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発達凸凹次男、大学で初の合理的配慮を申請。順調に迎えた夏休み、今度は自動車教習所で家族を巻き込んでの大波乱!?

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受験時に大学での合理的配慮を申請

発達凸凹次男、大学で初の合理的配慮を申請。順調に迎えた夏休み、今度は自動車教習所で家族を巻き込んでの大波乱!?

Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ

わが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。
次男ウッシーヤは専門学校を卒業し、高卒認定試験をパスしました。次は大学入試です。念願の保育士資格の取得を目指して受験することになりました。

ウッシーヤがお世話になったインターナショナルスクールの学園長から推薦状と合理的配慮を申請する手紙を受けとり、長年お世話になっている療育施設へ夫ラクマといっしょに相談に行きました。わが家では、いまも定期的にこちらの施設へ相談しています。

療育施設の支援員さんから、県が発行している「サポートブック」の活用をすすめられ、学校で合理的配慮を受ける際の具体的な記入方法を教わりました。
私は「サポートブック」の存在を知っていましたが、改めてその存在を確認して記入方法を教わるのに、ベストなタイミングでした。

受験の申請のときには、「サポートブック」に加えて要望書を提出しました。要望書には、家庭内での工夫を学内でも希望すること、別室での定期テストの受験を認めてほしいこと、耳せんを活用したいことなどを書きました。

その後、ウッシーヤは大学合格を果たしたので、夫と本人と3人で入学式に参加しました。式のあとで、ウッシーヤのクラスを担当する教授から声をかけていただき、大学での合理的配慮のサポート体制の説明を受けることになりました。

大学の教職員のチームで支援を受ける

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会議室に入ると学生課の職員や教科担任の先生が待っており、全部で6人くらいいました。それぞれから紹介を受け、各部門の担当者でチームをつくって支援体制を整えるという説明を受け、とても感激しました。
このような合理的配慮は、開学以来初めての試みだとも言われ、息子の後輩のためにもよい実績にならなくてはと、身のひきしまる思いをしました。


講義が始まると、担当の先生から事前にメールで授業のレジュメが届き、自宅で予習ができました。また別室での試験や耳せんなどの工夫もすべて認められました。また、学内で必要な支援について、ウッシーヤ本人が説明する機会をいただき、先生方に理解してもらえたことで、事前にしっかり練習して講義や実習に取り組むことができました。

さらに、クラスの中でのサポートもしてくれており、担任教授が毎週ランチ会を行ってくれました。毎月本人との面談を実施し、どんなことで困っているのかを確認して、保護者宛にメールで連絡してくれました。私も、家庭で効果のある工夫を学校側とシェアしました。

入学前はウッシーヤが講義についていけるか心配していましたが、このようなしっかりとした体制で支援していただき、想像以上のよい成績を収めることができました。

自動車の運転免許取得を決める

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1年次の前期の講義が順調に進んだので、夏休みを利用して自動車の運転免許を取得するために自動車教習所に通うことになりました。
先に運転免許の取得にチャレンジした長女ニャーイは3回教習の期限切れをおこしてしまい、結局、運転免許の取得に10年かかりました。ウッシーヤはスポーツが極端に苦手だし、不器用なところがあるし、左右をよく間違えるので、自動車の運転をさせるうえで大きな不安がありました。でも、電車のない沖縄では、運転免許を取得することは就労の備えとして必須なのです。先々の不安はありますが、とにかくやらせてみなければ結果は分かりませんのでチャレンジさせることにしました。

それからしばらく経ったある日、教習所に通っているはずのウッシーヤの様子が、おかしいことに気がつきました。受講している講義の内容や実技の過程のことを聞いても、返ってくる答えがあいまいでつじつまが合わないのです。強く問いつめると、教習所にはまるっきり通っていないということが分かり、私はパニックになってしまいました。
私はパニックになると相手を追いこみすぎてしまうことがあります。
厳しい言葉を投げかけているうちにウッシーヤが過呼吸を起こしてしまったので、私は我にかえりました。発達凸凹タイプを追いこむのは逆効果であると思いだしたからです。

パニックになったウッシーヤは逆ギレしてしまい、自動運転が普及するまで運転免許は取らないと言いだす始末です。なんと支援のやりとりのさじ加減が難しい子でしょう。

てんやわんやの自動車運転免許取得の支援

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しばらく間をおいてウッシーヤを休ませたあと、家族で話し合いの場を持ち説得を始めました。運転免許を取るメリットをたくさんならべて、先の見通しを伝えたのです。

免許を取った後にドライブで行けそうな彼の大好きな花のテーマパークや海や森の自然風景をたっぷり見せて、車を運転する楽しさをイメージさせたのです。この成功体験の先取りイメージ・トレーニングは、ウッシーヤにとっての安全基地なのです。
教習所に通う前にすべきことでした。

なんとか運転免許を取りに行く気になってきたウッシーヤの支援のために、家族全体で役割分担をしました。教習所への送迎や講義の予約手続き、試験勉強や路上試験対策のための練習にも付き添いを行いました。

学科試験は○×式なので、あてずっぽうに回答しても半分くらいは点数が取れるはずなのに、ウッシーヤは指導員が「こんなひどい点は初めて見る」というくらい成績が悪いのです。間違えたところを「この問いは、どういう意味だと思うの?」というふうに解きほぐす感じで確認していきました。すると、とんでもない思い違いをしていることが次々に分かりました。

例えば、「高速道路では、どんな場合でも最低速度に達しない速度で運転してはならない」という問題があるとします。これは「『渋滞時などやむを得ない場合は除く』ので、答えは×」という、よくあるひっかけ問題なのですが、ウッシーヤは「ルールには従わなければならない」という思い込みが強いので、この手の問題は必ずと言っていいほど答えを間違えてしまいます。


そして路上教習に出ると、今度は直線でスピードが出せず苦労していました。速度オーバーは事故のもとだと習うと過剰に萎縮してしまったようです。また「おおむね」とか「だいたい」という言葉の意味をしっかりと解釈できず、教官に「だいたい時速40㎞で走るように」と言われれば、そのスピードを常に出し続けなければいけないと感じていたようです。これは技能以前の認知の問題だと思います。

いろいろな苦労はありましたが、ウッシーヤは、教習期限残り0日、合格ラインちょうどの点数というギリギリのところで合格し、運転免許を取得しました。その後のウッシーヤの自動車運転ライフは、今後のお楽しみにしておきます。

執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ

(監修:室伏先生より)
大学受験、そして入学後のご家族と学校の先生方による具体的な支援内容、運転免許取得までの葛藤と乗り越えるための工夫について共有してくださり、ありがとうございました。ウッシーヤくんが大学でよい時間が過ごせるよう、受験前から準備されたのですね。
また学校の先生方にもご家族の熱意が伝わり、素晴らしい配慮をしてくださったのですね。こういった合理的配慮が当たり前の社会になっていくとよいですね。
また、家族が一丸となってさまざまな工夫をして、運転免許を取得されたこと、素晴らしいですね。ウッシーヤくんにとっても、大きな自信になったのではないでしょうか。これまでの生活でもきっとたくさんの工夫をして、さまざまな困難を乗り越えられてきたのだと思います。そういった工夫や努力は、ご家族にとってもお子さんにとっても、今後に繋がる大切な経験、力となっていると思います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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