就労移行支援、就労継続支援A型・B型の違い、障害者雇用…知っておきたい18歳以降の支援・働き方【専門家監修】
この記事で分かること
- 障害者総合支援法の自立支援給付の障害福祉サービスは訓練等給付と介護給付に分けられる
- 障害のある人の働き方には福祉的就労(就労継続支援A型・B型)と就労を目指した訓練(就労移行支援、職場適応訓練、自立訓練)と障害者雇用と一般就労がある
- 就労後に受けられる支援もある(就労定着支援・ジョブコーチ支援)
- 就労に関する支援サービスは数多くある
障害者総合支援法に基づくサービス
障害のある人への支援は18歳未満の場合は児童福祉法、18歳以上の場合は障害者総合支援法が中心となります。
障害者総合支援法とは、障害のある人が個人の尊厳にふさわしい日常生活や社会生活を送るために必要となる支援を定めた法律です。対象となるのは基本的に18歳以上の障害のある人で、一部の難病のある人も対象となっています。
障害者総合支援法の中心となる自立支援給付の障害福祉サービスは訓練等給付と介護給付に分けられ、個人に対してのさまざまなサービスが提供されています。
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123
参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律|e-GOV法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000164
参考:児童福祉法|e-GOV法令検索
障害者総合支援法の訓練等給付とは障害のある人へ自立した日常生活や社会生活を送るための支援を提供するサービスです。体調管理や金銭管理、身体的なリハビリテーションなどのサポートを行う自立訓練(機能訓練・自立訓練)、働く場所の提供や就職へのサポートを行う就労継続支援(A型・B型)、就労移行支援、就労定着支援などがあります。
訓練等給付には以下のサービスがあります。
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練・宿泊型自立訓練)
- 就労移行支援
- 就労定着支援
- 共同生活援助(グループホーム)
- 自立生活援助
それぞれのサービスを利用するには自治体への申請が必要となります。
また2025年10月より「就労選択支援」も開始されます。これは働く意欲のある障害のある人が自分で希望する就労先や適性のある就労先を選べるようにサポートする障害福祉サービスになります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
参考:障害福祉サービスについて|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf
参考:就労選択支援について|厚生労働省
総合支援法の介護給付は障害のある人が日常生活を送るための介護や支援を提供するサービスです。自宅や施設での介護や援助、外出時の移動支援などがあります。
介護給付には以下のサービスがあります。
- 居宅介護(ホームヘルプ)
- 重度訪問介護
- 同行援護
- 行動援護
- 重度障害者等包括支援
- 短期入所(ショートステイ)
- 療養介護
- 生活介護
介護給付のサービスには障害支援区分が設定されており、利用するには自治体に申請し必要な障害支援区分の認定を受ける必要があります。以上が総合支援法の訓練等給付と介護給付です。今回の記事では18歳以上の人への就労支援を中心に詳しく紹介していきます。
障害のある人の働き方って?【1.福祉的就労】
まず、障害のある人への働く支援として就労継続支援を紹介します。就労継続支援は事業所内で働きながら報酬を受け取れることが特徴で、福祉的就労と呼ばれています。働き方によって雇用契約を結ぶ就労継続支援A型と雇用契約を結ばない就労継続支援B型に分かれています。
就労継続支援A型とは一般企業で働くのが難しい障害のある人を対象に、利用者と雇用契約を結んだうえで働く場を提供するサービスです。雇用契約を結ぶため、労働基準法が適用され最低賃金が保障された給与が支払われるのが特徴で、この点が就労継続支援B型との大きな違いとなっています。仕事内容はパソコンを使った事務作業、清掃、封入や発送などがあるほか、農作業やパンの製造を行い自ら販売するなど多岐にわたり、事業所ごとに異なります。
また、仕事の場の提供だけでなく、一般企業に就職するためのスキル取得やビジネスマナーの訓練などを行っている事業所もあります。
就労継続支援B型は一般企業で働くことが難しい障害のある人を対象に、雇用契約を結ばずに働く場を提供するサービスです。
雇用契約を結ばないため、給与ではなく工賃を受け取りながら利用します。就労継続支援A型と比べて、利用者の体調やペースに合わせた通い方ができることが特徴です。
仕事内容は農作業やパン・お菓子の製造販売、清掃、部品の組み立て、封入や発送など数多くの種類があり、事業所によって異なります。
また、就労継続支援B型もA型と同じく働くスキルを身につける訓練を行っている場合もあります。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/1-4-2.pdf
参考:障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス|厚生労働省
障害のある人の働き方って?【2.就労を目指した訓練】
次に、一般企業へ就職するための訓練や就職活動のサポートを行っているサービスを紹介します。
就労移行支援とは障害のある人を対象に、一般企業へ就職するための訓練や就職活動自体へのサポートを提供しているサービスです。
働くために必要な体調管理や自己理解、ビジネスマナー、業務のスキルなどを身につける訓練や応募書類の添削、模擬面接、面接への同行などの就職活動のサポートのほか、働いた後の定着支援も行っています。標準利用期間は2年間ですが、状況によっては最大1年間の利用期間延長もあります。
就労継続支援と違って事業所内で働くわけではなく、給与や工賃はありません。また、前年度の世帯収入によっては利用料金がかかる場合もあります。障害者手帳がなくても利用できることもありますが、自治体の判断にもよるため、気になることがある方は自治体の障害福祉窓口で確認してみるといいでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/1-4-2.pdf
参考:障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス|厚生労働省
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職場適応訓練とはハローワークの紹介により実際の職場で訓練を行うことで作業環境への適応を促進し、スムーズな就職に結びつけることを目的とした障害者雇用促進法における制度のことです。
利用者には雇用保険の基本手当などが支給され、企業には訓練費の支給があるなど、双方にメリットがある制度となっています。訓練期間は原則6か月以内ですが、重度障害のある人や中小企業で訓練を受ける場合などは1年以内となっています。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/d02-1.html
参考:職場での訓練を受け入れる時は職場適応訓練費|厚生労働省
自立訓練とは地域で自立した生活を営むための訓練やリハビリテーションなどを提供するサービスです。
自立訓練の中にはさらに機能訓練と生活訓練の2種類があり、機能訓練ではリハビリテーションなど身体機能の維持回復を目的としたサービスが多く、生活訓練では金銭管理やコミュニケーションなどの生活し得ていくために必要となる知識やスキルの取得のサポートが多くなっています。
主な目的は生活に必要なスキル取得などですが、就職のための自己分析や就職活動のサポートなどを行っている事業所もあるほか、自立訓練卒業後の進路として就労移行支援や就労継続支援を選択する人もいます。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0604-7b_0008.pdf
参考:自立訓練(生活訓練)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000521833.pdf
参考:「自立訓練(機能訓練、生活訓練)の実態把握に関する調査研究」報告書|厚生労働省
障害のある人の働き方って?【3.障害者雇用/一般就労】
ここでは障害のある人が選択できる働き方についても紹介します。
障害者雇用とは障害者雇用促進法に基づいて、企業が従業員に対して一定の割合で障害のある人を雇用する制度のことです。この割合は法定雇用率と呼ばれており、2025年度の一般企業の法定雇用率は2.5%となっており、2026年には2.7%となることが決まっています。あらかじめ障害のことを伝えて就職するので、働く側にとっては特性に応じた配慮が受けやすいといった特徴があります。ただ、障害者雇用で働くには障害者手帳の取得が条件となっているため、取得していない場合は障害福祉窓口や主治医などにご相談ください。
また、障害者雇用と合わせて特例子会社という言葉を聞いたことがある人もいると思います。特例子会社とは障害のある人が働くための一定の条件を満たした子会社のことで、特例子会社で障害のある人を雇用した場合は親会社の雇用とみなされます。
働く側にとっては、自分以外にも障害者雇用で働く人が多く、配慮などの整備が整っているというメリットがあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html
参考:事業主の方へ|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001039344.pdf
参考:令和5年度からの障害者雇用率の設定等について|厚生労働省
障害のある人が一般企業や公的機関などと雇用契約を結んだうえで働くことを、一般就労と呼んでいます。障害者雇用と異なり、基本的にほかの従業員と同じ勤務条件で働く雇用形態です。
ただ、一般就労でも職場に障害を伝えて働く方法もあります。この場合も、合理的配慮自体は受けることが可能ですが、障害者雇用と比べて職場の環境が整っておらず希望通りとはいかない場合もあります。
障害者雇用、障害を開示しない一般就労、障害を開示した一般就労、いずれもメリットデメリットがあるため、働き方で迷っている方はハローワークなどの支援機関で相談してみてもいいでしょう。
https://www.pref.tokushima.lg.jp/hattatsu/hanamizuki/5018243/5018535/
参考:働き方を考えよう|徳島発達障がい総合サイト
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000083347.pdf
参考:合理的配慮指針(概要)|厚生労働省
就労後に受けられる支援って?就労定着支援とジョブコーチ支援とは
障害のある人への就労支援は就職するまでだけでなく、就職した後に安定して働くことを目的とした支援もあります。
就労定着支援とは就労移行支援などを利用して就職した人を対象に、長く安定して働くことを目的としたサービスです。
定期面談や職場での困りごとがあった際の調整などを行い、必要に応じて企業側へ働きかけも行います。
就職後すぐに受けることができるわけではなく、6か月経過していることが利用の要件となっています。また、就労定着支援の利用期間は最大3年間となっており、終了後は地域の支援機関などに引継ぎが行われます。
https://www.mhlw.go.jp/content/001240305.pdf
参考:就労定着支援の実施について|厚生労働省
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/06_31teityaku-nagare
参考:障害福祉サービスにおける定着支援の流れイメージ|東京都福祉局
ジョブコーチ支援とは障害のある人が就職後に職場で働きやすくなるように、専門の職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣するサービスです。ジョブコーチは障害のある人の特性や職場の状況に応じて、本人や職場の人にアドバイスなどを行い、職場定着を促していきます。利用する場合の窓口はこのあと紹介する地域障害者職業センターです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html
参考:職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について|厚生労働省
就労に関する支援サービスってどんなものがあるの?
障害のある人が活用できる就労支援サービスはほかにもありますので、代表的な支援機関を紹介します。いずれの機関も基本的に障害者手帳がなくても相談できるので、働くことに悩んでいる人は一度問い合わせてみてもいいでしょう。
障害者就業・生活支援センターとは障害のある人の就職と生活両方の支援を行っている機関です。地域によって「なかぽつ」や「しゅうぽつ」とも呼ばれています。
就職については訓練の提供や特性などに応じたアドバイス、ハローワークなどの機関と連携した支援などを行っています。生活に関しては体調管理や金銭管理、住む場所についてなどの困りごとに対してさまざまな支援を行っています。
地域障害者職業センターは専門的な職業リハビリテーションを提供している支援機関です。相談に対して職業評価を行い、計画を作成したうえで訓練を提供するなど、就職に必要な支援を行っています。
また、事業主に対しても障害者雇用に対するアドバイスなどを実施し、障害のある人が働きやすい環境をつくる役割も担っています。先ほど紹介したジョブコーチ支援も地域障害者職業センターの担当です。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/pdf/77.pdf
参考:地域障害者職業センターの概要|厚生労働省
ハローワークには障害のある人専門の窓口が設置されています。専門のスタッフが一人ひとりの特性や希望に合わせた求人の紹介や応募書類の添削など、一貫したサポートを実施しています。また、障害者トライアル雇用等の情報提供や就職面接会の開催など、障害のある方の就職に関する施策も行っています。
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/member/sy_guide.html
参考:障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス
18歳以上の障害のある人の就労支援は数多くある
今回紹介してきたように、18歳以上の障害のある人が活用できる就労支援は数多くあります。一般企業への就職や自立した日常生活を送るためなど、サービスによって目的や支援内容も異なっているため、今後の希望や本人の状況も考慮して選択していくことが大切です。
どういったサービスが合うか分からないという場合は、現在受けている支援があればそのスタッフなどに相談するか、自治体の障害福祉窓口、相談支援事業所などに相談してみるといいでしょう。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。