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子どもの将来の選択肢を広げる!学齢期のうちに確認したい3つのこと【親なきあと相談室 渡部伸先生に聞く】

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障害者手帳で将来の働き方が広がる?手帳申請のタイミングは……

子どもの将来の選択肢を広げる!学齢期のうちに確認したい3つのこと【親なきあと相談室 渡部伸先生に聞く】

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LITALICO発達ナビ牟田暁子編集長(以下――)発達ナビの読者の方は、半分弱が小学生のお子さんのいる親御さんです。その方たちが不安に思っていることって、やはりお子さんの将来についてかなと。
どのような働き方があるのか分からない方も多いと思いますし、皆さん本当にお子さん思いなので、お子さんの将来に向けて「今」やってあげられることがなにか知りたい方も多いのではと感じています。子どもが小学生くらいのうちに、18歳以降について見据えてやっておいたほうがいいことはありますか?

渡部先生(以下、渡部):そうですね。主に二つあると思っています。一つはやっぱり「障害者手帳」の取得ですよね。手帳を取っておくことで将来の選択肢が確実に広がります。一般就労で手帳を使わない場合もありますけど、手帳を使うことで障害者雇用の枠の中で働くことができます。
現在の障害者雇用率は2.5%ですが、2026年からは2.7%になります。

一般企業でのいわゆる障害者雇用枠での就労は、一般就労とは違う形で仕事をすることができます。例えば特例子会社であれば、支援やサポートも手厚く、ご本人やご家族が嫌でなければ障害者手帳はぜひ取って頂きたいですね。

なお、この一般企業での障害者雇用とは別に、福祉的就労といわれるものがあります。福祉的就労には就労継続支援A型とB型があります。
それから、障害者手帳には、知的障害、精神障害、身体障害の3種類の手帳があります。
知的障害(知的発達症)の場合は療育手帳を取得します。東京都でしたら「愛の手帳」とよばれるものです、発達障害の診断があったり、精神疾患がある場合は精神障害者保健福祉手帳が取得できます。
このように手帳を取得することで一般就労とは違う、障害者雇用での就労という別のルートが確保できます。

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――精神障害者保健福祉手帳を取る良いタイミングなどはありますか?小学生ぐらいのお子さんのものだと今のタイミングで申請していいのかな?などと悩まれる方も多くいらっしゃるように感じています。高学年で取る、中学生で取る、などおおよその目安の時期などあるのでしょうか?

渡部:学齢期の時にすぐに必要になるものでもないので、まだ小学生なのであれば、慌てて取ることもないと思います。

――知的発達の遅れなどなくても発達障害の診断があれば精神障害者保健福祉手帳は申請できるものなのでしょうか?

渡部:対象となるかは自治体での審査結果によりますが、お医者さんの診断書にどのような特性や困り事があるかなど書いてもらえれば申請ができますので、お医者さんと相談をして申請してみていただけたらと思います。

将来のために今から本人の銀行口座の作成を


渡部:もう一つやっておいて頂きたいのが「本人の銀行口座作成」です。ちょっと就労と離れてしまうのですが、将来障害年金などを受給する場合もありますし、お子さんが学齢期を過ぎて本人が口座開設するのが難しいとなった場合、保護者が代理で作ることも年齢的に困難になってしまうこともあるので、本人名義の口座やキャッシュカードなどを今のうちにしっかりと作っておくといいのかなって思います。

――18歳から代理で作れなくなるんでしたっけ?

渡部:最近では15歳を越えるとお子さんが自分で手続きをする必要がある銀行も増えてきました。そのあたりは銀行によっても違うので、一度問い合わせてみると良いですね。


――口座開設の時に署名が必要な場合が多いと思うのですが、私の娘は字が書けないので、保護者が開設できるうちにと思って中学生の時に都市銀行で2つほど口座をつくりました。ちなみに最近、娘の印鑑登録もしました!

学齢期のうちに「主治医」を見つけておいたほうがいい?

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――主治医などはどうでしょうか?18歳になると児童精神科から大人の精神科に転科することも考えると学齢期のうちに主治医を見つけておいたほうがいいのでしょうか。

渡部:主治医は絶対に必要ですね。障害年金受給も障害者手帳も絶対に診断書が必要になってくるので。
昨日も16歳の軽度知的障害(知的発達症)のお子さんがいる保護者の方の相談を受けて、障害年金受給のために手続きしましょうかってなったんですけど「3~4年児童精神科を受診していない」という話になりまして。特に困っていないので受診しなくても大丈夫なんですよね。「行っても世間話くらいしかしないから……」と仰っていたんですけど「いやいや、世間話が大事なんですよ」って(笑)。世間話を積み重ねることで、いざ必要となったときにお子さんのことを分かっている主治医がスムーズに診断書を書いてくれるので、今からでも「久しぶりです!」と受診してくださいと伝えました。


――高校生になると、基本的には小児科を卒業しなくてはいけなくなりますよね。しばらく小児科や児童精神科にかかっていないと、初診扱いになって年齢的に受け入れていただけない場合もあるかもしれませんし、できれば投薬などなくても定期的に小児科や児童精神科につながっておいて、転科の年齢になったらカルテなども引き継いでいただく形で転科できるとスムーズだろうと思います。中学生くらいになると、新患では発達なども見ていただけるような小児科にかかれない場合もあるかもしれませんし……。小学生高学年から中学生くらいになったら、高校生以降のことをふまえてこの先の主治医も見つけておいたほうがよさそうですね。
わが家には重度障害のある高校生の娘がいるんですけど、高校1年生の時に小児科から脳神経内科に転科しました。さらに最近、小児歯科から障害者歯科に転院をしました!

渡部:歯医者!

――障害がある子どもの診察にも慣れてる小児歯科の先生だったんですけど、さすがに娘の身体も大きくなってきて、小児歯科の治療台では対処できないということで、障害者歯科に移りました。障害や特性への配慮もすごくあって、スムーズに転院できました。

渡部:歯医者でもそのような問題があるんですね。
いずれにしても主治医は早めに決めておくのが良いと思います。障害年金も知的や精神だと有期認定の場合がほとんどなので更新の必要性があります。

――知的も有期認定なんですね。

渡部:症状によっては永久認定になる場合もありますが、基本的には有期認定です。最初に年金受給しても3年後や5年後に更新があるので最初はギリギリ児童精神科のかかりつけ医に診断書を書いてもらったとしてもその次の更新の時にはもう書けないです、なんてことになってしまうことも考えられます。今の児童精神科の主治医にいつまで診断書を書いてもらえるのかなどの確認は早いうちにしておくほうがいいですね。

――そうですね。「障害者手帳」「本人の銀行口座」そして「主治医」これらを早めに準備することがお子さんや保護者の方の将来の安心につながることが分かりました。
ありがとうございました。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。
程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

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