【脳科学者が解説】自然に触れると知的好奇心が格段に伸びる! 知っておきたい子どものこと Vol.16 | HugMug
公園で虫を探したり、木の実や落ち葉を拾ったり、土や水に触れたり。何気ない自然遊びには、子どもの脳を育てる要素がたくさん詰まっています。今回は、脳科学者の瀧靖之先生に、自然遊びが子どもの脳や心、体に与える影響を伺いました。デジタルやAIが身近な時代だからこそ、ますます大切にしたいリアルな体験の意味から、親子ですぐにできる自然遊びまでご紹介します。
教えてくれた人瀧 靖之先生東北大学加齢医学研究所 スマート・エイジングセンター センター長、教授医師、医学博士。MRI画像を用いて、子どもの脳の発達や生活習慣との関係を研究。これまでに16万人以上の脳のMRI画像を読影・解析し、脳の基礎力をアップさせる方法を解説した『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えてください』(日経BP)など著書多数。1児の父。
自然のなかで遊ぶと
子どもの「知的好奇心」が伸びる
自然遊びには、子どもの脳の発達を促すさまざまな要素が詰まっています。そのなかでも特に注目したいのが「知的好奇心」です。知的好奇心とは、知らないことや新しいことに興味をもち、もっと知りたい、理解したいと思う気持ちのこと。学びの原動力となり、将来の学業成績や仕事のスキルなどにも関わる、とても大切な力です。
自然には、昆虫や鳥、植物、石、雲、星空など、子どもの興味を引き出すものがいっぱい。何度も触れることで、その対象への興味や関心が高まる「単純接触効果」が期待できます。さらに、少しでも知識があることで、より興味や関心が湧きやすくなる「流暢性効果」も。例えば、自然のなかで見つけた昆虫を図鑑で調べて知識を得ると、次に出会ったときにはもっと知りたくなる。
こうした体験と知識の積み重ねが、子どもの知的好奇心を伸ばしていきます。
自己肯定感や運動能力、創造性も! 自然体験で身につく、たくさんの力
ほかにも、自然遊びが子どもにもたらすメリットはたくさん。具体的に見ていきましょう。
―「できた!」が自己肯定感につながる
山を登る、魚を釣る、虫を捕まえるなど、自然遊びには、自分なりに工夫して何かを達成する場面がたくさん。思い通りにならない自然のなかで試行錯誤することで、「自分が努力すれば、何かを変えられる」という自己効力感が育まれ、自己肯定感も高まります。
―体を動かしながら脳も育つ
走る、登る、投げる、ジャンプするなど、自然のなかでは全身を使ったさまざまな動きを経験できます。思いきり体を動かして遊ぶことで、運動を司る脳の領域「運動野(うんどうや)」が刺激され、脳と体の発達にもよい影響が。
―注意力や空間認知、創造性も刺激する
たとえば、昆虫や魚などの生き物を探すときには「注意力」、木登りや野山を駆け回るときには「空間認知」、落ち葉や石を使って遊ぶときには「創造性」。
さらに、「どうしたら楽しい?」と工夫するなかで、自分で考えて行動する力も育まれます。
未就学児〜小学校低学年は
自然遊びにぴったりの時期
2〜3歳以降は、身のまわりのものへの興味や関心、つまり「知的好奇心」がぐんぐん伸びていきます。さらに3〜5歳ごろには、運動を司る「運動野」の発達も進みます。そのため、この頃は自然のなかで見たり、触ったり、体を動かしたりする経験をたっぷり楽しみたいもの。特別な学びを用意しなくても、自然のなかで自由に遊ぶこと自体が、この時期の子どもにとって大切な経験になります。
日常の「ダメ!」から解放されると
脳の使い方が変わるってホント?
家のなかや街のなかでは、「走っちゃダメ」「大きな声を出さないで」など、子どもの行動に「ダメ!」と言わなくてはいけない場面も多くあります。もちろん、社会生活を送るうえでは、やりたいことを理性で抑えることも必要です。こうした脳の働きを「トップダウン」といいます。
しかし、自然のなかでは、そうした抑制から解放されやすくなります。さらに鳥のさえずりや小川の音、風の心地よさなどを五感で受け取ることで、外からの刺激で脳が働く「ボトムアップ」の状態に。こうして脳の使い方が切り替わることで、認知機能や心地よさ、幸福感などに繋がると考えられています。これは「集中力が続かない」「落ち着きがない」といった子育ての悩みに対しても、よい影響を与える可能性があります。
デジタル・AI時代だからこそ 五感で感じる“リアルな体験”を大切に
実際にその場所へ行き、自分で感じるからこそ得られるものがあります。
近所の公園やいつもの散歩道で
気軽にできる自然遊びは?
―テーマを決めて宝探し
「赤い葉っぱを探してみよう」「まん丸の石はあるかな?」「いろんな木の実を見つけよう」など、テーマをひとつ決めて探してみましょう。視覚や触覚に加え、注意力や空間認知も使う遊びです。
―生き物や植物をじっくり観察
昆虫や鳥、魚、植物など、自然のなかで見つけたものをじっくり観察するのもおすすめ。図鑑や動画で見たものを実際に発見すると、「本当にいた!」という驚きが、さらに興味を広げるきっかけになります。
―木登りや野山歩きで、体を動かす
木に登ったり、でこぼこした道を歩いたりするだけでもOK。筋肉を使うだけでなく、平衡感覚や空間認知を育むことにもつながります。
―泥や砂、水に触れて自由に遊ぶ
砂で山をつくって水を流したり、泥の感触を楽しんだり。
手触りや温度などを五感で感じる経験は、自然科学への興味につながる土台にも。決まった遊び方を用意せず、自由に楽しませてあげましょう。
大人は「教えすぎない」がポイント 好奇心を伸ばす関わり方や声掛けとは?
子どもが何かを見つけても、大人がすぐに答えを教えなくて大丈夫。「これ、なんだろう?」「次はどうしたらいいかな?」と問いかけ、子ども自身が考えられる余白を残すことが、主体性を育みます。
そして何より大切なのは、大人も自然を楽しむこと! 子どもは大人の行動や感情を真似しながら育つからこそ、「自然遊びをさせなくちゃ」と頑張らず、まずは親子で一緒に楽しんでみましょう。
自然遊びはもっと気軽でOK! 近所の公園に行くだけでも十分
「自然遊び」と聞くと、キャンプや川遊びなど、大がかりなお出かけをイメージしがち。でも、特別な場所へ行く必要はありません。近所の公園を歩いたり、道端の草花を眺めたり、空を見上げて星を探したり。
身近なところにも、自然と触れ合うきっかけはたくさんあるのです。回数や時間など、細かいルールを決める必要はなく、無理なく楽しめばOK。「何かをさせなきゃ」と気負わず、親子で気持ちよく過ごす。そんな気軽なところから始めてみましょう。
自然遊びには、子どもの脳を育む要素がたくさん詰まっています。だからといって、「自然のなかで遊ばせなきゃ!」と気負わなくても大丈夫。親子で「おもしろいね」「気持ちいいね」と一緒に楽しむ。まずは、そんな何気ない時間から、気軽に始めてみてくださいね。