「言葉がゆっくりなだけ」じゃない、WISC検査で知った小1娘の困りごと。通級指導教室を経て小2卒業までに見えた希望【読者体験談】
お子さんのプロフィール
娘は幼稚園時代から、ほかのお子さんに比べると言葉がゆっくりでした。
発音も少し聞き取りにくく、自分の思っていることをうまく言葉にできないことがよくありました。話したい気持ちはあるのに、途中で言葉がつまってしまったり、何を言いたいのか周りに伝わりにくかったりすることもありました。
私自身、「もしかして発達に何かあるのでは」と感じることはありました。園の先生に「うちの子、発達障害ではないでしょうか」と相談したこともあります。
けれど、先生方からは「そんなことはないと思いますよ」と言われていました。
園生活の中で大きなトラブルがあったわけではなく、激しい癇癪があるわけでもありませんでした。泣きわめくことも少なく、家でも園でも、いわゆる“困った行動”が目立つタイプではなかったのだと思います。
年長の終わりになっても、ひらがなは読めず、書くこともできませんでした。
でも私は、「小学校に入ってからやればいいかな」と思っていました。
就学前健診でも、周りのお子さんより少し幼い気がすることは伝えましたが、そのまま通常学級へ進学することになりました。
小学校に入学してからの娘は、学校に行き渋ることもなく、毎日通っていました。
ただ、「学校がすごく楽しい」という感じでも、「つらい」と言うわけでもありませんでした。本人にとっては、学校は“行くものだから行っている”というような雰囲気でした。
「今日、学校で何が楽しかった?」
「嫌なことはなかった?」
そう聞いても、娘はあまり話してくれません。忘れてしまうのか、言葉にするのが難しいのか、特に詳しい話は出てきませんでした。
それでも、毎日学校には行けていましたし、先生からも特に連絡はなかったため、私は「大丈夫なのかな」と思っていました。
そんな中、1年生の7月に初めての個人面談の日を迎え、担任の先生から思いがけない話を聞かされます。
体育の時間、縄跳びがうまくできなかったときに、娘が1人で体育館で泣き続けたことがあったというのです。私はとても驚きました。
娘は、家ではあまり泣くことがありません。幼稚園でも、癇癪があると聞いたことはありませんでした。
「学校でだけ、そんな姿があったの?」
「それとも、私が気づいていないだけで、娘はずっと困っていたの?」
そう思うと、ショックでした。
先生から教えてもらった「通級指導教室」という選択肢
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その個人面談で、担任の先生から「通級指導教室というものがあるんです」と勧められました。
先生の説明では、通級指導教室は通常学級に在籍しながら、週に1、2時間ほど、教室とは別の場所で先生に見てもらう場とのことでした。子どもが困っていることを少しでも減らせるように、個別に指導してもらえるのだと。
先生は続けて、こう話してくれました。
「私の教え子たちにも通っている子が何人もいますが、みんなすごく成長するんです。イライラしてしまうことが減ったり、落ち着いて先生の話を受け止められるようになったり。娘さんも、1、2年通ったらぐっと伸びると思います」
その言葉を聞いて、私は不思議と大きく動揺しませんでした。
幼稚園時代から、私はどこかで「娘には支援が必要なのでは」と思っていました。でも、園では大きく指摘されることはなく、通常学級に進学しました。
それが、小学校に入って初めて、学校側から具体的な支援につながる話が出たのです。
「ああ、やっぱり娘には、何か助けが必要だったのかもしれない」
そう冷静に受け止めている自分がいました。
WISC-Ⅳ検査で分かった、娘の得意なことと苦手なこと
通級指導教室を利用するにあたり、娘はWISC-Ⅳ検査を受けることになりました。7月にお願いしたのですが、予約が混んでいたこともあり、実際に検査を受けられたのは10月でした。
検査は小学校の中で行われ、私は結果が出たあとに説明を受けることになりました。
検査当日の朝、娘には「今日は通級指導教室に入るための検査があるんだよ」と伝えました。
娘は「ふーん、そうなの」と言っただけで、いつも通り学校へ。
帰ってきてから「どうだった?」と聞くと、「なんかよく分からないテストだった」と、あっけらかんとした様子です。
教室で、検査を担当した心理士の先生から説明を受けました。
まず聞いて驚いたのは、娘が泣きながら検査を受けていたということでした。途中で「できない」と言ったり、「いつになったら終わるの?」と聞いたりする場面もあったそうです。
けれど、先生が「休もうか?」と声をかけると、娘は「早く終わらせたいからやる」と言い、集中して取り組んだとのことでした。
結果を見ると、娘には得意なことと苦手なことに大きな差がありました。
言語理解や空間把握は高く、一方で短期記憶(ワーキングメモリ) や処理速度は低め。高いところと低いところの差は、40ほどありました。
「これで娘さんの得意不得意が分かりました。空間をとらえる力はとても高いですね。言語の力もあります」
私は思わず聞き返しました。
「でも、娘は話したいことをうまくまとめられません。言い間違いもすごく多いんです」
すると先生は、こう話してくれました。
「頭の中では考えられていても、口に出すときにうまく出てこないのだと思います。自分でも、言いたいことが言えずにもどかしいのかもしれません」
その説明を聞いて、私はとても驚きました。
娘は“分かっていない”のではなく、頭の中にあることを外に出すところで困っていたのかもしれない。
専門的な検査を受けることで、ただ「遅い」「幼い」と感じていた娘の姿が、少し違って見えるようになりました。
3学期から通級指導教室へ。娘にとって大好きな時間に
その後、学校側と専門職の方々の会議があり、娘は1年生の3学期から通級指導教室へ通うことになりました。通級指導教室に通い始めると、娘の様子は少しずつ変わっていきました。
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学校の中で好きな時間を聞くと、娘は「通級」と答えるようになりました。先生がとても優しく、通級指導教室の時間が楽しいのだそうです。
1対1で向き合ってもらえること。
できたことを褒めてもらえること。
自分のペースで取り組めること。
それが娘にはとても合っていたのだと思います。
その後、「個別指導計画」を作成していただき、娘が伸ばしていきたいところとして、ソーシャルスキルがあげられました。それに合わせて、通級指導教室の中で支援をしていただくことになりました。
娘は2年生の終わりで通級指導教室を卒業しました。
私は正直、「もう1年通ってほしい」と思っていましたが、先生方からは「もう大丈夫です」と言われました。
卒業のとき、通級指導教室の先生は、娘のフルネームを使ったあいうえお作文のお手紙をくださいました。娘はそれがとてもうれしかったようで、6年生になった今も部屋の壁に飾っています。
現在、6年生になった娘は元気に学校へ通っています。
通級指導教室を卒業してからずいぶん経ちますが、休み時間には今でも通級指導教室の先生に会いに行くことがあるそうです。
いい先生に恵まれて、本当によかったと思っています。
通級指導教室につながるまで、私はずっと「娘は困っているのだろうか」「支援が必要なのだろうか」と迷い続けていました。
でも今振り返ると、通級指導教室は娘にとって、“できないことを直す場所”というよりも、自分のペースで安心して力を伸ばせる場所だったのだと思います。
そして親である私にとっても、娘の困りごとを見つめ直し、得意なことや苦手なことを知る大切な機会になりました。
イラスト/もっつん
エピソード参考/そうめん
周囲を困らせるような行動が目立たないお子さんや、自分の気持ちを言葉にすることが苦手なお子さんの場合、本人が抱えている困りごとは周囲から見えにくいことがあります。担任の先生が学校での娘さんの姿に気づき、具体的な支援へつないでくださったことは、その後の学校生活における大きな転機となりましたね。
WISC検査は、数値だけでお子さんの能力や診断を決めるものではありません。どのような情報を理解・整理しやすいのか、どのような課題に負担を感じやすいのかなど、お子さんの認知的な特徴を知るための一つの手がかりです。検査中のお子さんの様子や、家庭・学校で見られる姿と併せて考えることで、本人に合った伝え方や学び方、必要な支援を検討するための大切な資料になります。
娘さんにとって通級指導教室が、安心して自分の力を発揮できる大好きな場所になったことは、とても大切な経験でしたね。安心して学べる環境があることを実感できた経験は、これからの娘さんの人生を支える大切な土台になっていくことと思います。(監修:小児科医室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
- 年齢:小学6年生
- 診断名:なし
- エピソード当時の年齢:幼稚園〜小学2年生
幼稚園時代から気になっていた、言葉の遅れと不器用さ
娘は幼稚園時代から、ほかのお子さんに比べると言葉がゆっくりでした。
発音も少し聞き取りにくく、自分の思っていることをうまく言葉にできないことがよくありました。話したい気持ちはあるのに、途中で言葉がつまってしまったり、何を言いたいのか周りに伝わりにくかったりすることもありました。
私自身、「もしかして発達に何かあるのでは」と感じることはありました。園の先生に「うちの子、発達障害ではないでしょうか」と相談したこともあります。
けれど、先生方からは「そんなことはないと思いますよ」と言われていました。
園生活の中で大きなトラブルがあったわけではなく、激しい癇癪があるわけでもありませんでした。泣きわめくことも少なく、家でも園でも、いわゆる“困った行動”が目立つタイプではなかったのだと思います。
年長の終わりになっても、ひらがなは読めず、書くこともできませんでした。
でも私は、「小学校に入ってからやればいいかな」と思っていました。
就学前健診でも、周りのお子さんより少し幼い気がすることは伝えましたが、そのまま通常学級へ進学することになりました。
小学校生活は問題なく見えたけれど、個人面談で聞いた意外な姿
小学校に入学してからの娘は、学校に行き渋ることもなく、毎日通っていました。
ただ、「学校がすごく楽しい」という感じでも、「つらい」と言うわけでもありませんでした。本人にとっては、学校は“行くものだから行っている”というような雰囲気でした。
「今日、学校で何が楽しかった?」
「嫌なことはなかった?」
そう聞いても、娘はあまり話してくれません。忘れてしまうのか、言葉にするのが難しいのか、特に詳しい話は出てきませんでした。
それでも、毎日学校には行けていましたし、先生からも特に連絡はなかったため、私は「大丈夫なのかな」と思っていました。
そんな中、1年生の7月に初めての個人面談の日を迎え、担任の先生から思いがけない話を聞かされます。
体育の時間、縄跳びがうまくできなかったときに、娘が1人で体育館で泣き続けたことがあったというのです。私はとても驚きました。
娘は、家ではあまり泣くことがありません。幼稚園でも、癇癪があると聞いたことはありませんでした。
「学校でだけ、そんな姿があったの?」
「それとも、私が気づいていないだけで、娘はずっと困っていたの?」
そう思うと、ショックでした。
先生から教えてもらった「通級指導教室」という選択肢
Upload By ユーザー体験談
その個人面談で、担任の先生から「通級指導教室というものがあるんです」と勧められました。
先生の説明では、通級指導教室は通常学級に在籍しながら、週に1、2時間ほど、教室とは別の場所で先生に見てもらう場とのことでした。子どもが困っていることを少しでも減らせるように、個別に指導してもらえるのだと。
先生は続けて、こう話してくれました。
「私の教え子たちにも通っている子が何人もいますが、みんなすごく成長するんです。イライラしてしまうことが減ったり、落ち着いて先生の話を受け止められるようになったり。娘さんも、1、2年通ったらぐっと伸びると思います」
その言葉を聞いて、私は不思議と大きく動揺しませんでした。
幼稚園時代から、私はどこかで「娘には支援が必要なのでは」と思っていました。でも、園では大きく指摘されることはなく、通常学級に進学しました。
それが、小学校に入って初めて、学校側から具体的な支援につながる話が出たのです。
「ああ、やっぱり娘には、何か助けが必要だったのかもしれない」
そう冷静に受け止めている自分がいました。
WISC-Ⅳ検査で分かった、娘の得意なことと苦手なこと
通級指導教室を利用するにあたり、娘はWISC-Ⅳ検査を受けることになりました。7月にお願いしたのですが、予約が混んでいたこともあり、実際に検査を受けられたのは10月でした。
検査は小学校の中で行われ、私は結果が出たあとに説明を受けることになりました。
検査当日の朝、娘には「今日は通級指導教室に入るための検査があるんだよ」と伝えました。
娘は「ふーん、そうなの」と言っただけで、いつも通り学校へ。
帰ってきてから「どうだった?」と聞くと、「なんかよく分からないテストだった」と、あっけらかんとした様子です。
そして11月、検査結果が出たとのことで、学校へ説明を聞きに行きました。
教室で、検査を担当した心理士の先生から説明を受けました。
まず聞いて驚いたのは、娘が泣きながら検査を受けていたということでした。途中で「できない」と言ったり、「いつになったら終わるの?」と聞いたりする場面もあったそうです。
けれど、先生が「休もうか?」と声をかけると、娘は「早く終わらせたいからやる」と言い、集中して取り組んだとのことでした。
結果を見ると、娘には得意なことと苦手なことに大きな差がありました。
言語理解や空間把握は高く、一方で短期記憶(ワーキングメモリ) や処理速度は低め。高いところと低いところの差は、40ほどありました。
「これで娘さんの得意不得意が分かりました。空間をとらえる力はとても高いですね。言語の力もあります」
私は思わず聞き返しました。
「でも、娘は話したいことをうまくまとめられません。言い間違いもすごく多いんです」
すると先生は、こう話してくれました。
「頭の中では考えられていても、口に出すときにうまく出てこないのだと思います。自分でも、言いたいことが言えずにもどかしいのかもしれません」
その説明を聞いて、私はとても驚きました。
娘は“分かっていない”のではなく、頭の中にあることを外に出すところで困っていたのかもしれない。
専門的な検査を受けることで、ただ「遅い」「幼い」と感じていた娘の姿が、少し違って見えるようになりました。
3学期から通級指導教室へ。娘にとって大好きな時間に
その後、学校側と専門職の方々の会議があり、娘は1年生の3学期から通級指導教室へ通うことになりました。通級指導教室に通い始めると、娘の様子は少しずつ変わっていきました。
Upload By ユーザー体験談
学校の中で好きな時間を聞くと、娘は「通級」と答えるようになりました。先生がとても優しく、通級指導教室の時間が楽しいのだそうです。
1対1で向き合ってもらえること。
できたことを褒めてもらえること。
自分のペースで取り組めること。
それが娘にはとても合っていたのだと思います。
その後、「個別指導計画」を作成していただき、娘が伸ばしていきたいところとして、ソーシャルスキルがあげられました。それに合わせて、通級指導教室の中で支援をしていただくことになりました。
娘は2年生の終わりで通級指導教室を卒業しました。
私は正直、「もう1年通ってほしい」と思っていましたが、先生方からは「もう大丈夫です」と言われました。
卒業のとき、通級指導教室の先生は、娘のフルネームを使ったあいうえお作文のお手紙をくださいました。娘はそれがとてもうれしかったようで、6年生になった今も部屋の壁に飾っています。
現在、6年生になった娘は元気に学校へ通っています。
通級指導教室を卒業してからずいぶん経ちますが、休み時間には今でも通級指導教室の先生に会いに行くことがあるそうです。
いい先生に恵まれて、本当によかったと思っています。
通級指導教室につながるまで、私はずっと「娘は困っているのだろうか」「支援が必要なのだろうか」と迷い続けていました。
でも今振り返ると、通級指導教室は娘にとって、“できないことを直す場所”というよりも、自分のペースで安心して力を伸ばせる場所だったのだと思います。
そして親である私にとっても、娘の困りごとを見つめ直し、得意なことや苦手なことを知る大切な機会になりました。
イラスト/もっつん
エピソード参考/そうめん
周囲を困らせるような行動が目立たないお子さんや、自分の気持ちを言葉にすることが苦手なお子さんの場合、本人が抱えている困りごとは周囲から見えにくいことがあります。担任の先生が学校での娘さんの姿に気づき、具体的な支援へつないでくださったことは、その後の学校生活における大きな転機となりましたね。
WISC検査は、数値だけでお子さんの能力や診断を決めるものではありません。どのような情報を理解・整理しやすいのか、どのような課題に負担を感じやすいのかなど、お子さんの認知的な特徴を知るための一つの手がかりです。検査中のお子さんの様子や、家庭・学校で見られる姿と併せて考えることで、本人に合った伝え方や学び方、必要な支援を検討するための大切な資料になります。
娘さんにとって通級指導教室が、安心して自分の力を発揮できる大好きな場所になったことは、とても大切な経験でしたね。安心して学べる環境があることを実感できた経験は、これからの娘さんの人生を支える大切な土台になっていくことと思います。(監修:小児科医室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。