熱せん妄を起こしたら?脳症との違い、処方薬カロナールについて/小児科医監修
熱せん妄とは?原因や症状など
子どもが高熱を出したときに、突然うわごとを言ったり、歌を歌い出す、笑いだす、泣き出す、部屋の中を歩き回るなどの行動を起こす「熱せん妄」。その原因や症状、子どもが熱せん妄を起こしたときに心配になる後遺症についても解説します。
熱せん妄は、高熱が出ることにより、脳内のホルモンバランスが崩れることが原因だとされています。
脳は睡眠中に夢を見ているような状態なのにも関わらず、筋肉の力は抜けずに身体は目覚めているような状態になり、そのため夢を見ていることを現実と勘違いしたり、またそれに伴い身体が動いてしまったりするのです。また、高熱により、もうろうとしているため夢と現実の区別がつかなくなり、パニック状態につながることもあると言われています。
熱せん妄の代表的な症状は以下の通りです。
・事故や他害に繋がる異常な行動
・幻聴、幻視などが起き、感覚が混乱する
・うわごとを言ったり、突然歌を歌い出したりする
・支離滅裂な行動や無意味な動きをする
・怯えたり、恐怖を感じている様子を見せたり、突然泣き出したりする
・なんのきっかけもないのに突然笑い出す
・呼びかけに対して無反応、無表情
・部屋のなかを歩き回ったり、外を徘徊したりする
・食べ物ではないものを含め、なんでも口に入れようとする
子どもの熱せん妄のほとんどが一過性のもので、決して珍しい症状ではありません。その大半が良性の病態で、熱せん妄による後遺症や命の危険はほとんどないと言われています。
ただし、ごく稀に脳症などの重症疾患の初期症状として、熱せん妄に似た状態になることがあるので、一定の注意は必要になります。
もしかして熱せん妄?病院受診の目安、対応方法など
一般的に熱せん妄は10分から15分という比較的短時間で改善することがほとんどです。長くても数時間で、後遺症が残ることはほとんどないと考えられています。もしも、数時間経っても意識障害や異常行動が治らない場合や、痙攣などを起こした場合にはかかりつけ医に相談しましょう。
夜間に初めて熱せん妄が起きた場合、朝まで待つべきなのか迷うこともあるかもしれません。心配なときは、まずは救急外来に相談し、指示に従ってください。
また、症状が治った場合でも、本当に熱せん妄だったのか心配な場合、また同じ症状を起こすのではないかと気になる場合はかかりつけ医に相談できれば安心です。熱せん妄による異常行動で転落などがあり外傷を負った場合には、早めに受診した方が良いでしょう。
熱せん妄と混同されがちなものに脳症があります。脳症の中でも代表的なものは、インフルエンザ脳症でしょう。インフルエンザ脳症とは、1歳から5歳くらいまでのインフルエンザに罹患した幼児に、脳全体が腫れる「脳浮腫」、脳内の圧が上昇する「脳圧亢進」などが生じます。痙攣や意識障害、異常行動などの神経症状が見られ、血管が詰まったり、臓器が動かなくなったりすることもある命に関わる疾患です。
この脳症の初期症状と熱せん妄の症状はとてもよく似ていて、専門家であっても見分けるのは難しいと言われています。そのなかでも、以下3点のどれか、あるいは複数が見られる場合は、脳症の初期症状の可能性が高くなります。
・連続、または断続的に1時間以上症状が続く
・声かけに反応が乏しいなど意識状態が明らかに悪い、または悪化していく
・異常行動と痙攣が合併している
上記の症状がある場合はただちに病院を受診しましょう。
子どもが高熱を出し、さらに異常行動などがあれば看病している保護者側も慌ててしまうことがあるかもしれません。
前章でお伝えした通り、熱せん妄と脳症の初期症状が似ているということもあるので、慎重に経過を見守ることが大切です。子どもに熱せん妄の症状が出たときに、どんな対応をすれば良いかをお伝えします。
・高熱の子どもから目を離さない
・飛び降りや徘徊を防止するため、ドアや窓の施錠はしっかりする
・処方薬はちゃんと飲ませる
・体を冷やす
・手を握る、体をさするなど子どもを安心させる
熱せん妄の場合は、ほとんどが短時間で快方に向かいます。それを念頭に置いて、看病する保護者がパニックにならないように注意しましょう。
熱せん妄になりやすい子どものタイプや起こりやすいシーンなど
事前に熱せん妄になりやすい年齢や体質を知っておけば心構えができる……と考える方もいるかもしれません。熱せん妄は、1歳から10歳くらいまでの年齢の子どもで幅広く見られる症状です。
しかし、起きやすい体質などは現代の医学では解明されていません。1歳から10歳前後の子どもがいる保護者は、どんな子どもでも熱せん妄を起こす可能性があると考えておきましょう。
一般的にコロナやインフルエンザに罹患した際、高熱が出るケースが多いので、それに伴って熱せん妄を起こしやすくなります。特にインフルエンザの場合は脳症を起こす可能性もあるので注意が必要です。
子どもが発熱したときには、アセトアミノフェン系の解熱剤(カロナール)が処方されます。作用のおだやかな解熱鎮痛剤で、皮膚の血管を広げて熱を放散させたり、脳の痛みの感受性を低下させたりする効果があります。ただし、発熱の原因そのものを治すことはできません。
アセトアミノフェン系以外の解熱剤は15歳以下の子どもには使用不可となっています。アセトアミノフェン系以外の解熱剤をインフルエンザの子どもに使用した場合、脳症を引き起こすリスクが指摘されているためです。アセトアミノフェン系の解熱剤には、こうしたリスクが低いとされており、子どもの発熱時において、最初に投与すべき「第一選択薬」となっているのです。
まとめ
今回は「熱せん妄」の原因や症状、対処法などをご紹介しました。いざというときに、こういった知識が役立つのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、インフルエンザ脳症の初期症状に似ているという注意点はありますが、熱せん妄で後遺症が残ることはほとんどありません。発熱後の子どもに朦朧とする様子や異常行動などが見られても落ち着いて対処することが大切です。
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