無発語、重度知的障害息子の「怖いもの」って!?息子の工夫で気持ちを知って【読者体験談】
重度知的障害(知的発達症)の息子が苦手なもの。それは……
息子は3歳の時に重度の知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。
息子にはある苦手なものがあります。無発語なので言葉で説明することはできませんが、それは特定の人形や置物。どうやら形が関係しているようなのですが……。
人形や置物をせっせとひっくり返す息子。もしかして……?
私が気づいたのは息子が小学校4年生くらいだったと思います。
ある日、棚に置いてあった特定の人形や置物の視線がこちらを向かないように、せっせと後ろに向けたり布をかけたりしている息子を見つけました。イライラしていたり、怖がっている風でもなく、いたって真面目に淡々と人形を後ろへ向けている息子。あ、もしかして人形にこっちを見てほしくないんだな?と思いあたりました。
Upload By ユーザー体験談
思えば、幼い頃から特定の柄や物に苦手意識があったのかもしれません。しかし、当時は苦手だということを訴える術がなかったのでしょう。幼い頃からある部屋に入るのを拒むということがありましたが、それは苦手なものがある部屋だったからかもしれません。
そして観察してくと、どうやら息子は動物の人形や置物は大丈夫なのですが、人の形をした物、特に顔の部分が苦手なようだと分かりました。人形の視線が怖い……というのはなんとなく分かるのですが、息子は苦手な「形」もあります。
息子はハニワが許せない!?真っ先にハニワを180度回転させます
息子が苦手な形は「丸」です。すべての丸に対してではないので、丸は丸でもなにか違いがあるのだと思います。想像でしかないのですが、もしかしたら人の目のように見える丸が苦手なのかもしれません。
苦手な丸を見つけると布をかぶせたり、自分から見えない位置に移動したりしています。
たくさん物が置いてあるおばあちゃんの家へ行くと、息子の人形や形への苦手さがよく出ます。本人はおばあちゃんのこの部屋なら、あの置物とあの表示が嫌だと分かっているので、部屋に入ってすぐ毎回同じ物をひっくり返したり、布をかけたりしています。
中でも一番に動かすのはハニワ。おばあちゃんのリビングには中央を向いてハニワが鎮座しているのですが、それを180度まわして窓の方へ向け、自分と目が合わないようにしています。ハニワの目と口、まん丸ですものね……。きっとかなり苦手な部類なのではないかと思っています。
Upload By ユーザー体験談
ちなみに、帰り際このハニワを元の方向に直すよう言うと、本人は素直に直してくれ、これが帰る合図ともなっており、そのまま帰宅する……というのがいつもの流れです。
Upload By ユーザー体験談
「そうだよね、なんとなく苦手ってあるよね」と息子と共感しあえた気分
このような苦手さは今も続いています。ひっくり返したり隠したりする行為は、少し大げさですが自分にとって苦手な物を回避する訓練になるかと思い、また幸い存在するだけではパニックや癇癪に至らないので、空間から排除したことはありません。
なかなか隠せなかったりするとパニック、癇癪が起きそうなので、常に布を用意したり、あらかじめテープを貼って隠したりしているものもありますが、幸いまだパニックになったことはありません。
Upload By ユーザー体験談
苦手意識が過度になると本人もつらいと思います。少しずつ克服してくれたらと気をもんでいるところです。
でも、誰でもなんとなく苦手な模様や怖く感じる絵とかありますよね……?言葉を話さずコミュニケーションを取りづらい息子と、こういうところで共感し合えて、少し嬉しい気持ちもある私です。
イラスト/keiko
エピソード参考/あきこ
(監修:新美先生より)
お子さんによって、どうしても苦手なものがあることはありますよね。黒い丸が2個並んでいるのは苦手という方、時々いるようです。
記事中で分析されていたように、目が連想されて不安になるのかもしれないですね。どうしても苦手なものがある場合、我慢しても気が散ってしまい、その空間で過ごすことがストレスになってしまいます。見えないようにする工夫は大事だと思います。息子さんの場合は、淡々と自分で見えないように向きを変えるなんてすごいですね。また布などで隠すなどもよいやり方だと思います。自閉タイプの方は「見えないものはないもの」と割り切りやすいので、見えないようにすることは良い工夫ですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。