子育て情報『「兄が死んだ」身元確認のため自閉症小1息子と面会へ。死を理解していないであろう息子の初めての言葉とは』

2023年8月3日 14:15

「兄が死んだ」身元確認のため自閉症小1息子と面会へ。死を理解していないであろう息子の初めての言葉とは

何かしたいことがあると太郎は食事をしようともしない。中学生になった今は私が声かけをすれば直ぐに切り替えることができるようになっているが、この頃は何かに集中すると食事も忘れるほどだった。

とにかく栄養は最低限とってほしいという思いで米、スープ、ポテト、唐揚げを落ち着きがない太郎に声をかけながら食べさせた。太郎はゲームをしたくてうずうずとしていた。

そして食べ終わると念願のゲームを手にした太郎は静かに再開。私は落ち着いて食事をとることができた。この時点で私はどっと疲れていたが、兄のことを思い出してはモヤモヤとしていた。妹とも「本当に死んだのかな」と会話をしていた。


食事のあとは入浴タイム、ここで私は忘れてはいなかった。太郎は水が顔にかかることを酷く恐れ、パニックになる。なので入浴時にはシャンプーハットが欠かせない。私は出掛ける前にそこも忘れず持参していた。こういうとき自分で自分を褒める。さすが、私、と。

就寝時間、太郎は昼寝をしないので絵本を読み聞かせしているとあっという間に寝てしまった。太郎が寝たあと、私と妹も明日の兄との面会に心を詰まらせながらセミダブルのベッドで3人、川の字になって寝た。


おやすみなさい、どうか嘘でありますように。

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Upload By まゆん


太郎が初めて使った言葉

翌朝、私の父と母と合流し警察署へ着いた。太郎はじいじとばぁばに会えてうれしそうにしていた。じいじとばぁばもうれしそうではあったが、兄との面会に緊張した表情が隠せていなかった。私も足が震え心拍数が上がっていた。

身元確認のため私たち家族は狭い小部屋に案内された。検察官の方が兄の遺品を一つずつ私たち家族の前に並べていった。
今まで涙を見せなかった妹が初めに涙を流し出した。それに続いて、母も…。太郎は状況が把握できておらず、ソワソワと動き出した椅子から離れ私の周りをウロウロとし、部屋に響くような声で私に話しかけてきた。「お母さん、おじちゃんはお母さんの友達?」「しー、おじちゃんはお母さんのお兄さん、おじちゃんはじいじとばぁばの大切な子ども」

太郎は私に寄りかかりながら私を見上げて話を聞いていた。「大切…」

きっと家族関係の理解や「大切」の意味も理解はしていないだろう、しかし、いつもと違うみんなの悲しい表情をみて「大切」をなにか感じていたのでは、と思う言葉があった。

「おじちゃん…かわいそう」

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