全日制高校の体験入学でいじめっ子と遭遇…。志望校は変えるべき?不登校だった発達障害息子の進路の悩み【読者体験談】
中学入学前に支援会議を行った自閉スペクトラム症(ASD)の息子
現在高校生の息子(15歳)は、小学1年の時に自閉スペクトラム症(ASD)、中学1年の途中でLD・SLD(限局性学習症)と診断を受けました。
小学校入学の頃からこだわりが強く、聴覚過敏があるため、授業中「はい!」と挙手する音に耐えられずパニックを起こした息子は、1年生の2学期から国語と算数のみ特別支援学級で受けるようになりました。静かな環境が息子には合っており少し落ち着くも、トラブルは常につきまとっていました。
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※通常学級在籍の場合、個別の支援は「特別支援教室」もしくは「通級指導教室」で行われます。もしくは特別支援学級に在籍し、特定の科目を交流級にて受ける形をとります。この体験談のお子さまについては、学校の判断により、通常学級に在籍しながら一部の科目について特別支援学級で受けています。
中学生になる前には支援会議を行いました。
・特別支援学級、通級指導教室どちらにするのか。
・通級指導教室ならば、どの教科を通常学級で受けるのか。
・仲の良い子と同じクラスにするのが良いのか、逆に仲の悪い子は誰なのか、クラスを離したほうが良いのか。
息子が安心して生活できるように、このようなことを事細かく配慮していただきとてもありがたかったです。中学生も小学生の時と同じように、国語、数学、そして英語の授業を特別支援学級で、それ以外は通常学級で受けることになりました。
先生の言葉がきっかけでクラスメイトからかわれ、本格的にいじめられるように……
無事中学生になるも、1年生の時にある教科担任から「板書ができないのはサボっているからだ!」と怒られた息子。そしてこの言葉をきっかけに、クラスメイトからからかわれ、クラスで浮いた存在になってしまいました。
息子は「お一人様」が好きなので最初は気にしなかったそうなのですが、からかいはだんだんとエスカレートし、ジャージが摩擦で破れる程引きずり回されるというひどいものに発展。いじめている子どもが在籍する部活の先輩も加わって、廊下を歩いているだけで転ばされたり、階段で足をかけられ転落したり……。
そして、良くないことに息子もやられっぱなしではと抵抗して相手にパンチをしてしまったのです。そこをたまたま通りがかった学年主任の先生が見たそうで、息子は事情を話すも、相手の子どもたちからは「息子が悪い」と言われ、実際に殴ってしまった息子は何も言えなくなってしまい……。
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私はこの時点で学校側から連絡がきて、状況を知りました。ジャージが摩擦で破けていることは知っていましたが、息子は床で滑ったと言っていたので信じていました。先生の言葉がきっかけでいじめが始まってしまったこと、どんどんエスカレートしていったこと、そしてそれを息子が隠して堪えていたこと、それを息子が隠して堪えていたこと、そして反撃をしたことで加害者となってしまったこと……ショックでした。その間息子がどんな思いで学校へ行っていたかと思うと……どうすればいいのか悩みました。
不登校になり毎日「僕なんていなくなったほうがいいんだ」という息子。そんな息子が前を向いたきっかけは?
これがきっかけで、息子は学校に行きたくないと言い出し、夏休みをはさんで計2ヶ月、ほとんど不登校状態になってしまいました。
毎日「僕なんていなくなったほうがいいんだ」と言うようになった息子。
これではいけないと、私はいろいろな情報を集め、近場に発達障害の子ども向けの寺子屋的な教室があるのを知りました。そして息子にも話したところ、息子はそちらに通い始めました。
学校以外の場所を知った息子は視野が拡がったようでした。息子より年下の子が慕ってくれたこともうれしかったのだと思います。そして少しずつ元気を取り戻していった息子は、だんだんと学校へも行けるようになりました。
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その後LDが分かったこともあり、中学2年生から特別支援学級へ完全に移りました。いじめっ子とも離れることができたので、学校へは問題なく通えるようになりました。
どの高校を選ぶ?また不登校になったらと心配する母と息子の志望校は違うところで
そして中学校生活も後半になる頃、高校進学について悩むようになりました。
高校は義務教育ではありません。以前のように不登校になってしまったら、退学することになってしまいます。ですので、まず私が心配だったのは、全日制にきちんと3年間通うことができるのか?ということでした。できれば出席日数が関係ない通信制の高校、ただしずっと家にいると外に出たがらなくなってしまいそうだったので、週3日通い、レポート提出することで成績がつく高校が息子にはいいのではないかと思いました。
ですが息子は、自宅近くの全日制の高校を希望しました。わが家は夫が早くに亡くなっているので、経済面で家に負担をかけたくないと思ったのかもしれません。また、息子はルーティンが好きなので、学校へは週5日通うのが当たり前と思っていた……という節もあります。
私はあえて通信制の高校のことは話さず、息子には「目指している高校へ行けるといいね」と応援していました。
息子の志望校の体験入学で不登校の原因となったいじめっ子と遭遇。フラッシュバックが!
そして中学3年生になって、高校の体験入学に参加した息子。ですが帰りの車の中で、「楽しかったけど、あの子(いじめた子)もいたんだよ……」と真っ青になって語り始めました。そして「きっと学力が同じくらいなんだな……。高校でいじめなんて嫌。知らない子もいじめに加わったりされたら……。せっかく死にたい気持ちがなくなって楽しく過ごせるようになったのに……!」とフラッシュバックを起こしてしまったのです。
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高校にもいじめっ子がいるかもしれないということで、息子は志望校を変えました。私が希望していた通信制で週3日登校する高校です。
自分から通信制にすると話してくれた時に、「実は私、その高校があなたに合ってるんじゃないかなって思ってたんだよ」とカミングアウトしました。すると息子は「そうだったんだ!」と笑っていました。
この高校を選んで良かった!自分の信じた道を自信をもって進んでいって
現在、通信制の高校を選んで良かったと二人で話しています。学校には、同じ発達障害を持つ子どももいてお互いの特性を知って配慮しあったり、趣味が似ているお友達とはとても深い知識を理解し合える素敵な関係を築くことができました。全日制に比べると校則も厳しくなく、登下校の時間も全日制の高校とかぶらず、朝はゆっくり、帰りは早いことで、息子も疲れることなく休まず通えています。
アルバイトも始め、将来やりたい仕事も自分で見つけました。特別支援学級の先生です。そのため息子は今、大学への進学を目指しています。
不登校だった時期からは考えられません。
「我が身を抓って人の痛さを知れ」これは、私の恩師が教えてくれた言葉です。
私の学生時代にもやはりいじめがありました。自分がいじめられたらどんな気持ちになるかという話の時、恩師はこの言葉を使われました。
息子は、発達障害のある子どもがどこにつまづきやすいのか、どんなことが嫌なのか、また、いじめられる子どもの気持ちを身をもって経験してきました。そして、そんな子どもたちが1人でも減るようにと思う優しい青年に成長しました。
自分の信じた道を自信をもって進んでください。いつでもあなたを応援しています。
イラスト/カタバミ
エピソード提供/しのっぺ
(監修:鈴木先生より)
神経発達症のお子さんはコミュニケーションが苦手な場合があるため、学校ではいじめのターゲットになりやすい傾向があります。特に出身校が異なり、進学先で初めて一緒になった子どもたちから理解を得られづらいことがあります。
IQテストで処理能力が低いお子さんは板書など写して書くことが苦手でマイペースです。ASDのお子さんに多い傾向があります。そういうお子さんにはタブレットで黒板の写真を撮るなど工夫が必要です。細かいところまで配慮してくれる通信制の高校は神経発達症のお子さんには向いています。自宅で自由に勉強できるからです。無理して全日制の高校だけを考えずに肩の力を落とせる通信制の高校も視野に入れつつ本人に行きたい高校を選択してもらうことが重要なのです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。