ミュージカル『アニー』の演技はなぜ変わったのか? 子どもの自主性を伸ばす教育――
ミュージカルアニーは1968年以降、日本の舞台で演じられています。30年以上続いているミュージカルで、およそ200万の人が鑑賞している、すばらしい舞台です。私も、もう50回は観ています。アニーはもともと、アメリカの新聞で連載されていた漫画でした。そして1976年にミュージカルとなり、ブロードウェイで上演され、それが日本に入ってきたのですね。
ストーリーは、孤児院にいるアニーが両親を探しに行くお話です。舞台は孤児院ですから、子役が多く登場します。ダブルキャストでアニー役2名、孤児役12人です(孤児役のほかに、タップキッズやダンキッズの子役たちもいます)。
子役たちは、どのような練習を積み、舞台に立つことになるのでしょうか。今回は、子役たちの教育と、学校教育の共通点について考えてみたいと思います。
子どもに「教える」のか「考えさせる」のか
アニーの最初の演出家の時代は、子どもでも「プロとして」「大人として」教育されていたようです。私がアニーの舞台を見始めた当時、テレビ番組でよく「メーキング映像」が放送されていました。演出家が考えた演技をうまくできるように育てられている、という印象でした。子役の子ども自身が演技を考えるのではなく、「演出家の考えている演技の意味をつかませようとしている」感じでしょうか。少なくとも、私にはそう見えました。
プレゼントされたペンダントを、アニーが「いらない!」と言って投げ捨ててしまうシーンがあります。
このシーンの練習風景はテレビでよく放映されていました。アニー役になった子どもたちのほとんどが、演出家が求める真意が理解ができなかったようで、うまく演技ができずに泣いていましたが、「プロとして」「大人として」なんとか頑張って、最終的には舞台に立っていたのです。
しかし、2001年、演出家が日本人から外国人に変わりました。そして、先ほどのアニーがペンダントを投げるシーンの演技も変わったのです。物語の内容は同じでありながら、なぜ、アニーの演じ方が変わったと思いますか?
それは、新しい演出家になってからは、子役自身にそのシーンの演じ方を考えさせているから。子役の子ども自身が、そのときのアニーの心情を考えて演技をするため、演技の仕方が子役によって変わるのです。心情の捉え方がその子によって変わるので、演技も変わってくるのですね。それについて、演出家は「その演技にその子なりの意味があればいい」