2歳児の自閉症の特徴は?チェックリストや相談の目安など【小児科医監修】
ASD(自閉スペクトラム症)とは?
ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。
知的障害(知的発達症)を伴うこともありますが、2歳児は「イヤイヤ期」といわれる時期でもあり、ASD(自閉スペクトラム症)の診断がつかず様子見という場合も多くあります。
https://doi.org/10.15064/jjpm.57.1_19
参考:自閉スペクトラム症 (ASD) の特性理解 (著)傳田 健三
ASD(自閉スペクトラム症)の遺伝に関する研究結果として、発症・発現に何らかの遺伝的な要因が関係している可能性が高いと考えられています。しかし、はっきりとした要因はわかっていません。遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、かつ偶然性に左右される部分も多いといえます。
1歳に続き、この時期の成長・発達には大きな個人差があります。2歳で「ASD(自閉スペクトラム症)かも?」と診断される可能性のある行動や反応として、主に
・言葉の発達に遅れがある(2語文を話さない、オウム返しが多いなど)
・激しい感覚過敏やこだわりがある
・他人に関心が薄い
などが挙げられます。詳しくは次章以降で紹介しますが、2歳ではASD(自閉スペクトラム症)と診断されることは少なく、「様子見」といわれることが多い傾向にあります。
https://www.mext.go.jp/content/20211014-mxt_tokubetu02-000018454_11.pdf
参考:7_自閉症|文部科学省
2歳児の発達の目安って?
ここでは定型発達児における、2歳児の発達の目安を紹介します。
1歳児に比べてできることも格段に増え、言語獲得は2語文を話す程度といわれています。
・歩く、走る、跳ぶなどの基本的な運動機能や、指先の機能が発達する
・食事、衣類の着脱など身の回りのことを(完璧ではないが)自分でしようとする
・排泄自立にむけての身体的機能が整ってくる
・発声が明瞭になり、語彙も著しく増加し、自分の意思や欲求を言葉で表出できるようになる
・盛んに模倣し、大人や同年齢の子どもと一緒に簡単なごっこ遊びを楽しむようになる
・行動範囲が広がり探索活動が盛んになる中、自我の育ちの表れとして、強く自己主張する
「自我の表われ、強い自己主張」は、いわゆるイヤイヤ期であるといえるので、定型発達児でも強い癇癪を起こしやすい時期であるといえます。
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12895174/www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku04/pdf/hoiku04b_0001.pdf
参考:保育所保育指針解説書 |厚生労働省
http://www.rehab.go.jp/application/files/1515/8226/5892/22_.pdf
参考:イヤイヤ2歳|国立障害者リハビリテーションセンター
ASD(自閉スペクトラム症)の特性は2歳児でも表れる?言葉、感覚過敏、こだわりなど…違和感や気になるサイン
2歳児は「イヤイヤ」が強く出る時期であるため、「激しい癇癪やこだわりがあるのはASD(自閉スペクトラム症)だから?」と思ってしまうこともあるかもしれませんが、その他に見られる日常の様子を見ていくことが大切です。では2歳児の気になる発達の遅れや特性とは、どのようなものがあるのでしょうか。
2歳台の子どもの気になる行動として、
・人見知りが強い、または少なすぎる
・他人の行動を真似・模倣しない
・見てほしいものや興味があるものについて共感を求めてつたえようとしない
・「まんま、たべる」「ワンワン、いた」などの2語文を話さない
・極端にまぶしがる、大きな音に過剰に反応するなどの感覚過敏(反対に鈍感すぎる)
・突然癇癪を起こす、またそのあとの切り替えが難しい
・変化をひどく嫌う、特定のものへの強いこだわり(場所見知りや強い偏食など)
などが挙げられます。
1歳6ヶ月児健診では「M-CHAT」という質問紙を使用した「スクリーニング検査」が推奨されていますが、2歳児にも引き続き参照されることがあります。1歳台と同様に社会性、言葉の発達(喋るのが遅い)などが表れやすい傾向があると共に、感覚過敏や癇癪やこだわりなども多く出てくる時期です。
「M-CHAT」などの検査で当てはまる項目が多くても、2歳児は自我が芽生える時期であり、成長にも大きな個人差があるため、ASD(自閉スペクトラム症)であるか判断ができず、様子見となることもあります(基本的にM-CHATは保健師などがチェックするものであり、保護者自身がチェックするものではありません)。
2歳児に表れることの多いASD(自閉スペクトラム症)の特性による症状
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※発達や成長に加え症状や特徴には、この時期大きな個人差があります。当てはまる反応や行動の数が多いからといって、すぐにASD(自閉スペクトラム症)と診断されるわけではありません。
相談や受診の目安、保護者ができることとは?
成長に個人差はありますが、
・過敏さが強く、まとまった睡眠がとれない
・ほかの子どもの遊びにあまり興味を持たない
・親にも積極的に働きかけない
・こだわりが強く、生活するのが難しい
・目が合わない、呼んでも反応が悪い
など、日常生活の中で、困りごとが多い場合や保護者の方が心配な場合は相談しましょう。
子どもの発達が気になる場合、どこへ相談すればいいのでしょうか。
・市町村の保健師・保健センター
母子の健康をサポートするためのさまざまな相談やサービスを受けることができます。
・行政福祉窓口
市・区役所等の福祉課で相談方法を知ることができ、困りごとに適した相談機関を紹介してもらえる場合があります。
・発達障害者支援センター
各県に1ヶ所以上あり、発達障害についての相談の対応を行っています。
その他、保健所、療育センターなどもあります。また、全国に親の会などもあるので、利用してみてもいいかもしれません。
診断された、あるいは発達の遅れなどが気になるから、早く療育を受けたいという保護者も多いと思います。
療育とは、「障害のある子どもに対してそれぞれの特性に応じた身体的・精神的機能の発達を促し、日常生活や社会生活を円滑に営めるように行うもの」です。療育(発達支援)には、自治体などの管轄の公的機関で行うもののほかに、民間の施設などで行うものがあります。大学病院など一部の医療機関ではPTなどを行っている場合もあります。
自治体のほか、民間の施設の中にも公費で受けられる発達支援を提供しているところがあり、この支援は「通所受給者証」(※)を所持していると利用でき、利用料金の助成を受けることができます(基本的には1割負担ですが、満3歳になって初めての4月1日から3年間は無償となります。また、家庭によって上限額が異なります)。
ASD(自閉スペクトラム症)は早期発見、早期療育がのちの社会生活に大きく影響するといわれています。できるだけ早い時期から療育を行うことで、日常生活や園・学校生活における困難の軽減や生活能力の向上を促すことができると考えられています。
※福祉サービス等を利用するために発行される証明書のこと。自治体に申請して、審査の上発行される。日数(支給量)や、月額の利用料の上限額(上限負担額)が記載されている。
https://doi.org/10.34572/jcbd.11.1_3
参考:小林 勝年, 儀間 裕貴, 北原 佶著「エビデンスに基づく療育・支援とは何か」『子どものこころと脳の発達』2020 年 11 巻 1 号 p. 3-10
2歳児は1歳児に比べ、言語やできることも増える分、自我の芽生えも強く出る時期といえます。それが「イヤイヤ期」によるものなのか、ASD(自閉スペクトラム症)の特性からくるものなのかはなかなか見極めにくいかもしれません。
1歳児同様、発達には大きな個人差があるため、この時期だから必ずこの特徴が出るという確定的なものはありませんが、気になるポイントがあったら、早めに相談・受診しましょう。
(監修:新美先生より)
2歳ごろには、お子さんの行動範囲も増えてきて、好きなもの興味あるものと、興味ないものがはっきり見えてくる時期ですね。興味ないこと、苦手なことを無理強いするのは効率が悪いので、本人が興味あることを足掛かりに、興味の幅を増やしたり人とかかわることの楽しさも見つけていけるといいですね。
保護者の方にとって関わり方が難しいなと感じる場合、専門機関に相談するのも、お子さんにあった子育てを知るためのきっかけになるかもしれません。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。