ソニーが “子ども投資” を59年間も続ける深い理由
真空管電圧計の製造からスタートして日本を代表するAVメーカーに成長。現在はAVやゲームのハードウェア製造にとどまらず、音楽、映画、金融など多種多様な事業を展開するソニー。その、世界に誇る巨大企業は科学教育発展のための助成財団を運営しています。その助成財団「ソニー教育財団」が設立された経緯、その主な活動内容について公益財団法人ソニー教育財団理事長・高野瀬一晃さんにお話を聞きました。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)
ソニー創業時から教育振興の重要性を説いた創業者・井深大
現在のソニー教育財団という名称になったのは2011年からですが、その大本となる教育助成活動がはじまったのは1946年の創業から13年後の1959年のこと。じつは、ソニーの創業者である井深大は、創業時の『設立趣意書』のなかですでに教育振興の重要性を説いているのです。当時、まずはじめたのは「ソニー小学校理科教育振興資金」というものでした。
とはいえ、教育の助成をするにも会社の資金に余裕がないとできるものではありません。
ソニーの経営が軌道に乗ることとなった大きなきっかけは、トランジスタラジオ、それからテープレコーダーのヒットでした。当初のテープレコーダーは軍が使っていたような大型のものです。それを小型化し、コンシューマー向けのものを開発した。最初の主なお客は裁判所でした。裁判記録をつくるため、速記に代わってテープレコーダーが採用されたのです。
ただ、裁判所といってもそんなにたくさんあるわけではありませんよね。では、次の大きなお客はというと、これが学校だった。1950年から1960年ごろにかけては、NHKが学校向けの教育放送をスタートし、学校では映像や音の活用が加速化するなど「視聴覚教育」が盛んになった時期です。
わたしが中高生の頃にもLL教室などにテープレコーダーはありましたが、当時はもっと幅広い使われ方をしたようですね。こうして、学校がテープレコーダーを導入してくれたおかげで、ソニーは大きな利益を得ることができました。そして、その利益をどうしたか。井深大は「学校から頂いた利益は学校に還元しよう」と考えたのです。
画像提供:ソニー教育財団
こうしてはじまったのが「ソニー小学校理科教育振興資金」でした。現在も「ソニーの教育助成論文」として続いています。