教科書のないイギリスの小学校の「国語」教育とは? 多読と『オックスフォードリーディングツリー』の魅力
ビフとチップ、それにキッパーという3人の子供が出てくる物語があります。日本では決して有名な作品ではありません。けれどイギリスの子供だったら、誰でも知っているでしょう。
実はこの3人、イギリスの子供達が学校で文字を読む練習をするために使う、オックスフォード大学出版社の「リーディングツリー」シリーズの登場人物です。英語圏を一歩出たら、知っている人はあまりいないでしょう。けれどイギリスでの知名度は、『ハリー・ポッター』にも劣らないかもしれません。
検定教科書のないイギリスの小学校での「国語」教育
前にもお話ししましたが、イギリスの小学校には検定教科書がありません。クラス内でディスカッションをするために、英語の授業ではクラス全員が同じ本を読みますが、日々の宿題や音読課題には、それぞれの子供のレベルに合った本が渡されるのです。
字の読み方に慣れていない子供が、少しずつ新しい単語に出会い、読むのに慣れていくようにデザインされた、オックスフォードの「リーディングツリー」シリーズ。英語を母語とする子供にとって、いわゆる「国語」の副読本として、イギリスの約80%以上の小学校で採用されています。
「オックスフォードリーディングツリー」の中でさらにシリーズ分けがされており、冒頭でご紹介した3人の子供が登場するお話に加え、ドキュメンタリーや、過去の名作の書き直し版、詩や科学、歴史など、取り扱われるトピックも多彩です。
ビフとチップ、そしてキッパーが出てくる物語は、だいたい4歳から6歳ぐらいまでの年齢の子供が、よく学校で手渡されて家に持って帰ってきます。我が家の下の子供は、7歳になってからビフやチップと別れて、SFのシリーズやスポーツ選手の伝記を持って帰ってくるようになりました。
下の子の読書のペースは最近までゆっくりだったので、私も下の子供の宿題に付き合っているうちに、この3人の様々な冒険を何度も耳にすることになりました。日本でも購入が可能です。8つのレベル別のストーリーがまとめて紹介されているガイドブックもあります。
教科書がないことの大きなメリット
科目によっては教科書がないことを不便だと感じることも多いのですが、こと英語に関しては、このシステムはとてもうまく機能しているように思います。様々な家庭から、全くバラバラな能力を持って子供達が集まってくるとき、画一的に授業をするのではなく、その子供のレベルに合った本を読み進められるというのは、大きなメリットです。