漢方薬「甘麦大棗湯」は癇癪や夜泣きに効果がある?副作用についても【医師監修】
漢方薬「甘麦大棗湯(かんばくたいとうそう)」は子どもの夜泣きやひきつけに効果がある?作用、特徴、効能、副作用などについて解説
甘麦大棗湯(かんばくたいとうそう)とは、夜泣きや不眠、ひきつけなどに効果があると言われていて、子どもに用いられることも多い漢方薬です。心身の興奮を鎮める効果があり、自律神経の乱れ(いわゆる自律神経失調症)や癇癪に対しても用いられることがあります。
甘麦大棗湯は小麦、甘草、大棗(ナツメ)などの食品で構成されていて甘みがあり、子どもにも服用しやすいという特徴があります。
甘麦大棗湯は不安からくる腹痛にも効果があると言われています。腹痛に対しては基本的にはほかの漢方を用いますが、強い不安が腹痛の要因となっている場合には甘麦大棗湯により症状が改善することがあります。
また、甘麦大棗湯はほかの漢方薬と併用することもあります。ここでは抑肝散(よくかんさん)と桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)との併用について紹介します。
抑肝散はセロトニンを増やす効果があり、神経症や夜泣きなどに用いられる漢方薬です。
入眠、起床の困難や疲れやすさを感じていた方に甘麦大棗湯と抑肝散を併用したところ、相互作用により症状の改善が見られたという報告があります。
次に桂枝加竜骨牡蛎湯は神経の高ぶりを抑える効果があり、神経症や不眠、夜尿などに用いられる漢方薬です。
不安症やパニック症などの精神疾患のある方に対して甘麦大棗湯と桂枝加竜骨牡蛎湯を併用したところ、症状の緩和が認められた例があります。
https://doi.org/10.3937/kampomed.66.8
参考:津曲 淳一, 田原 英一, 矢野 博美, 土倉 潤一郎, 益田 龍彦, 犬塚 央, 田沼 龍太郎, 三潴 忠道 著「甘麦大棗湯により改善した腹痛の二例」日本東洋医学雑誌/66 巻 (2015) 1 号 p. 8-12
https://doi.org/10.3937/kampomed.68.317
参考:永田 豊, 小山 俊平, 青山 和史, 貝塚 真知子, 中川 のぶ子, 長坂 和彦 著「桂枝加竜骨牡蛎湯と甘麦大棗湯の兼用が有効であった不安症の4症例」 日本東洋医学雑誌/68 巻 (2017) 4 号p.317-323
甘麦大棗湯は子どもから大人まで幅広い年齢の方に処方されます。具体的には生後3ヶ月以上の子どもが対象です。ただし、1歳未満の子どもの場合には、症状や状況を考慮してやむを得ない場合にのみ処方するような形となっています。
漢方薬は効果が表れるまで時間がかかることが多いですが、甘麦大棗湯は比較的即効性があり、1週間程度で効果が表れるとされています。また、効果があった場合にもいつまで飲み続けるかについてですが、基本的には不眠や夜泣きなどの症状がなくなったタイミングで服用を中止します。
反対に効果が表れない場合にも服用を中止することがあります。服用の注視や継続については処方してもらった医師に相談するようにしましょう。
「甘麦大棗湯」の用法、用量を解説。病院で処方してもらえるの?
甘麦大棗湯は成人の場合1日7.5gを2~3回に分けて服用します。
子どもの場合は年齢ごとに用量の目安が厚生労働省により以下のように定められています。
・7歳以上15歳未満:成人用量の2/3
・4歳以上7歳未満:成人用量の1/2
・2歳以上4歳未満:成人用量の1/3
・2歳未満:成人用量の1/4以下
つまり、5歳の子どもの場合は1日3.75gとなります。実際に処方される量は年齢以外にも体重や症状の表れ方によって変化します。
甘麦大棗湯は小さな粒状となっており、食前または食間に水かぬるま湯とともに服用します。食前とは食事の20~30分前、食間とは食後約2時間で、この時間に服用することで胃腸からの吸収がよいため、作用の穏やかな漢方薬に向いていると言われています。
甘麦大棗湯は小児科やメンタルクリニックなどの病院で処方してもらうことが可能です。ただ、漢方を扱っているかは病院によって異なりますので、詳しいことは直接病院へお問い合わせください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000160073.pdf
参考:都道府県知事が承認する漢方製剤の製造販売承認事務の取扱いについて|厚生労働省
「甘麦大棗湯」は発達障害に効果があるの?
甘麦大棗湯は発達障害のある方へ処方されることがあります。ただ、発達障害の特性に対して効果があるわけではなく、発達障害に関連した癇癪や睡眠障害などの症状を緩和するために処方されます。実際にASD(自閉スペクトラム症)に伴う入眠・起床困難や疲れやすさのある方に対して、甘麦大棗湯と抑肝散を処方したところ、睡眠状況が改善し活動量も増えたという報告もあります。薬の飲み合わせなどにより副作用が出ることもあるので、甘麦大棗湯をはじめ漢方薬を試してみたい場合は、主治医に相談してみてください。
https://doi.org/10.3937/kampomed.69.246
参考:武原 弘典, 松川 義純, 田中 裕, 山本 修平, 堀谷 亮介, 西森(佐藤) 婦美子 著「発達障害に合併する睡眠障害に対して漢方治療が有効であった2症例」日本東洋医学雑誌/69 巻 (2018) 3号 p.246-251
「甘麦大棗湯」の副作用は?
漢方は比較的副作用が少ないと言われていますが、全くないわけではありません。実際甘麦大棗湯にも副作用が確認されています。
主な副作用としては手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばり、脱力感、筋肉痛などがあります。こういった症状が表れた際は服用を止め、医師や薬剤師などに相談しましょう。
また、何か治療を受けている場合やむくみ、高血圧、心臓病、腎臓病のある方は影響が出る可能性があるため、服用前に医師などに相談しましょう。
まとめ
漢方薬「甘麦大棗湯」は子どもの不眠やひきつけなどの症状に用いられるほか、自律神経の乱れや発達障害に関連した癇癪、睡眠障害に対して用いられることもあります。漢方薬としては効果が早く表れることや、甘みがあり子どもにも服用しやすいという特徴があり、子どもから大人まで幅広い年齢の方に用いられています。
ただ、甘麦大棗湯には少ないながらも副作用も報告されているため、服用してみて気になる症状が表れた場合には、すぐに医師などに相談するようにしましょう。
参考文献:甘麦大棗湯エキス〔細粒〕6|KEGG
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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