「弟と一緒がいい」定型発達の姉の希望で障害のある弟も同じ幼稚園へ。でも小学校はーーわが家の選択、きょうだい児の気持ち
離れ離れになりそうだった幼稚園
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まちゃには2歳年上のお姉ちゃんがいます。娘は、地域では人気のある人数の多い幼稚園に通っていました。娘は当然弟のまちゃも自分と同じ幼稚園に入ってくると思って張り切っていましたし、幼稚園にはきょうだい枠があるので年少になれば入園できると副園長から伝えられていました。
ところが、まちゃが2歳になり「発達に不安がある」と副園長に打ち明けると未就園児クラスから通うように言われました。まちゃはそのときは別の預け合いのサークルに入っていましたが、そこをやめて娘の通う幼稚園の未就園児クラスに通わせることにしました。しかし、入園選考の時に園からは「別の幼稚園に入園してほしい」と言われ、大変驚きました。
そのことを発達センターの臨床心理士に相談すると「きょうだいを別の幼稚園に通わせるのはお母さんの負担が大きいですし、家庭にも影響が出てくるかもしれません。それならまちゃくんのお姉さんに転園してもらって、一緒に別の幼稚園に入れてはどうですか」とアドバイスをいただきました。
それをそのまま娘の通う幼稚園に伝えたら副園長が「こんなにこの幼稚園になじんでいる娘さんにそんなことはさせられません。まちゃくんもこの幼稚園に入園してください」と言いました。いろいろありましたが、2人は同じ幼稚園に通うことになりました。
まちゃの入園後。良いこと、首をひねること
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入園したまちゃは集団行動がほとんどできず、4月から個別の面談で対応を相談されました。私は大変でしたが、娘はまちゃが幼稚園に入ったことをとても喜んでいました。毎朝私がまちゃの朝の準備を教室で手伝っていると、まちゃの教室まで娘が良く顔を出しました。年長の娘はまちゃのクラスメイトとも仲良く遊び、お世話もしてあげていたようで年少さんたちに人気がありました。
幼稚園の年長の行事でサッカー大会があった時、まちゃは自分の教室から抜け出して娘のいる観覧席まで行ってしまったこともありました。
しかし、娘はまちゃに落ち着いて観覧するように促してまちゃもそれに従い、ホッとしたことがありました。まちゃはお姉ちゃんの言うことをよく聞いていると先生からも伝えられました。
まちゃのお世話で私は幼稚園に行くことが増えましたが、娘はそれがうれしいようでしたし、私も娘の様子を知ることができたのは良かったです。ただ娘は頻繁に「今日もまちゃは先生と園庭で2人きりで遊んでいたよ」と言っていました。教室でずっと過ごせないまちゃが娘の目にどう映っているのか心配でした。
娘の就学先は3案。注目する条件と詳しい方との相談
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わが家がある地域では、住所地の学区の学校(指定校)以外の学校に就学を希望する保護者やお子さんが、入学したい学校を選ぶことができる学校選択制度があります(※就学先の選択などは地域により異なります)。
わが家から歩いて通える距離にA、B、Cと3つの小学校があり、娘がどこに通うのか考える時期が来ました。そのときは、まちゃに知的障害があるのかまだ分かりませんでしたが、娘が入学した2年後にまちゃも同じ小学校に通う可能性が高いので、それぞれの小学校の「特別支援学級」の状況が少し気になっていました。
わが家の学区の小学校はA小学校でしたが、家から1番遠くて娘のお友達もあまり行かないようで、特別支援学級は情緒クラスしかありませんでした。B小学校も特別支援学級は情緒クラスしかありませんでしたが、娘の幼稚園からはたくさんのお友達が通うことになっていました。娘はB小学校に通いたいようでした。C小学校には評判の良い特別支援学級の知的クラスがありました。私は息子のまちゃが小学生になり特別支援学級に通うならここが良いかもしれないと思いました。
まず娘と息子を同じ小学校に通わせたいのかという点で迷いました。そこで私は、幼稚園で副園長と経験豊富な先生に就学について聞いてみました。2人ともあれこれ小学校の評判を話してくれましたが最後には「面倒見のいいお姉ちゃんと集団生活が苦手なまちゃくんを同じ小学校に入れたらお姉ちゃんの負担になってしまうかもしれない」と言われました。
決定してから数年が経ち
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結局娘は幼稚園のお友達がたくさん通うB小学校に入学しました。ここには特別支援学級は情緒クラスしかないので、年中のときに知的障害があると診断されたまちゃは入ることができません。そしてまちゃは、評判の良い特別支援学級の知的クラスのあるC小学校に入学して、私が毎朝つき添いで登校しています。
今、まちゃが入学して1年と少し経ちましたが、娘は弟が別の小学校に通っていることをときどき残念だと感じているようです。娘の小学校の面談の時に「私の担任の先生に、まちゃという弟がいることをちゃんとお話ししてね」と言いますし、たまに「同じ小学校だったら面倒を見たのに」と言います。私が考え過ぎて2人を別々の小学校にしてしまったかなとも思いますが、今まちゃは特別支援学級からたくさん脱走しているので、授業中に校庭を走るまちゃを娘が見たら、もしかしたら恥ずかしくて悲しかったのではないかとも思います。
娘とまちゃは別々の小学校に通っていますが、私の周りできょうだいどちらかに障害のあるお子さんがいるご家族は、きょうだいを同じ小学校に通わせている方ばかりです。
わが家のこの選択が良かったのかはいまだに分かっていません。
でも良く考えて決めたことですし、娘はどんどん自分のことで忙しくなっているので、これで良かったのかなと思うことにしています。
執筆/カタバミ
(監修:鈴木先生より)
適材適所で、その子に合った教育のできる幼稚園や学校に行くことが望ましいと思います。そのためにも、まずきちんと診断を受けることが重要です。
きょうだいが同じ園や小学校に通園通学できることで、良い面もあるでしょう。しかし、幼稚園や保育園のなかには、障がいの理解が少ないにも関わらず受け入れているケースもありますし、逆に園の特色として発達の遅れに理解のある先生の多い園や療育園もあります。
お姉さんが弟のために転園や転校をする必要はありません。きょうだい一人ひとり、それぞれに合った場所で過ごしていくことが大切です。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。
現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。