自閉症娘、外出好きなのに「苦手なもの」に遭遇するとパニックで強制帰宅!?これらを克服できた方法とは?/読者体験談
娘の外出を阻むものは二つ。一つ目は「男性」。父親でもおかまいなし!
6歳の時に自閉スペクトラム症、軽度知的障害の診断を受けた娘がいます。幼少期の外出では本当に苦労しました。
娘には苦手なものが二つありました。
「男性」と「ハンドドライヤー」です。
0歳の時からでしょうか、娘は男性が苦手でした。それが自分の父親であってもです。
きっかけはいまだ分かりませんが、「夫の抱っこで泣かない」場面を見たことがないくらいでした。ですので、夫が居ても私はほぼワンオペ育児、短時間であっても一人で外出はできない……これもつらいところでした。
1歳になると、向こうから知らないおじさんが歩いてくるだけで騒ぎ出します。
外に出て男性がいない……なんて場面、なかなかないですよね?それでも、娘を夫に預けて買い物に行くことができないため、トラブル前提で娘を連れて買い物へ行っていました。
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買物中に前方から男性が歩いてくるだけでも泣きそうになる娘。そんな娘を抱っこすると両手がふさがってレジでお金が払えず……。いま思うと本当に大変だったなと思います。
ただ、娘は「外が好き」という面があったので、お出かけは移動のとき人に会う機会を減らせる、車を使うようになりました。
二つ目は「ハンドドライヤー」。このせいで外のトイレが使えない……!
乳幼児期から外でトイレに行くと泣く娘。ずっと原因が分からないままでしたが、3歳になってやっとわかりました。
ハンドドライヤーでした。
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娘は3歳から保育園に入園したのですが、そこで掃除機が苦手なことが発覚しました。なんでだろう?と思っていたのですが、どうやら音が怖かった模様。そこで「トイレが苦手なのはハンドドライヤーの音のせいなんだ!」と気づきました。
そんな娘を連れての買い物は大変です。娘がトイレに行きたいとなると、一度自宅に戻り、再び買い物へ行かなくてはなりません。スーパーへは車で片道15分から20分位、この往復の手間と、一度商品をカゴから出して戻し、再びカゴに入れる作業……。もう、面倒でイライラしてしまいます。
ただ、どうしようもないので諦めて淡々と行うだけでした。
低学年頃になると、もう間に合わない!というときは外でのトイレも決行しましたが、自分がハンドドライヤーを使わなくてもほかの人が使う音もダメなので、逃げるようにトイレから出てきていました。
これらの苦手は療育で乗り越えられました!
「男性」「ハンドドライヤー」、実は現在はほぼ克服できています。
ハンドドライヤーについては、就学後通いだした療育で相談したところ掃除機の音で慣れていこうということになりました。娘の近くで掃除機をかけてもらうと最初はさすがに気にしていましたが、徐々に慣れていってくれました。また嫌な音があるときは自分から離れることも覚えてくれました。
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その後、遠出をした高速道路のサービスエリアで、ちょっと強めに誘ってトイレに座らせてみたところ、無事トイレをすることができたので、とても褒めました。そうすると、ホテルのトイレも大丈夫になり、次の日の観光地の農場でも成功。
これをきっかけに、ついに外のトイレに問題なく行けるようになりました。ただ、ハンドドライヤーを使うことはないので、ハンカチは忘れないようにしています。
また、男性についても療育の実習のお兄さんと手をつないだり、触れ合う機会をつくることで、2年生頃にようやく大丈夫になりました。いまでも、大きな声を出したり怒鳴るような人は苦手ですが、そういう人がいたらその場から立ち去るようにしているようです。
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いまは公共交通機関を使い自力で登校しています
現在、高等特別支援学校1年生の娘は自力でバスと電車を使い通学しています。幼少期のような外出トラブルはもうありません。
ここまでできるようになるか正直不安でしたが、予想を超えてくれました。ここまで自立できホッとしています。
娘は明るい性格で、ダンスや歌が大好きです。やりたいことを精一杯やりつつ、人生を謳歌して欲しいです。
私は、時間がある限り、後ろから見守っていきたいです。イラスト/taeko
エピソード提供/にじいろ
(監修:藤井先生より)
特定の物が苦手というのは自閉スペクトラム症のお子さんに認められることがあります。小学校に入る前は手立てがないような感じがして大変だったかと思いますが、小学校低学年の頃には療育施設などに相談して少しずつ症状が和らいでいったのですね。聴覚過敏などがあっても、安心・安全な状況を確保しつつ、音に慣らしていくことで克服できることがあります。ご家庭だけで工夫しようとしても限りがあることもあり、療育施設や支援の先生などに相談して、一緒に取り組んでいくと良いと思います。読者の方の励みになる体験の共有をしていただき、ありがとうございます。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。