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発達障害息子、運転免許取得は可能?教習所の申込みで予想外の困難が…!

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田舎では車は生活に必要!研究のためにも免許は取りたい...!


わが家の凸凹きょうだいは、音やにおいに敏感で、人が多い場所で大きなストレスを感じてしまいます。そのためわが家では、もともと車がないとどこにも行けないような地域で暮らしていたこともあり、子どもたちが幼かった頃から移動には自動車を使うことが多かったです。

そのせいか、息子のタケル(自閉スペクトラム症・現在22歳)も、大学生になったら普通自動車運転免許(いわゆる自動車免許)を取得したいと言っていました。将来は自然の中でのフィールドワークに出たいという希望もあり、取っておいたほうがいいだろうと考えたようです。

発達障害息子、運転免許取得は可能?教習所の申込みで予想外の困難が…!

Upload By 寺島ヒロ

運転免許取得に向けて自動車教習所へ!


息子が運転免許を取るとなった時、やはりプロに指導してもらったほうがいいだろうということで、自動車教習所に通うことにしました。

インターネットで検索して近くの自動車教習所を見つけ、必要な書類を揃えます。申し込みは実際に教習所に行かなければいけないようです。送迎してくれるスクールバスもありますが、初日はまだ教習生ではないので、私の運転で自動車教習所に連れて行きました。


実際に行ってみると、自動車で行っても自宅から15分ぐらいと、いざとなれば駆けつけられる近さ。建物も広く、スタッフさんの雰囲気も良い教習所でした。

教習所で申し込み、その時に見慣れない文字が……


受付を済ませると、申し込み用紙を渡されたその場で書くように言われました。見ると受け取ったプリントの中に見慣れない一文がありました。
『一定の症状を呈する病気などのある方はチェックしてください』

一定の症状? って、何だろう?
もしかしたら発達障害に関係する症状に該当する部分があるかも……!?

「運転免許を拒否、又は保留される場合」とは?


息子が受付で聞いてみたところ、「一定の症状を呈する病気など」があると免許の交付を受けられない場合があるとのこと。そして、この「一定の症状を呈する病気など」の内容は警察庁のサイトに載っているとのことでした。

https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/list2.html
運転免許を拒否又は保留される場合(警視庁のサイトより)

発達障害があるないに関わらず、ここに掲載された症状のある人には交付を見合わせることがあるということらしいです。一見したところ、息子に当てはまるところはないようですが……。


「もし自動車教習所を卒業した後で、免許が交付されないようなことがあってはご本人が困りますから、『安全運転相談』に行ってください。相談の結果、運転できるとなりましたら入学受付を進めます」と、受付の方に言われ『安全運転相談』を受けることになりました。

お使いクエスト発生!


『安全運転相談』は自動車教習所ではなく、自動車運転免許試験場で行われます。予約は電話でできるのですが、相談受付時間が限られていて、私たちとの予定がなかなか合わず、実際に受けられたのは3週間後でした。
ちなみにこの『安全運転相談』以前は『運転適性相談』と呼ばれていました。高齢者が免許返納を相談する窓口として話題になったこともありましたね。

実際の内容は、(あくまで息子の場合ですが)シミュレーターを使っての乗り降り、ペダルの踏み間違いが高頻度で起こらないかなどのチェック、後はどのような病状や不安があるのかをお伝えするというもの。

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話始めてほんの10分ほどで、面接官の方には「問題ないですよ。
かかりつけ医に『運転できます』って書いてもらってきてください」と、言ってもらえました。

安心しましたが、『安全運転相談』で問題ないと言われたら終わりというわけではなかったのですね。病院に行く必要もあるそうです。タケルの主治医の予約が取りにくいということもあり、私は少々疲れてきてしまいました……。

ASD息子の正直すぎる対応


その翌週、ありがたいことに「書類用の面談だけなら」と主治医の先生に予約を受けてもらうことができました。しかし、思ったより日にちが近かったので私の予定繰りができません。そこで「いつもの先生だし」と、息子が一人で病院に行くことになりました。

これが大失策!
主治医に「運転できる自信はありますか?訓練頑張れますか?」って聞かれたタケル、「運転したことないんで分からないです」とバカ正直に言ってしまいました。
しかも「それでは運転できると書けません」と言われて、「そうですか」と帰って来てしまったのです。クエスト失敗です。

再び、私がつき添って病院へ


そのさらに翌週、もう一度主治医に予約を取り、今度は私もつき添って行きました。
「能力的には十分いけると思う」「本人に取得の固い意志がある」と証言し、医師にも「いや僕も大丈夫と思うけどね(笑)」とか言われつつ、励まして、タケル本人からなんとか「運転できると思いますガンバリマス」の言葉を引き出す儀式をしました。

入校テストを受けてみたら……


書いていただけることにはなったのですが、実際の書類『医師の一筆』がもらえたのはそれから2ヶ月後です。もう夏も終わろうとする頃、再び自動車教習所に行きました。

すると、
受付「これ、運転免許試験場に一旦持って行って確認してもらわないといけないんですよ」
私「ええー?そんなこと言ってたかな?」と(心のなかで嘆く)。
受付「でももう大丈夫そうですから、入校テストの手続きしちゃいましょうね」

ありがたいことに、先んじて入校テストを受けさせてもらうことになりました。

再び運転免許試験場に行かなきゃいけないけど、とりあえず入校させてもらえれば勉強始められるし、これで一安心……かと思いきや……!
視力が足りなくて入校テストに落ちました……。

終わらないお使いクエスト


後日、運転免許試験場の『安全運転相談』で医師の一筆を確認してもらって、「運転可」の書類をつくってもらって、新しくつくった眼鏡も持って自動車教習所に行きました。
自動車教習所の受付で書類をチェックしてもらい、入校テストも「眼鏡等あり」でパスしました。後はお会計をすれば晴れて自動車教習所入学です。

長かった……と、感慨に浸る私……。
ところが、やってきた会計係のスタッフさん、書類をチラと見るなり、こう言いました。
「あら?○○大学の学生さん?学校生協でお申込みいただくと割引になりますよ」
なんと!?割引を受けようとすると学校生協に行って申し込まねばならないとのこと!

つまり最初からやり直し……!?

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しかもあっちこっち行ってるうちに3ヶ月が経過してしまって、最初のほうに取った住民票が無効になり取り直す羽目になりました!タダじゃないのに!!

学校生協から2度目の入学手続き


そのまた次の週に、私も一緒に大学の学生生協に赴き、再び入学手続きをすることにしました。2度目だったので少しは楽でしたが、やはり書類の取り直しなどに時間がかかり、6月に始めたはずなのに自動車教習所に入校したのは10月になってからでした。


今回長々と書いてしまいました。すみません。
でも、ほんとうに、ほんとうに! 入校するまでが長かったんです……!

障害がある人の支援はいろいろと用意されているとはいえ、申請が大変だったり、いざ使おうとすると障害者側の負担が小さくなかったりと、使いにくいものもあると言われています。
自動車運転免許の取得に際しても、アクセスしやすいところにワンストップ窓口があって、コーディネーターみたいな人がいてくれるといいのになと思うのでした。

執筆/寺島ヒロ

(監修:森先生より)
「一定の症状を呈する病気など」とはあまりにも曖昧ですね……。はっきりと当てはまるところがないのであれば必ずしも申請が必要なものではないかもしれません。
ただし、ご本人として少しでも心配なこと、気になることがあれば、相談しながら進めていくと安心・自信につながりますよね。

タケル君の場合は、『安全運転相談』に相談してシミュレーターを使えたこと、主治医の先生にも相談できたことで、時間はかかってしまいましたが、運転を学ぶ心の準備もすることができたはず。

ASD傾向のある方は特に、新しいことを始めるときに手順の確認や懸念点を解消することが大切です。これから運転を楽しむためには、意味のある期間だったのではないでしょうか。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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