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カサンドラ症候群とは?症状や原因、治療や対処法について分かりやすく解説します

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カサンドラ症候群とは?


カサンドラ症候群は自閉スペクトラム症(ASD)などのある家族や身近な人とのコミュニケーションがうまくいかず、その困難さが周囲に理解されないことがきっかけとなり、心身に不調が出ている状態のことです。

カサンドラ症候群は精神面では「抑うつ」や「自己評価の低下」、身体面では「不眠」や「体重の増減」などの不調が現れることがあるといわれています。

カサンドラ症候群はそのような状態を指す言葉で、医学的な診断名ではありません。カサンドラ症候群はほかにも「カサンドラ情動剥奪障害」や「カサンドラ状態」と呼ばれることもあります。

もともとはパートナーとの関係によって生じると考えられてきましたが、時代が進むにつれて、自閉スペクトラム症(ASD)などのある子どもがいる保護者についても使われるようになってきました。

ほかにも自閉スペクトラム症(ASD)などのある人と同僚や上司といった、職場の人間関係についても使われる場合があります。

なお当初はアスペルガー症候群のある人とそのパートナーについての概念でしたが、「アスペルガー症候群」は、2013年に発行された『DSM-5』(アメリカ精神医学会『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)によって「自閉スペクトラム症(ASD)」という診断名に統一されました。

カサンドラ症候群の原因について解説します。

カサンドラ症候群は自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係性から不調が生じている状態で、その原因やきっかけは一つだけではありません。

主なものとして、
自閉スペクトラム症(ASD)などのある身近な人とのコミュニケーションがうまくいかない
そのことを相手や周囲に伝えてもなかなか理解が得られない
カサンドラ症候群の当事者が苦しさを感じたまま孤立している
という原因が考えられています。

単に自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係性だけでなく、苦しい思いをしていることがなかなか理解されないことも関係してくるといわれています。

■自閉スペクトラム症(ASD)とは?
ここでは、自閉スペクトラム症(ASD)のある身近な人とコミュニケーションがうまくいかない原因として考えられることを紹介します。

まず自閉スペクトラム症(ASD)とは、生まれつきの脳機能の偏りによりさまざまな特性がある発達障害のことです。

自閉スペクトラム症(ASD)の特性には
対人関係や社会的コミュニケーションの困難
特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ
があります。

それぞれを簡単に見ていきます。

<対人関係や社会的コミュニケーションの困難>
自閉スペクトラム症(ASD)のある人は、あいまいな表現や言葉の裏を読むことが苦手で会話がかみ合わなかったり、相手の立場に立つことが苦手で、悪意なく不適切な発言をするといった傾向があります。


例えば、
・「ちゃんと片付けておいて」と言われても「ちゃんと」がどういう状態かイメージすることができず、何をしていいか分からない、
・「お鍋を見ていて」とお願いされたときに鍋が焦げついていても「火を止める」ことはせずじっと鍋を見つめ続けるなど

家族や身近な人は、自閉スペクトラム症(ASD)のある人と接する中でそれまで自分は「当たり前」と思っていたやりとりが通じず悩んでしまうこともあります。

<特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻>
特定の物事や自分で決めたルールにこだわりが強く見られることがあります。

日常で見られる例でいうと、外出した際に道路工事などにより普段と違う道順を通ろうとすると、落ち着かなくなったりパニックになってしまうなどがあります。

ほかにも、自閉スペクトラム症(ASD)のある人の中で「夕飯は19時ぴったりに食べ始める」というルールがあった場合、時間がずれることに強い抵抗を示すといったことがあります。
また、感覚の過敏さにより偏食が激しかったり、触られることを嫌がったり、反対に鈍麻さがある場合は火傷をしていても気づかないなど周りの気遣いやサポートが必要なことも多くあります。
このようなパートナーや子どものルールなどに合わせようとすることで、ストレスや疲労を感じてしまう人もいます。

■周囲に理解されづらい
コミュニケーションに困難がある人と接することの難しさやつらさが周囲に理解されにくいということが、カサンドラ症候群の原因の一つとして考えられています。
例えば、学校や会社など社会的な場では適応していて、プライベートな場所では自閉スペクトラム症(ASD)の特徴にあるようなこだわりが強く出ていたり、パートナーや親子の関係の中だけでコミュニケーションの難しさが生じている場合は、周囲には伝わりにくいものです。
そのため当事者のつらさが共感されなかったり、当事者に原因があるように見られることが孤立感を深めていくことにつながります。

カサンドラ症候群とはどんな症状?


カサンドラ症候群は心身に不調が現れている状態です。
カサンドラ症候群は医学的な診断名ではないため、明確に症状が定められているわけではありませんが次のような症状が出てくるといわれています。

■精神面にあらわれるカサンドラ症候群の症状
カサンドラ症候群で精神面に現れる症状として、「抑うつ」や「パニック」などがあります。

そのほかにも以下のような症状が表れるといわれています。
・抑うつ
・PTSD (心的外傷後ストレス障害)
・不安障害
・パニック(突然の動悸やめまい・手足の震えといった発作)
・自己評価の低下
・情緒不安定
・自己喪失感
・罪悪感
・無気力など

■身体面にあらわれるカサンドラ症候群の症状
カサンドラ症候群の症状は身体面では「不眠」や「頭痛」が不調として現れてきます。

ほかにも身体面で現れる症状として以下があります。
・不眠
・頭痛・偏頭痛
・体重の増減
・自律神経失調症(体のだるさ、肩こりなど全身の不調)など
この章で紹介した症状は一例であり、カサンドラ症候群の症状は人それぞれ異なります。


自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係に悩んでいて、何かしら心身に不調がある場合は、このあと紹介する場所に相談してみるといいでしょう。

自閉スペクトラム症(ASD)の発現は男性に多いことから、カサンドラ症候群の発生はパートナーとなる女性側に多いといわれています。

自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある身近な人とのコミュニケーションにズレがあったり、こだわりに戸惑うことがあっても、我慢して受け入れようとすることで、偏った関係性が固定して、こうした症状が進行することがあります。

カサンドラ症候群の治療・対処法


カサンドラ症候群の治療として、まずは心身に現れている症状についての治療を行っていきます。

抑うつやパニックに対して薬物療法や心理療法などの治療法で、症状の改善を図っていきます。身体面の不調に関しても必要に応じて薬物療法などを行っていきます。ただ、これらは表に現れている症状に対しての治療であり、カサンドラ症候群で悩んでいる場合は自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係性を改善していくことが大事になります。

自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係性を改善するための対処法を紹介します。


■自閉スペクトラム症(ASD)の診断を強要しない
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある人の中には学校や会社などでは適応していて、本人は特に困っていないという場合もあります。

関係性を改善したいからといって無理に受診を促すと、本人が抵抗し関係がこじれることもあります。

■自閉スペクトラム症(ASD)の特徴や対処方法について知る
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴について知ることで、コミュニケーションでズレが生じる理由や、その対処法が分かることもあります。

現在では本やインターネットで調べることができるほか、発達障害についての支援機関に相談するなどの方法で特徴や対処法を知ることができます。

■生活していく上でのルールを決める
自閉スペクトラム症(ASD)について知識を得たうえで、生活上のルールを決めていきます。

自閉スペクトラム症(ASD)といっても、一人ひとり特徴の現れ方も性格も異なります。どういうルールや方法であればお互いがストレスなく続けていけるか、一緒に決めていくことが大事です。

例えばあいまいな表現が苦手で「ちゃんと片づけて」と言われても行動できない子どもの場合は、片づけるものの名前を書いた箱を用意しておきます。


そして「遊び終わったら、●●の箱の中に入れてね」と伝えるようにするなどの方法があります。

■距離を置く時間や、相談できる第三者とのつながりをつくる
親子の場合は長い間距離を置くのは難しいと思いますが、預けることができる施設などを活用し、数時間でもリフレッシュする時間を設けるといったことも大事になります。

また、日常1対1の時間が長いことでストレスを感じる場合は、友人や支援機関の方など第3者も含めて過ごす時間を作っていく方法もあります。

カサンドラ症候群のある人が利用できる相談先は?


ここではカサンドラ症候群のある人が利用できる相談窓口を紹介します。
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある人の年齢によっても相談先が異なりますので、分けてお伝えします。自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある人について、年齢にかかわらず相談できる場所として「発達障害者支援センター」や「発達外来のある病院」があります。

■発達障害者支援センター
年齢にかかわらず発達障害のある人の日常生活や仕事など、幅広い相談を受け付けている支援機関です。本人だけでなく、家族からの相談も受け付けており、専門的なスタッフによるアドバイスや支援機関、病院の紹介なども行っています。


■発達外来のある病院
発達外来のある病院では、本人以外からの相談を受け付けている場合もあります。カサンドラ症候群の相談ができる病院もありますので、事前に確認しておくといいでしょう。

自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある子どもについて相談する場合は、「子ども家庭支援センター」「児童相談所」「自治体の子育て相談窓口」「児童発達支援センター」などがあります。

■子ども家庭支援センター
子ども家庭支援センターは18歳未満の子どもについての相談ができるほか、ショートステイや一時預かりなどのサービスも提供しています。

■児童相談所
児童相談所は18歳未満の子どもについての相談ができる場所です。児童福祉司・児童心理司・医師・保健師などの専門スタッフがいて、相談へのアドバイスやほかの支援機関の紹介などを行っています。

■自治体の子育て相談窓口
ほかにも自治体のWebサイトでは、子育てや発達の気になる子どもについての相談ができる場所が一覧化されていることがあります。

東京都三鷹市のWebサイトには、子どもの発達に関する相談先のほか、「お母さん・お父さんのこころの相談」としてパートナーや家族との関係についての相談先も載っています。

お住まいの自治体のWebサイトなども参考にしてみてください。

https://www.city.mitaka.lg.jp/c_categories/index03005006.html
参考 :三鷹市「子育てに関する各種相談」

■児童発達支援センター
障害のある子どもに対して、日常生活や社会生活に必要なスキルなどを身に付けるためのプログラムの提供を行う施設です。

利用するには自治体に申請する必要がありますが、相談だけならすぐにできる場合があります。

カサンドラ症候群のまとめ


カサンドラ症候群は、自閉症スペクトラム障害(ASD)やその傾向のあるパートナーや子どもとの関係性によって、心身に不調が現れる状態を指す言葉です。

抑うつなどがある場合は薬物療法などで治療すると共に、パートナーや子どもとの関係性を改善していくことも大事です。

ご自身だけで抱え込まずに、発達障害について相談できる支援機関なども活用していくといいでしょう。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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