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「パニック中の記憶がない」児童精神科で突然の自閉症診断。リスペリドン服薬の効果は【読者体験談】

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「パニック中の記憶がない」という衝撃の告白


現在16歳、高校生の息子は、10歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。慎重で落ち着きがなく、初めての場所やいつもと違うことに弱い、急な予定変更など見通しが立たないと不安になる、目や耳が過敏などの特性があります。

幼い頃から癇癪は見られていましたが、小学3年生になると、担任の先生との相性が合わないのか、パニックの激しさが増し、全力で泣き叫んだり、自傷行為をしようとするようになりました。そして小学4年生のある日、息子が突然私のところへ来て、衝撃的な言葉を口にしました。
「パニック中の記憶が無い。居ない人の声が聞こえる」

「パニック中の記憶がない」児童精神科で突然の自閉症診断。リスペリドン服薬の効果は【読者体験談】

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それまでは、スクールカウンセラーと協力し、パニックが起こる前に次の行動を予告したり、学校へ行く準備を手伝ったり、イライラした時には深呼吸を促すなど、さまざまな対策をしてきましたが、さすがにこれは深刻な状況だと感じました。

息子の言葉をスクールカウンセラーに伝えたところ、即座に「それは病院に連れて行ったほうがいい。家族の努力だけじゃどうにもならないから、薬の処方などについても相談してみましょう」と言われ、「前に療育に通っていたときに診てもらっていたところにカルテがあるはずだから、まずはそこに相談してみてはどうでしょう」とアドバイスを受けました。
年長から小1まで通っていた発達支援施設には医師が常駐し、そこに受診していました。ですが、連絡してみると予想外の返答が返ってきました。

「小児科ではなく児童精神科へ」思春期外来のある精神科病院への転科


すぐ発達支援施設に問い合わせたところ「最後の受診から何年も経っているため、初診まで半年かかります。半年後には状況も変わっていると思いますし、息子さんはもう10歳なので、症状からも小児科ではなく児童精神科で診てもらったほうが良いと思います」と言われました。そして、思春期外来のある精神科病院を教えてくれました。

紹介状についてダメ元で聞いてみたところ、「紹介状を書くにも初診が必要ですが、お子さんが改めてこの施設で受診しなくても、これからかかる先の病院に情報を提供できます」とのこと。この施設が初診まで半年かかるのは知っていましたし、通っていたのはかなり前なので、ほかの病院に変わることに特に抵抗はありませんでした。地元で子どもが通える精神科についての知識は全くなかったので、別の病院を教えてもらえたのは大変ありがたかったです。


すぐ教えてもらった病院に電話したところ、「思春期外来の先生が〇曜日に来ます。予約は要らないので、その曜日の午前中に来てください」と言われ、幸いにも割とスムーズに受診することができました。

問診表と持参した過去の発達検査の結果で診断、リスペリドンを処方


紹介された精神科病院はとても混んでいました。問診票の項目が多かったため、母子手帳を確認しながら小さい頃のことを思い出して記入、さらに問診でいろいろと聞かれたあと、職員さんが息子に「先生が原因を調べてくれるからね」と言ってくれました。

診察では問診票と家から持参した過去の発達検査の結果を見て、先生からあっさりと診断を受けました。

「発達障害ですね。保育園で落ち着きが無くて加配の先生が付いていたことからも、ASD(自閉スペクトラム症)で間違いないと思います」

そう言って、紙に「自閉スペクトラム症」と書いて渡してくれました。そして、「パニックを起こしたり、起こしそうになったりした時には、薬を飲ませてください」と、リスペリドンという薬を処方してくれました。
発達障害の診断には時間がかかると思っていたことと、息子が横で一緒に聞いていたこともあってすぐ診断が出たことに少し戸惑いました。

ただ、幼い頃から落ち着きがなく、ずっと発達障害の疑いを持っていたので、診断を受けてホッとしたというのが一番の感想です。学校へ配慮のお願いをしても「一体何の問題が?」という態度を取られることが何度かあったので、「これで学校にいろいろとお願いしやすくなる」とも思いました。

突然診断を受けた息子の思いは……


息子は思いのほか落ち着いていました。「自分がパニックを起こして記憶がなくなったりするのには原因があるんだ」ということが分かって安心したようです。その日から「何で僕はみんなと違うの?」と泣きながら訴えてくることがなくなりました。

そしてパニック時に薬を飲むととても落ち着くようになりました。私は「薬を飲むとこんなに楽なんだ」と驚きましたし、息子自身も「心に効く薬があるんだ!」とびっくりしていました。
次の受診で「薬のおかげですごく楽になりました」と伝えると、先生は「そう言ってもらえるのが一番嬉しい」と笑顔で言われました。

「パニック中の記憶がない」児童精神科で突然の自閉症診断。リスペリドン服薬の効果は【読者体験談】

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服薬はメリットが多いですが、副作用もありました。息子は頭痛と眠気がでるようになり、頭痛については、「パニック中は神経が高ぶっているからそういうこともあると思います」と説明されました。そして夜遅くに薬を飲むと、次の日昼頃まで起きられないこともあることを相談すると、「傾眠がある場合は薬を半分にしてもいいですよ」と言われ、半分に割って飲んでいます。十分に眠ると今度はスッキリするので、学校への行き渋りも減って助かりました。

高校生になった息子、現在の状況は……


受診、服薬もしていますが、今でもパニックを起こすことはありますし、「記憶がない」ともよく言います。しかし、成長して泣き叫ぶようなことはなくなりましたし、何よりも「薬があるから」という安心感があります。

また、不安なことも相談でき、「記憶がなくなるのは自分の心を守るためだから」「記憶が戻らなくなることはないから大丈夫です」と医師から言われるとホッとします。
途中で先生が変わってしまいましたが、新しい先生も息子の悩みに付き合ってくれています。定期的に状況報告をして薬をもらうだけでも、いざという時に医師に助けを求められる状況はとても大事です。

現在高校生になった息子ですが、環境の変化もあって疲れが溜まるらしく、たまに学校を休んだりしています。それでも学校自体は楽しいらしいです。今後は、自分自身をしっかり理解して、自分のことを自分で周囲に説明できるようになり、困ったときは助けを求めたり、困っている人を助けたりできるようになると良いと思います。

イラスト/keiko
エピソード参考/まこぺ

(監修:新美先生より)
小児科から児童精神科に転科したときのことを聞かせていただきありがとうございます。

何歳まで小児科で、何歳から児童精神科・精神科か、どのような状況でどちらの科に受診するとよいかということについては、地域や病院による差が非常に大きいため、お住まいの地域やかかりつけの病院で問い合わせていただくことが必要です。病院や科ごとに、診療の対象年齢がある程度決まっていたり、症状や状況によって得意分野や、役割分担(すみわけ)があったりします。
また紹介や初診の手順についても、病院ごとのルールやローカルルールみたいなものが決まっていることもあります。面倒だな、融通が利かなくて不親切だなと感じることもあるかもしれませんが、この分野の診療リソースがニーズに比べて不足していることがほとんどなため、少ないリソースで診療体制を維持するための工夫でもあるのでどうかご了承ください。

元々発達障害特性のあるお子さんは学校生活でストレスを受けやすく、学童期、特に思春期頃になってくると、今までにないさまざまな精神症状が起きてくることは少なくありません。そうした時に、ストレス源を減らしたり、ストレス対処行動を身につけたりすることと同時に、適切な薬物療法を受けることも、お子さんにとってメリットがあることも多いです。筆者さんの息子さんも、そうした相談ができる担当医にスムーズつながることができ、ストレスや自分の特性とうまく付き合いながら成長していけていることが伺えてよかったです。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。

知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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