「ぼくには障害があるの?」特別支援学級に通う小5息子突然の問い。悩み続けた障害告知、息子の反応は?
「うちの子にはまだ分からないかも」と先延ばし
療育センターでの発達検査により、「発達障害の傾向がある」と医師から診断されたのは長男が3歳のとき。
このころはまず自分が受け止めきれていなくて、毎日泣いてばかりでした。
長男が5歳後半になってようやく私の気持ちに一区切りつき、「本人にも伝えた方がいいよね」と思うようになりました。
理由は、あとになって言うより早いうちに言った方がショックが少なくてすむかもと思ったから。
もっと言うと、成長してから伝えたときに「なぜもっと早く言ってくれなかったの」と責められるかもしれないと思ったからです(私ならきっと親を責めてしまう)。
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「よし、長男が年長さんになるまでに言うぞ!」
ところがいざ伝えようとすると、発達障害について5歳の長男が理解できるように伝えるには、どんな言葉で説明すればいいのか分からず、口がモゴモゴしてしまいました。
「よし、小学生になるまでに言うぞ!」
小学生になったらなったで、
「まだ長男には理解できないかもしれないなぁ…」
などと、どんどん先延ばしにして、気づけば長男は5年生になっていました。
私はもともと先延ばし癖があるのですが、本当にわれながら何をやっているんだろうと思いました。
ところがあきらめかけたそのころ、”そのとき”が訪れたのです。
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ぼく、障害があるの?
長男は3年生ごろから登校渋りを始め、学年が上がるごとに徐々に欠席する日も増えていきました。多いときは毎週のように休んでいた月も。
長男が5年生になった7月のある日、学校を休んだ長男を誘って、気晴らしに2人でドライブに出かけました。
「どこ行くの?ママー♪」すっかりご機嫌な長男を乗せ、車を走らせました(長男は登校前はショボンとして元気がないが、欠席することが確定したとたんご機嫌になる)。
「ところで最近学校を休みがちだけど、何か心配事でもあるの?」と私が尋ねると、長男はスンと押し黙ってしまいました。
「人間関係…お友達関係のことで悩んでたりする?」学校に行きたがらないのは人間関係のせいでは?とすぐに思ってしまう私です。と言うか自分がそうです(以前、人間関係が理由でパート先を変えました)。
私はもう一歩踏み込んで聞いてみました。「前から気になっていたんだけど、特別支援学級と通常学級の行き来について、クラスのお友達から何か言われたりする?」
※長男の小学校では、おもに国語と算数を特別支援学級で受け、それ以外の科目を通常学級で受けるスタイルです。
すると長男はキョトンとした顔で「え?何も言われないよ」と返してきました。長男のその様子から、本当に言われていないんだと思いました。私はお友達のみんなに感謝したい気持ちでした。
ところが長男は何かを察したようです。「ママ、もしかしてぼく…障害があるの?」
新たな発見
長男にこう尋ねられたとき、私は胸がズキンとしました。
同時に、何て答えればいいのか、なるべく長男を傷つけずに、真実を告げるにはどうしたらいいのか、頭をフル回転させたのですが、次の瞬間出てきた言葉はたった一言「うん」でした。
私は長男が自分に障害があるとわかってショックを受けてしまうのではと思いましたが、笑顔で「そっかぁー」とだけ言っていました。
その様子に私が驚きながら、「なんで驚かないの?」と聞くと、
「特別支援学級には障害のある子が何人かいるんだ。それでなんでぼくはここにいるんだろうと思ってた。ぼくにも障害があるんだね」
とスッキリした笑顔で返してきました。
私は今までずっと言えなかったことを謝りました。それから発達障害のことをできる限り分かりやすく説明しました。
長男は「教えてくれてありがとう」とニッコリ笑顔で言いました。
少し驚いた様子ではあったけれど、悲観する様子はまったくなく、新たな発見をした、と言う感じでした。
私は正直、すごいなと思いました。
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おわりに
発達障害のことを長男に言えたとき、「ヤッター!ついに言えたぞー」と心の底から安堵しました。
と同時に、私は自分で勝手に荷物を重くしていたのかなと思いました。
思えば長男が発達障害があるかもしれないと知って一番ショックを受けていたのも、受け入れるのに時間がかかったのも私一人だけ。夫や実母も義母もじつにすんなり受け入れています。つくづく私は一人で悩み続けてしまう性格だと思い知らされました。長男本人は笑顔で受け入れていたのにね。
長男は来年中学生になります。
どんな日々が待っているやらまだまだお互いに不安だらけですが、引き続き私も一緒に成長していけたらと思います。
執筆/星河ばよ
(監修:初川先生)
お子さん本人への告知のエピソードをありがとうございます。
ばよさんの長男くんの場合は、本人から「障害があるの?」と聞いてきたのですね。5年生くらいだと周りの状況も見えてくるので、そういうこともあるでしょう。
さて、障害告知についてですが、さまざま悩ましいポイントがあるなと感じます。まずは、「障害」と伝えるかどうか。「障害」が何であるか分かるお子さんと、まだ分からない年齢のお子さんもいると思います。また、「障害」にはネガティブなイメージ(レッテル)が先に立って認識される場合もあります。
そのあたりをどう考えておくか。
そして、大事なのは障害かどうかを伝えることなのか、というポイントもあります。例えば、まだ自分自身の特性や得意不得意について、よく認識ができていない状況で、「障害」とだけ伝えるのが本人にとって自己理解が深まるのかどうか、ということです。
こういうときにこう困りやすい。こんな苦手さがある。こういうことは特に苦手だから周りの人に助けてもらうことも必要みたいだ。逆に、こういうことはとても得意である。そうした自分の得意不得意や陥りがちな困りごとを日常生活の中で日々のエピソードを振り返りながら積み上げてゆき、自分はこんな人間だということを知っていくこともとても大切です。
苦手さが生活に支障を来したり、自分や周りの人が時にとても困ってしまうこともある場合に、それを障害と呼ぶんだよ、という流れは1つあるかなと感じています。
また、障害告知は一度伝えたらおしまいというものでもありません。一度にわーっと説明しても咀嚼できないかもしれません、また、どれほど伝え方を考えていても、想定した通りに伝わるとも限らないので、様子を見ながら、誤解したようなら修正したり言葉を足したりしながらしてゆくものでもあるように思います。
いろいろポイントは書いてきましたが、告知の正解パターンというのはないと思います。
保護者の方の受け取りや認識もさまざまで、お子さんの受け取りもまたさまざまだろうからです。一般に、主治医の先生に相談したり、スクールカウンセラーや相談機関の心理職に相談したりしながら準備される方も多いです。どうしてゆくか悩ましいときは相談しながら、ご自身の考えを言葉にしてゆくプロセスも一手です。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。