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「うちの子、自閉症で」息子の障害を出会ったばかりのママ友にカミングアウト!その理由は…【読者体験談】

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「うちの子自閉症なので、なかなか気持ちの整理が上手にできなくて」園バスでの大癇癪で、すぐに息子の障害をカミングアウト


現在小学3年生の息子は、2歳で知的発達症、ASD(自閉スペクトラム症)の診断をうけました。
2年間の海外生活から日本へ戻ってきた私たち。当時息子は5歳でした。海外ののびのびした環境から急に帰国、かつ新しい幼稚園に通うことは、誰でもとてもストレスがかかることだと思います。しかも、通うことになった幼稚園は隔日登園、保育時間も短時間で、今までとは異なることだらけ。息子もこの変化を受け止めきれず、癇癪が増えてしまいました。

特に幼稚園が終わって園バスから降りたあとの癇癪が大変。毎日大声で叫んだり泣いたりする日々でした。
楽しい園での遊び時間が短すぎて、大好きな先生とのお別れが早過ぎてつらかったのが理由のようです。大きな声で泣き叫ばれたら園バスを待つ他の保護者の方やお子さんたちも驚くでしょうし、不安に思うでしょう。

息子が最初大声を出してしまった時に、私は迷わず、すぐにカミングアウトしました。
「すみません、うちの子自閉症なので、なかなか気持ちの整理が上手にできなくて……新しい幼稚園は短時間なのが理解しづらいみたいです……」
「大きい声ビックリしちゃうよね、ごめんね~。幼稚園大好きすぎて、おうち帰るのがつらいみたい」などと、その場にいるママさんや子どもたちに明るい感じで、息子の気持ちを代弁していました。

カミングアウトをするか迷われる方もいると思いますが、私がすぐ判断できたのは、海外での経験によるものでした。

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私が積極的にカミングアウトをしている理由


息子が年少・年中の2年間、わが家はドイツで暮らしていました。通うことになった幼稚園では、外国人の障害児を受け入れるのは初めてとのこと。
私は事前にメールで息子の様子を伝えたり、日本の園での様子を撮影した動画を送ったりして、息子の障害がどの程度なのかを伝えました。
送った動画は以下の2つです。

1.お弁当箱を自分で片づけ、歯磨きをして、先生の指示で順番に動いている様子
2.体育の授業で走り回っている様子

当時の私は、「よし、ちゃんと自分で片づけできているな。これなら幼稚園も受け入れてくれるはず」と思いました。でもドイツの園長先生がその動画を見て私に返してくれた感想は、「全然楽しそうじゃないね。目が笑ってない。単に従わせているだけ」。予想してなかった視点でした。
この時、私の視点は息子自身の気持ちに向いてないと気づかされました。

実際ドイツの幼稚園は非常に素晴らしい環境でした。先生方は日々試行錯誤で息子に対峙してくださいました。教室に入れない息子を園長先生は自分のオフィスに連れて行き、ときには膝に抱っこして一緒にパソコンで好きなキャラクターの画像を探して印刷したり、ときにはご自分はお仕事をしながら隣の椅子で息子を自由に遊ばせたり、ときには一緒にスマホで写真を撮って可愛く加工したり、ときには一緒にお散歩をしたりしてくれました。関わってくださった先生方全員、息子に合わせて接してくれました。
この経験のお陰で、息子は人を信じることができるようになり、自分を受け入れてくれる人を探すのが上手になりました。自己肯定感の獲得にも繋がっていると思いましたし、仲の良い友達もできました。

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そして私の心境も大きく変化しました。
ドイツに行く前も充分に息子の障害受容ができていると自分では思っていたのですが、実際には受容できていなかったことに気がつきました。以前の私はというと、仲の良い人にだけはカミングアウトしているのに、知らない人には息子の変な発言や態度に対して、なるべく障害だと思われないようにフォローすることを無意識にしており、気疲れすることが多かったように思います。ですが、ドイツで生活する中で、私はクラスメイトのママパパ全員に、息子の障害について話すようになっていました。

こういう経験があったので、日本でも私は迷わずカミングアウトをしたのでした。

日本の幼稚園でカミングアウトしたら?


ドイツでそのような経験をしていても、日本ではみんなどういう反応をするんだろう……と不安はありました。ですが、返ってきたのは温かい言葉ばかりでした。

「わかりますー。うちの子も!大変ですよね……」
「友達のお子さんも発達障害で同じような話よく聞きます」
「うちもグレーです。
早く慣れるといいですね」
「知り合いに障害児ママいるから、紹介します」
「大丈夫ですよ」

など、だいたいは笑顔で受け入れてくれ、同じ環境の人を紹介してくれたり、お友達になったりしました。

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その時、「あれ?こんなに理解してくれるんだ。自分だけが周りに迷惑をかけてつらいと思っていたけれど、もしかして意外とみなさん発達障害の子どもというものに慣れているのかもしれない」と思って、急に気持ちが楽になったのを覚えています。

大規模マンションに住んでいるのですが、子どもの数がとても多いため、同じような環境に対する知識や経験のあるママさんたちが多かったのもラッキーでした。そこで繋がった人とは、その後も個別に特別支援学級や放課後等デイサービスの情報交換をしています。

カミングアウトは、息子にも私にもいい影響を与えてくれました


日本の幼稚園でカミングアウトしてから、息子にはすぐに目立った変化はありませんでしたが、周りの空気をすぐに察知するタイプですので、周りの大人の目が優しいことを感じ取ってはいたようです。同じ園バスの子のママや、私が話をするママさんとは、その後徐々に自分から声をかける様子も見られるようになりました。

そして私は、友達、知人以外の他人にもカミングアウトするようになりました。
そして意外にも受け入れてくれる方が多いことに気づき、「そっか、私ひとりで頑張らなくても、周りを頼っていいんだ」と思えるようになりました。以前は、私一人で連れて行くのは大変だからと旅行や遠出も諦めていましたが、「一人で頑張らなくてもいい」ことに気づいてからは、友人家族にお願いして家族ぐるみで旅行にいったり、週末は一緒に遊びに出かけたりすることで、自分自身もリフレッシュできるようになりました。

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その後、いろいろあって夫とは離婚したのですが、この「他人を頼って生きていい」ということに気づけたからこそ、夫と離婚しても大丈夫だと思え、離婚を決意できたと思っています。

息子に「自分は一人ではないこと、周りを頼っていいこと」を知ってもらいたい


今はまだ「ママといっしょ!」「ママの服着る」「ママと寝る」と、とにかくママ依存の9歳ですが、いずれ私との別れを経験する日がきます。そうなった時には絶望感に打ちひしがれずに、「僕は一人じゃない。周りの人を頼っていい。助けてくれる人はいる」、そう思って生きていってもらいたい。持ち前の愛想の良さとおふざけ気質はそのままに、上手に周りの人に手助けを依頼できる勇気を持ってほしいです。


そして社会の人たちにも、ずっと独りでしゃべっていて「怪しいな」と思うかもしれないけれど、怖くないよ、ピュアで愛らしいところもあるんだよ、ということを知ってもらいたい……。今のうちから息子と社会のコネクションを作って、新しい場所、新しい経験を通じて、生きていける場所の広さを知ってもらいたいたいと思っています。

そして願わくは、私がカミングアウトをしている様子を見た同じく障害を持っているお子さんの保護者さんたちが、つらい気持ちを吐き出せる雰囲気を感じてもらえると嬉しいなとも思っています。

イラスト/keiko
エピソード提供/おかんレベル8

(監修:鈴木先生より)
海外と日本との違いは多々あります。米国ではお昼はランチボックスを持って外で食べて楽しく過ごしています。対して、日本の給食ではみんな同じものを教室の中で食べます。国によって子どもを取り巻く環境はかなり違います。以前ドイツの友人から聞いた話ですが、ドイツでは就学前にペアトレを行う保護者も多いようです。そういうお国柄なので園長先生の対応もうまくできていたのではないかと思いました。また、カミングアウトしても周りのすべての方が理解するとは限りません。相手の立場への理解の困難さがある人の場合、かえって反発されることもあり得ます。そうしたこともあり得ると心にとめておくといいかもしれませんね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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