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COSMINに準拠したLITALICO発達特性検査の開発とは?信頼性や妥当性のある尺度開発のガイドラインについて解説します

LITALICO発達ナビ

「COSMIN」は品質担保のための尺度開発の国際的なガイドライン


COSMINは、健康に関連する尺度※などに関する国際的な開発の指針です。COnsensus‐based Standards for the selection of health Measurement INstrumentsの略称で、直訳すると「健康関連尺度の選択に関する合意に基づく指針」を意味し、国際的な専門家のチームによって尺度の開発や評価をする際の指針やガイドラインなどが作成されています。

LITALICO発達特性検査は、今回の検査の開発に際して、COSMINが選定した指針やガイドライン上の基準を満たすようにつくられています。

この記事では、COSMINとは何か、その目的のほか、実際にどのようにして信頼性や妥当性を担保するのか、またLITALICO発達特性検査でなぜCOSMINを採択し、どのように開発で使用したのかなど、取り組みについてもご紹介します。

※ここでいう「尺度」とは、対象となる方(受検者)が自ら質問文を読んでそれに回答をする形式のツールのことで、LITALICO発達特性検査も尺度を用いたサービスです。分野によっては、質問紙、心理尺度、患者報告式アウトカム尺度などと呼ばれることもありますが、この記事では総じて尺度と呼ぶことにします。

「LITALICO発達特性検査」は保護者回答による尺度形式


LITALICO発達特性検査は、お子さまの様子や困りごとなどについて、保護者の視点から質問に回答する尺度という形式を用いた検査で、尺度開発の国際基準であるCOSMINチェックリストに準拠した開発が行われました。

尺度を使った評価のほかにも、医師や臨床心理士などが、面接や行動観察などを行う他者評価形式のものもあります。
しかし、他者評価形式の検査の場合、有資格者でないと実施できない検査がある、検査を受けることができる施設が限られる、検査を受ける経済的負担が大きい、結果が出るまで時間がかかるなどの課題も少なくありません。

LITALICO発達特性検査では、そうした課題に対して、どこからでも比較的短時間で気軽に受けられる検査を目指して開発されました。そのため、保護者回答による尺度形式を採用しています。ただし、尺度と他者評価形式のそれぞれにメリットやデメリットがあるため、どちらが優れているかという話ではないことに注意が必要です。※LITALICO発達特性検査 について詳しく知りたい方は、以下をお読みください。

なぜ尺度開発に品質担保が必要なの?


心理検査や発達検査などの検査を受けるとき、その検査が信頼できるものであるのか、適正な結果が得られるかどうかは受検者にとって大きな関心事ではないでしょうか。

そのため、検査の開発者は、検査内容や結果の出し方について、適正な工程で開発し、検証をすることが求められます。特に尺度を開発する際には、のちに紹介する信頼性や妥当性といったさまざまな心理測定学的特性の基準を満たしているのかを検証する必要があります。


尺度というのは、受検者や検査の対象となる人(お子さまやご家族など)の気持ちや体験などのこころの状態を数量的に測定するための「物差し」のことです。この「物差し」をつくるために、どのような質問をするか、またその回答データをどのように検査結果として評価するかを研究し、開発を行っています。

検査の品質において、その物差しが信頼できるかどうか、妥当なものであるかをどう担保するかが、とても重要です。質問項目でどのようなことをどのように聞くか、その結果を数量的に測定し、結果を判断するのかによって、その品質が大きく変わると考えられるからです。

信頼性と妥当性


尺度の品質を評価するための心理測定学的特性として、主に信頼性と妥当性があります。信頼性とは、受検のたびに結果や得点が変動することがあまりなく、安定している度合いを表します。妥当性とは、その検査で本当に測定したいもの(LITALICO発達特性検査の場合にはお子さまの発達特性)をきちんと測定できている度合いを表します。

適切な開発が行われず、品質が十分にチェックできていない場合、以下のような問題が出る可能性があります。


◾️ある尺度を繰り返し受検した場合、その尺度で測定される気持ちや体験に大きな変化がないにもかかわらず、尺度の得点が大きくばらつく(つまり安定した結果にならない)
◾️質問で聞かれていることに対する解釈が回答者によって違う
◾️受検者にとって質問の内容や回答の選択肢が適切ではない

こうした検査であったら、適切な結果が得られるとは言えないかもしれません。そもそも検査に対して安心して受検することも難しいのではないでしょうか。特に、尺度は質問項目に対して主観的に回答するため、質問項目に対する解釈のずれや回答する時期、状況などによって、回答に大きなばらつきが出ないように注意する必要があります。そのため、尺度に十分な妥当性と信頼性がある尺度を開発するためには、尺度の教示文や質問項目の内容などについて、しっかりと検討する必要があります。

COSMINの目的と特徴


尺度は受検者が自ら回答する検査ツールです。健康に関わるQOL(生活の質)や自覚症状、日常生活の機能状態などについて、受検者が自ら気持ちや体験をどのようにとらえているのかを数量的に測定することができます。そのため、近年では発達障害の分野でも尺度がよく用いられるようになり、さまざまな尺度が開発されてきました。

尺度を開発したり使用したりする場合、それぞれの主観で回答しても一定の結果が得られるか、検査結果と実際の状態に大きなずれがないかなどは、検査の品質として検討され、担保されなくてはいけません。
つまり、こうした受検者が主観で回答するという特性を考慮したうえで、尺度に十分な妥当性と信頼性がある必要があります。

ですが、これまで、どうやって信頼性や妥当性を担保するのかというのは研究者間でも考え方が分かれ、基準や意見の一致がほとんどない状態でした。そのため、信頼性や妥当性を十分に評価されていない尺度が使われているのではないかという懸念もありました。

このような背景や課題に対し、尺度特性を評価するための標準的な基準として開発されたのがCOSMINです。COSMINでは、信頼性や妥当性といった心理測定学的特性を下の図のように分類しており、それぞれに対して評価基準が明確に設定されています。2018年に国際的専門家による合意形成によってガイドラインが改訂され、具体的に検証を進めるためのチェックリストなども開発されています。

COSMINに準拠したLITALICO発達特性検査の開発とは?信頼性や妥当性のある尺度開発のガイドラインについて解説します

Upload By LITALICO発達特性検査 編集部

COSMINでは、チェック結果が高い品質になるよう、事前にしっかりと研究計画を立てて開発を進めることが重要です。COSMINでは、チェックリストに含まれている評価項目一つひとつに対して、「とても良い」から「不適切」までの4段階で評価していきます。
このチェックリストを使うことで、検査が妥当なものであるか、信頼できるものであるかどうかを、慎重に評価して開発することができます。

なぜLITALICO発達特性検査はCOSMINを使って開発したの?


LITALICO発達特性検査では、検査の品質を重要視して開発しています。品質担保の観点でCOSMINを開発指針として採用した理由としては、主に以下の2点が挙げられます。

1. 尺度としての妥当性と信頼性を担保するため
2. LITALICO発達特性検査の形式や測定特性に対して適切なガイドライン・チェック項目がある

それぞれについて詳しく説明します。

LITALICO発達特性検査の開発では、尺度の信頼性や妥当性に関して、COSMINのガイドラインやチェックリストに準拠することが有用であると考えました。現在の尺度開発のガイドライン、チェックリストとして最も厳しい基準の一つであるCOSMINに準拠することで品質の担保を目指すことができると考えられるためです。

LITALICO発達特性検査のような保護者さまがオンライン回答する検査では、いつどのような状況で回答しても安定した検査結果であることがより重要になるでしょう。

そこで、LITALICO発達特性検査では、尺度開発において、信頼性と妥当性について品質を重要視した開発を行いました。
その品質担保の方法として、COSMINのガイドラインに沿った手順を踏み、チェックリストで「不適切」という評価がないよう、チェックリストを満たしながら開発が行われました。

まとめ


COSMINは尺度の信頼性や妥当性をチェックするための国際的な基準です。COSMINに準拠した尺度開発は、チェックリストが厳格であることや、またその指針に沿って開発するには、通常の開発よりも時間やコストがかかるなど、難易度も高い傾向があります。COSMINを完全に満たす形での尺度開発はまだ数か少ない状況でもあります。

そのような中、LITALICO発達特性検査はCOSMINに準拠した開発を行い、約3年の時間をかけ、2024年4月にサービス提供が始まりました。

LITALICO発達特性検査では、オンラインでいつでもどこからでも受検できる、信頼できる検査の開発によって、多くの保護者さまやお子さまにとって、過ごしやすい社会へとつながることを目指しています。気軽に受検できるという検査の特徴と、より高い信頼性・妥当性の両立のために、COSMINは欠かせない指針であり、重要な役割を果たしています。https://www.cosmin.nl/wp-content/uploads/Revised-Japanese-version-of-the-COSMIN-Risk-of-Bias-checklist-for-PROMs.pdf
参考:COSMIN Risk of Bias checklist

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbct/48/2/48_21-005/_article/-char/ja
参考:『尺度研究におけるCOSMINガイドラインの動向』 (認知行動療法研究/48 巻 (2022) 2 号/佐藤秀樹、土屋政雄)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbt/41/2/41_KJ00009985686/_article/-char/ja
参考:『尺度研究の必須事項(<特集>「行動療法研究」における研究報告に関するガイドライン)』(行動療法研究2015年41巻2号 p.107-116/土屋政雄)

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