾーンだから発達障害よりも苦しみが少ないとも思いません。発達障害には発達障害の、グレーゾーンにはグレーゾーンの苦しみがあります。

グレーゾーンであることを周囲に伝えておくべきかどうか、悩まれる方も多いかと思います。
もちろん、伝えておいたほうが対策をたててもらいやすいというメリットはありますが、中には偏見を持つ人もいるでしょうから難しいところです。
どこまで伝えるかは慎重に考えないといけません。

はっきりと味方になってくれる人、保育園や学校の先生には伝えておくべきでしょう。よく遊ぶお友達などごくごく親しい人にも特性を伝えておくと、いざというときに手助けをしてもらえるのではないでしょうか。たとえば誤解を受けそうな場面でフォローしてくれるとうれしい、というように伝えておくといいかもしれません。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

提供元の記事

提供:

LITALICO発達ナビ

この記事のキーワード