“ミッフィー” 生みの親、ディック・ブルーナの世界。子どもたちに希望をあたえる「うさこちゃん」絵本
うさぎの大人気キャラクターのひとつ、ミッフィー。その愛すべき “うさこちゃん” を生み出したのは、オランダのグラフィックデザイナーであり絵本作家でもあるディック・ブルーナです。
こどもから大人までを魅了し続ける絵本の数々には、彼のこだわりと深い想いが詰まっています。可愛いだけではない、子どもたちにたくさんの気づきをくれるディック・ブルーナの世界をご紹介します。
ディック・ブルーナってどんな人?
ブルーナは1927年にオランダ、ユトレヒトで生まれ、両親の豊かな愛に恵まれて育ちました。子どもの頃から絵を描くことが大好きで、父親が出版社経営だったこともあり常に本に囲まれた環境のなか、レンブラントやゴッホの画集に特に衝撃を受けたそうです。
第二次世界大戦中に疎開した際は生活が大変ながらも、思う存分絵を描くことに没頭、充実した日々を過ごしました。
父親の会社経営は継ぎませんでしたが、その出版社で年間100冊以上の装丁や宣伝用ポスターのデザインをこなすなど、グラフィックデザイナーとして成功を納めます。
26歳で初めてのオリジナル絵本を出版。2017年に89歳で亡くなるまで120冊以上の絵本を自身のアトリエで全てひとりで描き続けました。
ブルーナのこだわり「シンプルであること」
ブルーナのいちばんのこだわりは、「シンプルであること」。それはフランスの画家マティスから大きな影響を受けたどり着いた、揺るぎない彼のこだわりなのです。
「子どもたちには、いろいろ知ってもらいたいし、多くのものを感じてもらいたい」けれど、押しつけるのは好きではないし、教えるという視点に立つことも嫌います。なぜなら、「子どもたちが自分のイマジネーションを使って、自然に吸収していくのがいちばんの学び方だと思うから」
(引用:講談社編集(2018),『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』, 講談社.)
そして、絵本に現れる彼のこだわりが次の3つです。
【線は手描き】
ブルーナは定規などを使わず手描きにこだわりました。
そこには「絵本を通じて温かい気持ちを届けたい」という創作の原点が込められています。手描きならではの少し “震える線” はブルーナの “心臓の鼓動”、そして彼の個性なのです。
【厳選ブルーナカラーで表現する世界】
色には特にこだわりがありました。白と黒以外に使う色は6色のみ。茶色とグレーは動物を描くために必要に迫られて加えた2色で、思い入れがあるのは「赤」