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夏休み明けは不登校解消のチャンス!?ASD娘に「みんな待ってるよ」と言わないで。困惑の母と娘に助け舟を出したのは…

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睡眠障害はちょっと頑張れば治る?


わが家の娘いっちゃん(ASD・現在16歳)が、いよいよ小学校に行かなくなってきた5年生の頃のエピソードです。

いっちゃんが小学生だった当時は、学校の先生たちも十分に発達障害について理解しているとは言い難く、睡眠の問題もあまり知られていなかったようでした。もちろん「睡眠障害があるんです」という話はしていましたが、「まあ、ちょっと指導すれば治るんじゃないか」って、思われていたのかなという感じでした。

正直、私たち親にも「ほんの少し頑張ればなんとか……」みたいな気持ちはありました。しかし、詳細な睡眠日記をつけ、毎日の多くの時間を過ごすなかで、娘が自分のペースで生活するほうが体調面では明らかに良いと感じていたので、「治そう」という考えには温度差がありました。

いっちゃんの体内時計は25時間

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Upload By 寺島ヒロ

熱心な先生が娘の担任に


担任の先生は大変生活指導に熱心な方で、学校のある日の朝に娘を迎えに行くと電話をくれることもありました。

ですが、そういうとき、私は娘がまだ寝ている場合には即行で断っていました。娘の眠りを確保するため当然のことだと思っていましたが、この態度が次第に担任の先生に不信感を抱かせることになったようです。


夏休みなら学校も楽しい!


夏休みになり、宿題の進みが気になる子どもたちのために小学校で5日間の夏休み講習が開かれることになりました。この時はちょうど昼間起きている睡眠リズムの日であったため、いっちゃんは5日間とも参加できました。

「学校に来ている人も5~6人だから、静かですっごく良い!図書室も誰もいないし、話しかけられるんじゃないかと心配しなくていいからゆっくり本が読める。ずっとこうならいいのに!」
と、いっちゃん。

聴覚に過敏があり、さらにやっていることを中断されることが苦手な娘には、夏休み中のガランとした学校が心地良かったようです。

先生、それはNGワードです……!


夏休み講習を皆勤したことで、先生も「いける!」と思ったのでしょう。「夏休み明けは不登校を解消できるチャンスなんです!」と言い、再登校のハードルを下げるため一緒に登校しようと家に迎えに来てくれました。

しかし、新学期には睡眠リズムが昼にずれ込んでしまっていたいっちゃん。
一旦は起きて準備したものの、出かける頃には不機嫌になってしまいました。
玄関から出ようとしないいっちゃんに、先生は「みんな待ってるよ!」と声をかけます。

しかしそれはNGワードだったんです……!!
学校にたくさん子どもがいるということを思い出してしまったいっちゃん、「学校には行かないです!」と、先生を追い返してしまいました……。

学校で面談をすることに……


その後、いっちゃんと私と担任の先生との面談が行われました。担任の先生は「夏休みの間は通えたじゃないですか、何があったんですか!?」「どうして生活リズムを直そうとしないんですか!」と何度も言われましたが、いっちゃんはどうしても無理としか言いようがありませんでした。

結局、私も娘も先生も困ったまま、その場は時間切れとなり……。

1週間後、改めて担任の先生から電話があり、今後の対応を話し合うことになりました。担任の先生は「スクールカウンセラーの先生を呼びますよ?良いですね!?」と、かなり高圧的な感じでした。
それで、「娘は寝ている時間だから」と、私1人で話し合いに行くことにしました。

スクールカウンセラーさん登場!

夏休み明けは不登校解消のチャンス!?ASD娘に「みんな待ってるよ」と言わないで。困惑の母と娘に助け舟を出したのは…

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胃が痛くなりながら参加した話し合いでしたが、スクールカウンセラーの先生は、完全に娘の言い分を理解してくれました。

「発達障害のお子さんの場合、睡眠に問題があるというケースは珍しくありません。特に概日リズム睡眠障害は原因もはっきりしないし、生活習慣や育て方のせいとも言えません。育ち盛りですし、たっぷり睡眠をとるほうを優先しても良いのでは?」「聴覚過敏があるお子さんの場合、夏休み中と新学期の今では同じ学校と思えないぐらいうるさいと感じるのは当然かも」との、スクールカウンセラーさんの言葉で、担任の先生も考えを変えてくれました。

担任「発達障害の子にそんな問題があるなんて...」


担任の先生は「睡眠障害や聴覚障害なんて私が読んだ本には載ってなかった……」と、ショックを受けた様子でしたが、いっちゃんについては「今後は登校できるときだけ通う、昼からでもOK。変則的な時間に登校すると道中が心配なので親がつき添って登校させる」ことで、最後は和やかに合意が形成されました。

良かった……正直、本当に助かりました……!

「発達障害の特徴」と本に書かれていなくても


発達障害と睡眠障害の関連については、まだ医学的にははっきりとした相関関係は分かってないようです。
しかし、それは「関係ない」ってことではないですし、「朝起きられない」という悩みが嘘ということでもありません。

障害なのか、躾が悪いのか、そんな二者択一ではないということを、スクールカウンセラーさんの態度から学びました。そして、一人ひとりの子どもの個性に寄り添って、そのときどきの状況に合わせてサポートしていくことが大切なんだなと、改めて思ったのでした。

執筆/寺島ヒロ

(監修:新美先生より)
発達障害のある方に、睡眠の問題を合併することは非常に多いことが知られています。寺島さんのお子さんのように、体内時計のリズムを、地球の自転周期の24時間に同期させることが難しく、入眠時刻が遅くなっていくのは、「概日リズム睡眠障害」と呼ばれるものの一つのタイプで、自閉スペクトラム症のお子さんにも起きることがあります。

この場合は、本人や周囲の努力で、寝ようと思ってもどうしても眠れなくて苦労しており、今回聞かせていただいたエピソードの先生のように「規則正しい生活リズムで治す」といった程度で改善されるような簡単なものではありません。

発達障害に関するさまざまな生理的な困りごとは、人によってまちまちなので、先生方の経験や知識にたまたまなかったからといって理解してもらえないととても悲しいですね。親から話して分かってもらえないとき、寺島さんのエピソードにあるように、スクールカウンセラーや、担当医など、別の専門家から直接説明してもらうのも一つのやり方ですね。


(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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