自閉症息子、園行事でパニック、号泣!周りの子がうらやましい…「もう参加したくない」と思ったけれど【読者体験談】
初めての場所や同じ場所に留まることが苦手な息子にとって、行事は鬼門
現在7歳の息子は、4歳で自閉スペクトラム症、軽度知的障害と診断を受けています。見通し不安があり、初めての場所や同じ場所に長い時間留まることが苦手です。入園時まだ発語がなく、特性が今よりも強く出ていた息子は、園からも配慮が必要と判断されたため、まずは週3回、午前中のみ登園するスタイルで幼稚園に慣れることを最優先していました。
そんな状態でしたので、行事の時は私が息子の近くにつきそった形で参加するようにしていたのですが、夏祭りでは大パニックになってしまいました。
息子の笑顔が1秒もない夏祭り。母が抱っこして盆踊りの輪に入ったら……
夏祭りは夕方から行われる行事です。園庭の真ん中にやぐらを組み、周りに先生たちや保護者が運営する屋台があるという形式でした。盆踊りを園児全員で踊ったり、年長さんの出し物の時間もありました。
先生たちからは「できる範囲で参加しましょう」と最初から提案されていたので、息子は私に抱っこされた状態でお祭りに参加することになりました。
それでも、いつもの幼稚園と違う様子、次に何が起きるのか分らない状況は、息子にとってはストレスでしかなかったのだと思います。息子が笑顔になることは1秒もなく、常に帰りたそうな表情です。
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そして、ついに息子が参加する盆踊りの時間がやってきました。本来は子どもだけで踊るのですが、息子は私に抱っこされた状態で盆踊りの輪に入りました。
ですが、息子は輪に入るや否や、大泣き!私の腕の中でえびぞり状態で暴れて大号泣するのです。その大音量に周りの目が気になりながらも、全身で参加を拒否する息子を何とかなだめなければと私は大焦りでした。
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集合写真にはえびぞりで大号泣の息子。「もう夏祭りなんてやりたくない!」
えびぞり状態の息子を抱えながら、私は「やっぱりだめだったか……」と思っていました。ある程度予想はしてはいました。
すぐ横にいてくれた補助の先生が抱っこを代わってくれたりしたのですが、それでも泣き止みません。おそらく、夏祭りが何なのか分かっていなかったこと、暑さと大きな音、そしてコロナ禍前だったので園庭に全園児と全保護者で人がいっぱいだったこと……、自分の知っている幼稚園の風景ではなくて、パニックになったんだと思います。
クラスの集合写真では、補助の先生に抱っこされ、えびぞりで大号泣の姿で写っています。
大号泣している子どもは息子だけだったので、なんだか申し訳ない気持ちと、周りは何の問題もなさそうで羨ましいと思ってしまいました。これで物凄く疲弊した私は、(もう夏祭りなんてやりたくない!)とうしろ向きな気持ちで帰宅したのをよく覚えています。
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コロナ禍で減った行事は息子にとってプラスに!少しずつ幼稚園に慣らしていった結果、卒園式では?
その後、半年も経たないうちにコロナ禍に入ったため、行事全てが大幅に縮小したり中止になりました。しかしそれは息子にとっては好都合でした。まず、行事そのものがなくなった期間があったので、普段の園生活を慣らすことに集中することができました。
年中の一学期からは午前中まで、二学期からは給食まで、三学期はみんなと同じ降園時間で帰れるようになりました。すごい成長です。
年中の二学期半ばくらいからは、縮小形式で行事は復活していきましたが、しばらくは密を避けるために、保護者の観覧なしでの開催でした。園児だけで行われた行事は、いつもの園の雰囲気に近いため、だんだんと息子も参加することができるようになりました。
年長の運動会あたりから、人数制限ありで保護者観覧もOKになりましたが、私のつき添いなしで、お遊戯もかけっこも元気いっぱいこなすことができていました。
そして、卒園式では一人で立派に卒園証書をうけとり、一度も泣かずに参加できたのです。その成長に、私は先生と一緒にたくさん泣きました。
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小学生になった今は「行事に参加しなくても良い」を前提に考えています!
小学生になってからも、補助の先生のつき添いをつけていただいたり、先の見通しをつけるため、一日のスケジュール表をつくって事前確認したりと学校で配慮していただいて行事に参加できています。
でも今の私は、行事に関して「参加しなくても良い」を前提として考えるようになりました。息子も成長し、行事に参加することができるようになりました。ですが、年齢と共に精神的に成長し、以前より頑張れるようになっただけに過ぎず、息子に大きなストレスがかかっていることに変わりはありません。
頑張り過ぎて疲弊してしまうのか、行事の翌日は行き渋りが出ることがあるため、今でも行事参加は慎重になっています。
昔は「行事には参加したほうがいいのでは……」と悩んだ時期もありましたが、今は参加するしないについて深く考え過ぎないようにしています。行事に参加できなくても学校生活に支障はないと今までの経験で分かったからです。
今後、息子には行事よりも普段の学校生活の中での楽しみをたくさん発見していってもらいたいです。ゆっくりとマイペースで成長していければいいなと思います。
イラスト/SAKURA
エピソード参考/ヒラリ
(監修:鈴木先生)
ASDのお子さんに限らず、初めての行事は誰でも不安がつきまといます。私は、それを打開する一つの方法として、事前にどんなことをするのか昨年のVTRがあれば見せてあげることをお勧めしています。入学式・発表会・運動会・授業参観等々に対してです。できれば少人数から始めて徐々に親離れしていく方法が理想ですが、なかなかそうはいきません。スモールステップで少しずつできたら褒めてあげましょう。
先の見通しができない場合は写真や絵で経過を示すことも重要です。一つひとつ終わったらその写真や絵をはがしていくのです。学校の時間割でも同様に、机の上に1時間目〇〇、2時間目□□、と書いてあるのを貼って、授業が終わったらはがしていけばいいのです。
無理やり参加させるのではなく本人がやりたくなったら徐々に参加させてあげればいいのです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。
程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。