自閉症長男の幼少期、多すぎるマイルールに疲弊…12歳になった今、こだわりはどうなった?
こだわりその1。必ず「へーそうなんだ」と返さなければならない!
ASD(自閉スペクトラム症)のあるわが家の長男あーは、アニメのキャラクターの図鑑が大好き(今でも)なんですが、文字が読めるようになった一時期、図鑑に載っているキャラクターの名前をあーが言うたびに、私が「へーそうなんだ」と返さなければならない遊びがブームでした。
コミュニケーションが一方的だったあーが話しかけてくれた!とうれしくて、あーがキャラクターの名前を言った後に、うっかり「え、そのキャラのことあーくん好きなの?ママも好き!」などとほかの返しをしたらアウト。「なんでへーそうなんだって言ってくれないんだよ!」と怒り狂います……。
そう、コミュニケーションが取れるのかも!はぬか喜びで、実際は他人を巻き込んだ壮大な1人遊びだったんですね……とほほ。
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こだわりその2。車に乗る時の儀式が多すぎる!
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幼稚園の頃は車に乗るのも大変でした。「車に乗るため」にこなさなければならない儀式が多いのです。……意味が分からないですよね、ご説明します。
まず、シートベルトは絶対に自分でしなければならない。
それまでエンジンはかけてはいけないので(かけたら怒られます)、特に夏の場合は、手間取っていると車内の温度がめっちゃ高くなり暑い。つらい。そのあとDVDをつけるのですが、日本のアニメでも字幕を出さなければいけない。音声は日本語に設定しなければいけない。その設定を終えるまでは出発してはいけない……!(ああ、自分で書き連ねていてめまいがしてきた……!)
こだわりその3。幼稚園ではいつも「決まった友達」と帰る!
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もちろん、幼稚園でのこだわりもあります。あーは、毎日一緒に帰るお友達が決まっていて、絶対その子と帰ると決めていました。でも、その子と仲がいいわけでも、遊ぶわけでもないんです。ただ一緒に帰る、そう決めていただけなんです。
あーが勝手に。だからその子もあーも黙って歩く……。 いつもその子にもお母さんにも申し訳ない気持ちでした。そして、その子が事情があって先に帰るとか、幼稚園をお休みした場合は大パニックです。先に帰ったその子を追いかけて路上に飛び出したこともあったし、その子が休みの日は雨の中路上で大泣きされて、道端で15分とかたたずんだこともありましたね……(遠い目)。
「こだわり」はASDの特性と分かってはいるけれど……
ASDのある子どもを育てていると、「他人と自分を傷つけなければオッケー、できないことは大目に見よう、できることに注目しよう!」なんてことをよく聞きます。でもね、毎回毎回そうも言ってられないというか……。たとえ他人を傷つけなくても、迷惑をかけてしまうことはあるし、母親も人間なので、「悪気はない、これがこの子の特性なんだ」と分かっていても、我慢の限界っていうものは当然あるわけで……。
そこをやすやすと超えてくる場合どうしたらいいんでしょうかね!?(地団駄)
12歳の今も、「こだわり」は形を変えながら継続中
今回は幼稚園の頃のあーのこだわりエピソードを紹介しましたが、12歳の今もこだわりは強いです。ただし、こだわりは移り変わります。
今のこだわりは、自分の好きなキャラクターの名前やアニメのタイトルをぎっしり書き連ねた自由帳をどこにでも持って行く、アニメのDVDが大好きで、何かに急かされるかのように毎週DVDレンタルショップに足を運ばなければならない(レンタルショップが少しずつ減っている昨今、近所のお店が閉店してしまったらどうしようと心配している母です)、登校時絶対に弟より先に靴を履く、など……。書いているだけで疲れます……。
今回コラムを執筆するにあたり、思い返す作業をしていたのですが、あの頃はあんなに大変だったのに今となってはちょっと懐かしい気持ちすらある。12歳の今のこだわりに相も変わらず頭を悩ませている母ですが、いつかは懐かしめる未来が来るんですかね……(涙)。
執筆/よいこ
(監修:初川先生より)
あーくん幼稚園時代のこだわりの歴史のシェアをありがとうございます。こだわりは特性によるもの、悪気はないと理解していても、なかなかこだわりを守れない状況(お友達がお休みなどはそういう状況ですね)も時にはあるわけで、もう少し何とかならないのかとじれったく思われるのも自然なことと感じます。
最初の、「へーそうなんだ」で返さなければならないこだわり、とても興味深く感じました。相手を巻き込んでいるといえばそうではありますが、ただ、自分が話して相手の反応を得て安心したいということ自体は、コミュニケーションの土台の一段階ではあるのだろうなと感じました。最後に書かれていた、今は過去のこだわりをちょっと懐かしく感じる、こだわりは移り変わること。今という時の行き詰まり感、ずっとこのままなのではと不安になっている方にとっては淡く明るい兆しではありますね(とはいえ、今には今の悩ましさもあるということで、一筋縄ではいかないのだなという気配もそれはそれで大事な先達の声だと感じます)。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。