子どもを自立できる人間に育てる――脳科学者が考える「理想の子育て」
親であれば、自分なりの「理想の子育て」というものを考えているでしょう。もちろん、それぞれにちがっていいものですが、子育てには不安がつきものです。自分の理想に自信を持てない人もいるかもしれません。そこで、著書の『脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A』(ダイヤモンド社)で注目を集める脳科学者・西剛志先生に、先生ご自身の「理想の子育て」とはどんなものなのかを教えてもらいました。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/和知明(インタビューカットのみ)
自立するために必要な「困難を乗り越える力」
脳科学をベースとして子育ての研究を続けるなかでわたしがいきついたのは、子育ての最終目標は「子どもを自立できる人間に育てること」です。どんなに勉強ができても、どんなにスポーツで優れた力を発揮できても、他人に依存しなければならない人間は、将来的にしっかり生きていくことができないからです。
では、自立するためにはなにが必要なのかというと、そのひとつは「困難を乗り越える力」だと考えています。人は人生を歩むうえでいくつもの困難にぶつかります。
それらを乗り越えられなければ、その先の人生を歩むことができません。
ところが、いまの子育てを見ていると、その大切な「困難を乗り越える力」を育む場面をわざわざ奪っているように思えるのです。それはきっと、子どもに対する愛情からなのでしょう。子どもがつまずく前から困難を排除する――。そういう親が増えているのではないでしょうか。
その場合、子どもは、親のそばにいるときには一度も挫折を味わうことなく成長していきます。でも、その子どもが親元を離れて社会に出たとしたらどうなるでしょうか。人生には困難にぶつかる場面が必ず訪れます。
それが人生ではじめての困難だったとしたら……?過去に困難を乗り越えた経験が一度もないのですから、たった一度の挫折で心が折れてしまうということになりかねません。
チャレンジに対してしっかり褒めることが大切
子どもの「困難を乗り越える力」を育むには、大ケガをするといった本当に危険なこと以外の小さな困難を乗り越える経験を、小さい頃からどんどんさせてほしいと思います。そして、そのチャレンジに対してしっかり褒めてほしい。
わたしには幼い息子がいます。わたし自身は子どもの頃からチャレンジ精神旺盛なタイプでしたが、息子は不思議なほど慎重派でした。