そこには食育だけで終わらない “学び” がある! 自然を体いっぱいに感じる「田植え体験」
初夏を迎えると、全国各地で田植えが始まります。田植えは農家の一大仕事ですが、最近は、子どもや女性を対象にした体験型の田植えイベントが行なわれることも多くなりました。都心部でビルの屋上庭園に田んぼを作って田植えをできるところもあるようです。
家族が力を合わせて1束ずつ手で植えていた田植えは、時代とともに稲作の機械化によって効率的に行われるようになりましたが、この流れに逆らうように手で植える田植え体験に多くの人が関心をもつのはどうしてなのでしょう。そこには、普段の生活ではなかなかできない経験をしてみたいという好奇心をくすぐられる魅力があるのではないでしょうか。
自然に触れ合うことが減ってきている子どもたちにとって、田植え体験は好奇心の刺激以外にもさまざまな「学び」をもたらせてくれます。今回は、田植え体験を通して得られる学びについて考えてみましょう。
お米ができるプロセスを学び、食べ物を大切にする心を育む
「米」という字が八十八という数字を組み合わせて作られているのは、お米ができるまでに88回の手間がかかるという説もあるように、たくさんの手間をかけてお米は作られます。
田植えの前には、籾(もみ)を発芽させ田んぼへ植えられるように苗を育てておきますし、水を張った田んぼの土を混ぜて苗が育ちやすいように泥を平に整える「代かき(しろかき)」のような準備が必要です。
また、田植えが無事に終わってからも、肥料を与えたり、虫や病気から稲を守ったり、台風の被害を防いだりといった作業が稲刈り前まで続きます。ようやく実りの時期を迎えると、稲刈りを行なって天日稲の束を干し、脱穀してようやく玄米の状態になります。
各地で体験型イベントとして企画される田植えは、分けてもらった少量の稲の苗を1束ずつ手でほぐして植えていくという、稲作のごく限られた一場面の体験でしかありません。しかし、このわずかな作業を通して子どもたちが自分の手で植えた苗がすくすく育っていく姿をイメージできれば、私たちが毎日食べているお米を作るのに時間と手間がかかっていることを知るきっかけになるでしょう。
江戸時代から続く米農家で、農薬や化学肥料をほとんど使わず米作りを行っている「お米農家やまざき」のホームページでは、5月の「田植えと刺し苗」について以下のように書かれています。我が子には、この命のつながりを感じられるような子どもに育ってほしいものです。