発達障害息子の夏休みと仕事の両立で限界…!8時間働くにはどうしたら?シングルマザーの苦悩【読者体験談】
終わりが見えない長期休みの戦い
現在10歳の息子は、2歳でASD(自閉スペクトラム症)と中等度知的障害(知的発達症)の診断を受けました。性格は明るく、大人と遊ぶのは上手なのですが、子どもとの関わりは難しく、母親への依存が強いのではと感じています。食べられるものが数えるほどしかない極度の偏食で、給食が食べられないためお弁当を持参しています。身辺自立も4~5歳児程度、もうすぐ思春期に入る時期ですが、現在も腕枕付きの添い寝が欠かせません。
夏休みなどの長期休みが始まると、私の心は重くなります。フルタイムで働くひとり親の私にとって、長期休みは本当に地獄のような日々だからです。
息子が通っている放課後等デイサービス(放デイ)の預かり時間は10時から16時まで。この時間設定を見るたび、私は思わずにいられません。
「明らかにフルタイムで働く想定ではない……」と。
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リモートワークでも「仕事にならない」現実
私は残業も多いリモートワーク可の企業に勤務しています。普段は出社していますが、長期休暇中は、放デイに通っていても送り迎えや移動時間的に毎日リモートワークにならざるを得ません。
通常は8時30分頃に業務を開始するのですが、長期休み中は息子の放デイへの送り出しがあるため、8時45分から9時頃にスタート。9時30分から10時の間に放デイのお迎えで息子が出発し、16時から17時の間に自宅まで送ってきてもらいます。
息子が帰宅してからが、本当の戦いです。
すぐにおやつを、続けて夕飯を食べるのですが、息子はいつも動画を見ながら食事をします。繰り返し同じような音の出る動画が好きなため、音量を上げて繰り返し見ているのですが、電車のガタンガタンという音やエレベーターのピンポーンという音が鳴り続く中、私は熟考して作成しなければならない資料作成や、システムトラブルの調査、チャット対応をこなさなければなりません。
「ママお仕事中だからお話できないよ」と伝えても、たびたび呼ばれます。「ふりかけかけて」「お茶入れて」「ごはんもっと」「鮭焼いて」……繰り返しの要求にすぐ応えることはできないですし、仕事の方も集中して業務に取り組めません。
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結果として、読み間違いや記載ミスをしてしまうことにもつながるため、ほかの人に任せることになったり、「明日息子が家にいない時間にやるしかないか……」と諦めたりすることが日常になっています。
時短勤務だと収入が不安。シングルマザーの苦悩
時短勤務にできれば今より楽にはなりますが、ひとり親で中途半端に稼いでいるといろいろな控除もつかず、収入を下げる道を選ぶのにも不安を感じ、フルタイムを辞められません。
現状、放デイから夕方に学校でやっている学童に送迎してもらい、18時頃学童に迎えに行くこともできるのですが、そうすると18時前に仕事を終了しなければいけません。それならば、放デイに自宅への送迎をしてもらうほうが、就業時間を確保できます。
また、ただでさえ毎日忙しいのに、複数箇所の調整になると大変ですし、調整ミスが起こると大変です(実際に調整ミスも経験しています)。
長期休み、みんなどうしているんだろう?と思わずにはいられません。
障害児育児をする親でも、キャリアを諦めなくて済むためには
もちろん放デイには心から感謝しています。息子は放デイへとても楽しく通っており、学校ではお友だちがいませんが、放デイでは気の合う子が数名いて楽しく遊んでいます。また、偏食のためお弁当は白飯にふりかけだけでしたが、おかずを食べる練習をしてくれ少しずつ食べられるようになりました。また、トイレトレーニングを成功させてくれたのも放デイです。
しかし、特に長期休み中の預かり時間の短縮で、仕事と子育ての両立に困っていることも事実です。放デイへの補助などを増やし、事業所のリソース不足も解消され、預かり時間が延長してもらえたなら……。ひとり親の私が障害児を育てながらでも8時間働ける環境が欲しいのです。
産休育休は整備されてきましたが、一生続く障害児育児への対応は置き去りなのでは?と感じてしまいます。
控除は所得制限で受けられず、収入を上げると手当も停止されるという、働く意欲を削ぐような制度、そして、体に鞭打って無理して働いている現状、身体やメンタルは正直健康とはいえません。このまま病気にならずに子育てしていけるだろうか。将来、社会から離脱しそうな自分自身が不安でなりません……。
発達障害のある子どもを育てながらフルタイムで働く現実は、想像以上に厳しい
それでも、息子への愛情は変わりません。仕事と家庭の両立が難しくて、ついイライラして対応がおざなりになったり、適当な返事をしたりすることもありますが、ちゃんと愛されている安心感を持っていてほしいと願っています。できないことをできるようにするよりも、得意なこと、好きなことをとことん突き詰めてほしい。その手伝いを十分してあげられる時間的余裕がないのが申し訳ないのですが……。
息子は生まれつき記憶力が良いところがあります。
親なきあとも、私との良い思い出と一緒に生きていけるように、今のうちにとにかく楽しい記憶でいっぱいにしてあげたいと心から思っています。
でも、発達障害のある子どもを育てながらフルタイムで働く現実は、想像以上に厳しいと思います。同じような状況で頑張っている保護者の方々に、「あなただけではない」ということを伝えたい。そして、社会全体が障害児育児の現実を理解してくれ、働く親を支える制度が充実することを切に願っています。この声が届き、すべての親が子どもを愛しながら、自分らしく働ける社会になることを信じて、今日も息子と向き合っていきたいと思います。
イラスト/もっつん
エピソード参考/toitoitoi
(監修:室伏先生より)
放課後等デイサービスや児童発達支援の預かり時間がニーズを満たさない現実や、制度上の控除や手当の制限による経済的問題について、発達障害(神経発達症)のお子さんをもつ保護者の方にはこのような課題に直面されている方が少なくないと思います。これらの課題に関して、ご自身の経験やお気持ちを交えて、具体的に共有をいただき、ありがとうございました。これらの課題が少しでも軽減され、誰もが安心して子育てができる社会になることを心から願っています。
また、お仕事を安心して続けていけるということのほかに、親御さんご自身の休息や気分転換の時間を確保することもとても大切なことだと思います。発達障害(神経発達症)のお子さんをサポートする私たちは、その大切さを常に心に留め、親御さんが安心して休息がとれる環境づくりにも力を注いでいかなければならないと感じています。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。
論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。