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【3歳児の癇癪】息子の癇癪が止まらない!自閉症診断、療育で知った「見通し不安」。知識が実感に変わった息子の一言【読者体験談】

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ニコニコから急変、突然の癇癪


  • ASD(自閉スペクトラム症)診断前後に見られる「ナゾ癇癪」の具体的なエピソード
  • 「見通し不安」や「予定変更」が苦手な子への具体的な環境調整のヒント
  • 親が子どもの特性を「知識」から「実感」として理解するまでのプロセス


お子さんのプロフィール
  • 年齢:6歳
  • 診断名:ASD(自閉スペクトラム症)
  • エピソード当時の年齢:3歳頃

息子と公園でたくさん遊んだ帰り道、コンビニが目に入り、私がお菓子を買いたくて「ママお菓子買いたいな、息子くんも買う?」と何気なく聞いたところ、いきなり全身でイヤイヤを表しながらワーワー騒ぎ出してしまいました。「嫌ならいいよ、コンビニ寄らずに帰ろう」と言うも泣き止まず、手がつけられない状態に。結局、泣き止むことはなかったため、コンビニには行かず無理やり帰り、楽しかったお出かけが台無しになってしまいました。

【3歳児の癇癪】息子の癇癪が止まらない!自閉症診断、療育で知った「見通し不安」。知識が実感に変わった息子の一言【読者体験談】

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日常に潜むナゾの癇癪スイッチ


このようなナゾ癇癪は他にもありました。

  • 行ったことのない飲食店にはかたくなに入りたがらない(たとえ看板に息子の好きな料理が描かれていても)
  • おもちゃを買ってもらったドライブ後、家へ帰る道だと分かると大絶叫(帰ったらそのおもちゃで遊べるのに)
  • 楽しみなお出かけ前「お着替えするよ」の言葉に泣きわめく

どれも、息子にとってポジティブなことのはずです。息子が好きなものを食べようと思って選んだお店だったり、行きたいところに出発するための着替えだったり、息子にとっていいことばかりなのに癇癪をおこされることが心底理解できませんでした。どこにあるか分からない癇癪スイッチに、当時の私はただただおびえ、新しい飲食店を開拓したり、ドライブすること自体が億劫になっていきました。

転機は「診断や療育」。ただ、知識と現実は違った


その後、医療機関で「療育が必要です」と言われ、実際に児童発達支援に通うようになったことで、「息子には息子に合ったサポートが必要なのだ」と理解し、少しずつ私の知識も増えていったように思います。
支援者の方からのアドバイスやASD(自閉スペクトラム症)に関する書籍などから、癇癪スイッチは「見通し不安」や「予定変更が苦手」という理由からきているのかな、と予想を立てることができました。そこで、お出かけする前に「1公園、2スーパー」のように予告(指の数+口頭で)してから出発する、飲食店の写真を見せて「今日はここに行くよ」と視覚的に示すなどいろいろ試すようになりました。うまくいくこともあれば、やっぱりスイッチが入ってしまうこともあり、「これだ!」という手ごたえはいまいち持てず……。知識として持っていても、「こういうときはこう!」のように、正解の対応を見つけることができず、単純にはいかないのだなとモヤモヤは晴れませんでした。

息子の一言が点をつなげてくれた


まったく発語がなかった頃から、少しずつ言葉が出てきて短い言葉なら会話できるようになった5歳ごろのドライブで、合点がいったできことがありました。

息子の大好きなドライブ中、ふとスーパーが目に入り(あ、卵買わなきゃ)と思い、夫に「ごめん、そのスーパー寄ってくれない?」と声をかけたとき、息子が「まま、きゅうにいっちゃった!」と怒りだしたのです。ハッとしました。「急」な「予定変更」ってこういうことか。
私のなかで、どこかに行った後ついでにスーパーに寄ることはよくあるし、家族でその経験も何度もしています。だから、私にとっては「気にも留めない想定内(しかも息子にはあまり関係ないだろう)」。でもそれが、息子にとっては耐えがたい「急な予定変更」だったのです。これまで「見通し不安」「予定変更が苦手」という言葉をどこか「私視点」で考えていたのだな、ということに気づかされました。

例えば冒頭の「ドライブ後、家に帰る道中」で癇癪をおこした場面、当時はなんとなく「まだドライブがしたかったのかな?」と予想をしましたが、それよりも「ドライブしてたのに急に家に帰ることになった」という息子にとっての予想外が原因だったのかもしれません。

腹落ちしてからの環境調整


息子の特性について腑に落ちたからと言って、もちろん完全に癇癪がなくなったわけではありません。6歳現在でも、絶賛「きゅうにいっちゃダメ!」を連発されています(笑)。ただ、癇癪スイッチがまったく分からなかった頃よりは明らかに減りましたし、「こういえば伝わる」と息子自身も理解したのか、そこまで激昂しなくなったように感じます。
今している環境調整としては……

1ページ1か月のカレンダーに、保育園や児童発達支援など決まっている予定はもちろん、「パパもいる」などちょっとしたイレギュラーもカレンダーに書き込んでいます。(以前、帰宅したら家に在宅勤務中の夫がいて癇癪になったことがあったので……)また、前日でも当日でも変更があったときは必ず説明しながら取り消し線や新しい予定を追記します。

その日の予定が終わったら、予定に取り消し線、日付に○をつけて、明日の予定を読み上げます。カレンダーの見栄えは悪くなりますが、予定を消すことで次(明日)がどこか分かりやすくするためです。(最初、数字に×を書いたら「それはダメ」と言われました)

例えば、息子にとって切り替えが難しい「登園準備」の場面では、ホワイトボードに「(時計の針が)5になったらおきがえ」と書いて見せます。息子の場合、耳よりも目からの情報が断然入りやすく、ちょっとしたことでも文字で見せています。(蛇足ですが、ホワイトボードを見せると一度は「ほいくえんイヤ!」など嫌がることはあるものの、「そっか、分かったよ」と言ってそのまま見えるところにホワイトボードを置いておくと、自分で時間を見ながら切り替えられることが多いです。超視覚優位&ルールは守る特性ゆえかなと思っています)

【3歳児の癇癪】息子の癇癪が止まらない!自閉症診断、療育で知った「見通し不安」。知識が実感に変わった息子の一言【読者体験談】

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例えば、前段のようについでにスーパーに寄りたくなったら、「あ、うっかりしてて卵買うの忘れてた!息子くん、おうちの前にスーパー寄ってもいい?」と、まずは予定変更をしたい経緯から丁寧に伝えます。
「いいよ」となれば、お礼と予定変更を受け入れられたことを褒めた上で向かいます。もし「イヤだ」と言われたら「そうだよね、予定変更ごめんね。じゃあ車でパパと待ってて、それならいい?」など息子にとっての妥協点を探します。

もしまったく妥協できなかったとしても、ついでに行きたかった程度の場所なので(絶対に行きたい場所は確実に予告するようになりました)、次の機会にしようと無理強いはしないようになりました。

例えば、どんなに息子が楽しみにしている予定でも、着替えるタイミング(何時に家を出るのか)は伝えます。まだ「早く行きたいから自分で率先して着替える」というような成長段階には至っておらず、出発する時間に「行くよ」だけだと、やはり急に言われたとなってしまうためです。息子にとって、「おいしいもの」より「不安」の方がはるかに勝ると理解したので、挑戦自体が減りました。「いつも行く商業施設のフードコート前を通ってみる→中に入ってお店や座席の様子をチェック→その中で食べたことのあるチェーン店のお店で注文してみる」というように、少しずつステップを踏んだり、ものすごく調子がよさそうなときに「入ってみる?」と聞いてみたり、期待せずに試しています。


原因の分からない癇癪にもちゃんと「理由」がある


当時を振り返ると、原因の分からない癇癪には息子なりの理由があったなと改めて思います。また、知識があっても簡単に理由が分かる訳でもなく、トライ&エラーを繰り返しながら少しずつ向き合っていく時間も必要でした。息子を理解しようと努力しつつ、「伝えたい」という思いを逃さず受け止められるように、これからも向き合っていきたいと思います。

イラスト/よしだ
エピソード参考/かかっきー

(監修:新美先生より)
お子さんの、理由の分からないナゾ癇癪についての、理由と対策を見つける過程について教えて下さりありがとうございます。

自閉スペクトラム症のお子さんは、本人にとって許容できないことがあったとき、表現方法が未熟な段階ではいきなりの癇癪という形に表すことはよくあります。言葉も未熟ながら自己主張が出せるようになった幼児期にはよくありますよね。記事の中にあったように、診断名が分かって、病院や本の知識などで「見通しが持てないと不安になる特性がある」と言われても、それがうちの子のどのような行動に結びついているのか、どう対応したらいいかまで分かるものでもなく、そこから試行錯誤が始まりますね。

記事で解説していただいたように、大人が“ついで”や“ちょっと寄り道”と感じる変化でも、子どもにとっては「急な予定変更」であり、予測していた流れが崩れることで大きな不安につながります。
発語が増え、息子さんが「きゅうにいっちゃダメ!」と自分の言葉で伝えてくれた瞬間は、まさに点と点がつながるような気づきだったのだろうと感じました。

「見通し不安」への対応は、頭で知識として分かっていても、日常の中で“実感”できるまでには時間がかかります。試してもうまくいかない日もあり、その積み重ねが自然とストレスにもなります。そんな中で、ホワイトボードの活用や、カレンダーで予定を“見える化”する工夫、予定変更の際の丁寧な説明など、息子さんに合わせた環境調整を少しずつ積み上げてこられたことは、本当に素晴らしい取り組みです。特性や対処法の知識を得ながら、うちの子が「なぜ困っているのか」「どうすれば安心できるのか」を親子で一緒に探し、子ども自身も少しずつ“伝え方”や“折り合いのつけ方”を身につけていくことが、まさに成長そのものですね。「ナゾ癇癪」と原因が分からなかったことが、お子さんの様子を観察し、発してくれる言葉から、お子さんの思いが見えてくる過程がとても素敵だと思いました。親子が時間をかけて理解し合っていくプロセスこそ、発達特性のある子どもを支えていくうえで大事な時間ですね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。
現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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