私、過干渉だった?ASDの息子に合った「距離感」。トラブル、不登校から「高専」合格へ【読者体験談】
お子さんのプロフィール
息子は本来とても優しく、生真面目な性格です。一方で、感情のコントロールが難しく怒りっぽい面もあり、社交的なタイプではありませんでした。集団生活の中でどう振る舞えばいいのか、彼なりに苦しんでいたのだと思います。
2歳から通い始めた保育園で、先生から毎日のように息子への困りごとを言われていた頃、私はどこか他人事として聞き流していました。「子どもなんだからしょうがないのでは?」と。
しかし、小学校入学前に園長先生から勧められた視察をきっかけに「発達障害」「特性」の存在を知り、ショックから診断を拒絶しました。あんなに元気で素直な息子が、どこか人と違うのか?と。
そして小学校入学初日、トラブルが起きました。
ほかのお子さんに怪我をさせ、相手の親御さんの気持ちを思うと申し訳なさと怒りが込み上げてしまい、どうしても息子に寄り添うことができませんでした。つい激しく息子をしかりつけましたが、静かになった部屋で寝顔を見ると「なぜあんなに怒ってしまったのか」と涙があふれます。自責の念に駆られるも正解が分からず、悶々と悩み過ごす毎日でした。
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小学4年生でようやく障害を受け入れましたが、不登校も始まり、勉強への不安も募っていました。そんな時、発達障害のある子の保護者向けのセミナーで「高専(高等専門学校)」が特性に合っていると知りました。
主治医からも「偏差値を上げて私立の中学受験をすれば、トラブルも減るはず」とアドバイスを受けてはいたのです。けれど、これまでの混乱した日々を思うと、「この子がそこまでできるだろうか」と、私自身が息子の可能性を信じてあげられずにいました。
そんな時、通りすがりの学習塾で見かけた無料テストを息子に受けさせたところ、算数と理科が驚くほど理解できていることが判明。「セミナーで聞いた高専の特性」と「テストで見えた息子の得意」が、私の中でピタリと合致した瞬間でした。
実際に見学へ行くと、実験やものづくりといった実践的な授業の多さに、息子は目を輝かせ「行きたい!」と即答しました。
しかし、塾探しは難航しました。「特別支援学級のお子さんはお断りしています」と、事情を丁寧に説明しても拒絶されることも……そんな中で出合ったのが、息子を快く受け入れてくれた塾の先生でした。
塾長はひょうきんな方で、息子の笑顔を増やしてくれました。
勉強の「コツ」を掴みストイックに目標へ
こうして自信を取り戻していく一方で、残っていた課題が「試験勉強のやり方」でした。息子は学校の授業は分かっていると言い張るものの、なぜかテストでは高得点が取れずもどかしさを感じていたのですが、実は、「何をどう勉強すればいいのか」が自己判断できず、その聞き方すら分からなかったのです。
塾で具体的な対策プリントや模試をこなすうちに、「教科書の隅まで読まなければならない」といったコツを掴んだ息子は、だんだんと変わっていきました。
大好きな卓球のクラブも直前まで続けながら、塾が開いている間は毎日通い詰め、近くのコンビニでおにぎりを食べてまた戻る。「高専合格」という明確な目標に向かって、ストイックに突き進む姿がありました。そして、息子は見事に合格を勝ち取ったのです。
高専入学を機に、息子は私の実家で私の母と二人暮らしをすることになりました。私は「怒りのスイッチが入って暴れたりしないか」と不安が募りましたが、同時に「私のいない環境なら案外頑張ってくれるのではないか」という期待もありました。離れての暮らしで気づいたのは、私自身が「過干渉」になっていたことです。夫の単身赴任でワンオペ状態だったこともあり、物を散らかしっぱなしの息子にイライラし、待つことができずに私が片づけてしまうなど、余裕がなかったのです。
久しぶりに会った息子は、中性的だった顔立ちが青年らしくなり、流暢で論理的な話し方をするようになっていました。私の心配をよそに、自分の世界をしっかり築いていたのです。
一つでも「できたこと」を見つけて
かつての私のように、毎日のトラブルに頭を抱えている方に伝えたいことがあります。 「怒る」「しかる」は、あまり効果がありませんでした。
今は、息子から「友だちと映画に行く」「お祭りに行く」という報告があるだけで、今までの息子ではあり得なかった光景だとうれしくなります。
干渉ではなく、サポートを。何か一言発する前に、ぐっと飲み込んで考える。たくさんできたことを見つけて、笑顔を大切にして――子ども時代はあっという間だから、怒ることは最小限でいいのだと、今の私はそう思っています。
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イラスト/もっつん
エピソード参考/みー
不安やご自分を責める気持ちの中で、お子さんの可能性を信じて頑張ってこられたのですね。
発達特性をもつお子さんでは、感覚過敏や社会的認知のズレといった特性から、「問題行動」と言われてしまう行動が見られることがあります。
一方、得意なことを把握して、環境調整をしっかり行ってあげると、うまく力が発揮できるようになります。
算数や理科など興味を持てる分野があれば、そこを評価して伸ばしてくれる場を探しましょう。自己効力感を得られて前向きな姿勢でがんばることができます。
保護者の方は、お子さんを心配する気持ちからどうしても過保護になりがちです。過保護ならまだしも、過干渉になってしまうとお子さんの自立の芽をつんで自主性を育てられなくなってしまいます。
お子さんの成長には、植物を育てるようなイメージを持つといいのではないでしょうか。「頑張って直す」よりも、「合う環境を考える」という視点を持つといいかもしれません。
お子さんの強みを意識して、環境調整を行い、関わり方を工夫するのです。
強みというのはテストの点数や成績だけではありません。どんな時に、どんなことに集中できるのかを見てみましょう。お子さんの興味が向くものを見つけるといいですね。
刺激の多い場所が苦手なら静かなクラス、対人負荷が高いなら少人数環境など、「合う場所」を選ぶようにしましょう。ほかの子と比較したり、ほかの子に合わせる必要はありません。学校や塾選びでは「理解があるか」「お子さんがそこを気に入るか」を基準に判断するといいですね。
また、状況によってお子さんと物理的・心理的な距離を調整することも大切です。
実家から通学する、一人暮らしをする、合宿に行く、家でなく自習室を使うなど、その時その時の状況に応じて親子の距離感を調整することもひとつの手です。
うまくいっていない時期は、先が分からなくて不安ですよね。そんなとき、親子があまりにも近くにいるとお互いにプレッシャーを感じてしまうこともあるのです。
放置するということではなく、距離を調節しながら見守るということも大切です。
親子ともども自分らしくのびのびと過ごせることを願っています。 (監修:医師・公認心理師森しほ先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
- 年齢:16歳(高校2年生)
- 診断名:ASD(自閉スペクトラム症)
- 診断時期:小学4年生
- エピソード当時の年齢:幼少期〜高校1年生
毎日の電話に絶望……この子は平凡に過ごせないのか
息子は本来とても優しく、生真面目な性格です。一方で、感情のコントロールが難しく怒りっぽい面もあり、社交的なタイプではありませんでした。集団生活の中でどう振る舞えばいいのか、彼なりに苦しんでいたのだと思います。
2歳から通い始めた保育園で、先生から毎日のように息子への困りごとを言われていた頃、私はどこか他人事として聞き流していました。「子どもなんだからしょうがないのでは?」と。
しかし、小学校入学前に園長先生から勧められた視察をきっかけに「発達障害」「特性」の存在を知り、ショックから診断を拒絶しました。あんなに元気で素直な息子が、どこか人と違うのか?と。
そして小学校入学初日、トラブルが起きました。
お絵かきの時間に近くの席の子から「下手くそ」と言われ、息子の怒りが爆発。相手の顔を引っかいてしまったのです。その後も、校舎見学中にジャングルジムから一人で降りてこず佇んでいたり、学校や学童クラブからの電話が鳴り止まない日々に、私は「わが子は平凡に過ごせないのか」と絶望していました。
ほかのお子さんに怪我をさせ、相手の親御さんの気持ちを思うと申し訳なさと怒りが込み上げてしまい、どうしても息子に寄り添うことができませんでした。つい激しく息子をしかりつけましたが、静かになった部屋で寝顔を見ると「なぜあんなに怒ってしまったのか」と涙があふれます。自責の念に駆られるも正解が分からず、悶々と悩み過ごす毎日でした。
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「高専」という選択肢と、得意を伸ばせた環境
小学4年生でようやく障害を受け入れましたが、不登校も始まり、勉強への不安も募っていました。そんな時、発達障害のある子の保護者向けのセミナーで「高専(高等専門学校)」が特性に合っていると知りました。
主治医からも「偏差値を上げて私立の中学受験をすれば、トラブルも減るはず」とアドバイスを受けてはいたのです。けれど、これまでの混乱した日々を思うと、「この子がそこまでできるだろうか」と、私自身が息子の可能性を信じてあげられずにいました。
そんな時、通りすがりの学習塾で見かけた無料テストを息子に受けさせたところ、算数と理科が驚くほど理解できていることが判明。「セミナーで聞いた高専の特性」と「テストで見えた息子の得意」が、私の中でピタリと合致した瞬間でした。
実際に見学へ行くと、実験やものづくりといった実践的な授業の多さに、息子は目を輝かせ「行きたい!」と即答しました。
しかし、塾探しは難航しました。「特別支援学級のお子さんはお断りしています」と、事情を丁寧に説明しても拒絶されることも……そんな中で出合ったのが、息子を快く受け入れてくれた塾の先生でした。
塾長はひょうきんな方で、息子の笑顔を増やしてくれました。
数学が得意なことを理解し、「(この塾は)高い偏差値のクラスが静かだから、そちらに参加してはどうだろう」と、息子が落ち着ける環境を整えてくれました。そこで数学が得意なことを「発表」などの形で表現させてもらえたことで、息子の自己肯定感は徐々に高まっていったのです。
勉強の「コツ」を掴みストイックに目標へ
こうして自信を取り戻していく一方で、残っていた課題が「試験勉強のやり方」でした。息子は学校の授業は分かっていると言い張るものの、なぜかテストでは高得点が取れずもどかしさを感じていたのですが、実は、「何をどう勉強すればいいのか」が自己判断できず、その聞き方すら分からなかったのです。
塾で具体的な対策プリントや模試をこなすうちに、「教科書の隅まで読まなければならない」といったコツを掴んだ息子は、だんだんと変わっていきました。
大好きな卓球のクラブも直前まで続けながら、塾が開いている間は毎日通い詰め、近くのコンビニでおにぎりを食べてまた戻る。「高専合格」という明確な目標に向かって、ストイックに突き進む姿がありました。そして、息子は見事に合格を勝ち取ったのです。
過干渉を卒業し、見守ることで見えた息子の自立
高専入学を機に、息子は私の実家で私の母と二人暮らしをすることになりました。私は「怒りのスイッチが入って暴れたりしないか」と不安が募りましたが、同時に「私のいない環境なら案外頑張ってくれるのではないか」という期待もありました。離れての暮らしで気づいたのは、私自身が「過干渉」になっていたことです。夫の単身赴任でワンオペ状態だったこともあり、物を散らかしっぱなしの息子にイライラし、待つことができずに私が片づけてしまうなど、余裕がなかったのです。
久しぶりに会った息子は、中性的だった顔立ちが青年らしくなり、流暢で論理的な話し方をするようになっていました。私の心配をよそに、自分の世界をしっかり築いていたのです。
一つでも「できたこと」を見つけて
かつての私のように、毎日のトラブルに頭を抱えている方に伝えたいことがあります。 「怒る」「しかる」は、あまり効果がありませんでした。
小学校1年生の時、ランドセルの中身を全部忘れて帰ってきた息子に、翌日鉛筆が1本入っていただけで「1本だけど持って帰ってこれたね!」と不本意ながらも抱きしめたことがあります。すると翌日は筆箱、その次は……と、少しずつ改善していきました。
今は、息子から「友だちと映画に行く」「お祭りに行く」という報告があるだけで、今までの息子ではあり得なかった光景だとうれしくなります。
干渉ではなく、サポートを。何か一言発する前に、ぐっと飲み込んで考える。たくさんできたことを見つけて、笑顔を大切にして――子ども時代はあっという間だから、怒ることは最小限でいいのだと、今の私はそう思っています。
Upload By ユーザー体験談
イラスト/もっつん
エピソード参考/みー
不安やご自分を責める気持ちの中で、お子さんの可能性を信じて頑張ってこられたのですね。
発達特性をもつお子さんでは、感覚過敏や社会的認知のズレといった特性から、「問題行動」と言われてしまう行動が見られることがあります。
本人の努力不足のせいだと周囲から思われてしまい、しかられて自己肯定感が下がってしまうことも少なくありません。
一方、得意なことを把握して、環境調整をしっかり行ってあげると、うまく力が発揮できるようになります。
算数や理科など興味を持てる分野があれば、そこを評価して伸ばしてくれる場を探しましょう。自己効力感を得られて前向きな姿勢でがんばることができます。
保護者の方は、お子さんを心配する気持ちからどうしても過保護になりがちです。過保護ならまだしも、過干渉になってしまうとお子さんの自立の芽をつんで自主性を育てられなくなってしまいます。
お子さんの成長には、植物を育てるようなイメージを持つといいのではないでしょうか。「頑張って直す」よりも、「合う環境を考える」という視点を持つといいかもしれません。
お子さんの強みを意識して、環境調整を行い、関わり方を工夫するのです。
強みというのはテストの点数や成績だけではありません。どんな時に、どんなことに集中できるのかを見てみましょう。お子さんの興味が向くものを見つけるといいですね。
刺激の多い場所が苦手なら静かなクラス、対人負荷が高いなら少人数環境など、「合う場所」を選ぶようにしましょう。ほかの子と比較したり、ほかの子に合わせる必要はありません。学校や塾選びでは「理解があるか」「お子さんがそこを気に入るか」を基準に判断するといいですね。
また、状況によってお子さんと物理的・心理的な距離を調整することも大切です。
実家から通学する、一人暮らしをする、合宿に行く、家でなく自習室を使うなど、その時その時の状況に応じて親子の距離感を調整することもひとつの手です。
うまくいっていない時期は、先が分からなくて不安ですよね。そんなとき、親子があまりにも近くにいるとお互いにプレッシャーを感じてしまうこともあるのです。
放置するということではなく、距離を調節しながら見守るということも大切です。
親子ともども自分らしくのびのびと過ごせることを願っています。 (監修:医師・公認心理師森しほ先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。