英語話者=50数ヶ国語話者!? 幼少期から始めたい文学教育と、魅力あふれる世界の絵本
この連載のタイトルは「ものがたりが開く世界への扉」ですが、ちょっと目を上に向けていただけるとサブタイトルが見えるかと思います。「子どものための英文学」となっていますね。一番最初の記事ではこんな風に書きました。
実は「英文学」というくくりには数多くの問題があるのですが、とりあえず、今の段階では「英語で書かれた」「主にイギリスの」文学、としておきましょう。堅苦しく考えることはなく、ピーター・ラビットも、不思議の国のアリスも、ハリー・ポッターも英文学の世界の住人です。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|英語をただ学ぶだけでは身につかない?英文学から得られる文化的な読解力「文化リテラシー」)
ここで言っている「数多くの問題」について、今日は「英」の部分を取り上げて、少しだけ考えてみましょう。お父さんとお母さんが気付いているかどうかで、物語を読んだ後の子供への声がけが変わってくるでしょうし、そもそもどんな本を子供と読むべきかという判断も変わってくるだろうと思うからです。
「国」と「言葉」と「物語」は一直線ではつながらない?
「英文学」の「英」とは、「英語」なのでしょうか、「英国」なのでしょうか?さらにいえば、「英国」はいつの時代のことをさしているのでしょう?かつて大きな帝国を持っていたイギリスの国境は、時代によって大きく動きます。そのうちの、どの国境が「英文学」について話をする時に適用されるのでしょう?
今年2月に公開されたディズニー映画『メリー・ポピンズリターンズ』を親子で観に行ったという方もいるかもしれません。
その原作となった、古典的な児童文学の名作『メアリー・ポピンズ』を例にあげてみましょう。ロンドンを舞台にした、とてもチャーミングで人気のある物語です。
けれども、原作の作者のP.L. トラヴァースは、オーストラリア生まれです。子供時代をオーストラリアで過ごし、大人になってからイギリスに移住しました。イギリス生まれの父親を持ち、オーストラリアとイギリスの二重国籍者です。
さて、『メアリーポピンズ』は英文学でしょうか、それとも、オーストラリア文学でしょうか?
英語話者=50数ヶ国語話者!?○ヶ国語という表現の落とし穴
「英文学」という言葉の中には、「国」や「言葉」や「文学」に関わる概念が複雑に入り混じっています。この国と言葉と物語の関係性について、子供達にできるだけ柔らかい態度を持っていてもらいたいのです。