デンマークの小学校には試験も通知表も存在しない!? 知れば驚く “世界の通知表事情”
デンマークの通知表:評価してはいけない!?
最後は、北欧の代表的な福祉国家として知られるデンマークの通知表です。文教大学教授の太田和敬さんによれば、デンマークの義務教育は9年間。一般的には小学校と中学校が一緒になっている学校で行なわれますが、子どもを就学させずに家庭で教育することも認められています。
もちろん児童の学力などはその都度先生らによって確認され、教育に生かされているとのことですが、じつは法律によって7年生までは試験を行なうことが禁じられており、通知表も存在しないそうです。
8年生からやっと13段階の絶対評価で、成績がつけられるようになるとのこと。ただし、それも点数化された通知表ではないのだとか。
しかし、9年間の義務教育を終える時点で、就学・家庭教育関係なく学力テストを受け、義務教育修了の認定を獲得しなければならないのだそう。つまり、試験がなくても、点数化された通知表がなくても、学びを蓄積していく必要があるわけです。
太田さんは、日本の受験体制や評価制度が、日本の子どもを「勉強嫌い」にしていると述べます。一方で、受験や評価がほとんどないデンマーク人は、国際的に見てもかなりの勉強好きなのだとか。
2019年版の「世界競争力ランキング」では、日本が30位であるのに対し、デンマークは8位。「政治汚職度調査(クリーンな政治が行なわれているかどうか)」や「生活満足度調査」においても、日本とは違いデンマークは常にトップか上位です。
評価制度がある日本の世界的な評価が低く、評価制度をおおむね排除したデンマークの世界的な評価が高い――何とも興味深く、皮肉な事実です。
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ニュージーランド、オランダ、アメリカ、デンマークの通知表事情を紹介しました。
個人の力で教育制度を変えることはできませんが、各国の “いいとこどり” はできるはず。子どもが通知表を持ち帰ったとき、「そういえばあの国は、努力を評価していたな……」などと思い出し、子どもに声をかけてみてくださいね。
(参考)
Forbes JAPAN|小学校の評価、親はどう受け止めたらいいのかベテラン家庭教師に聞く
みんなの教育技術(小学館)|1年生 はじめての通知表 子どもと保護者が喜び合えるものにしよう!
文部科学省|教育課程部会総則・評価特別部会|資料6-2学習評価に関する資料
Glolea![グローリア]|子連れニュージーランド移住日記 子どもの通知表
All About|子供の褒め方5つのNG例とは?
リナ・マエ・アコスタ著, ミッシェル・ハッチソン著, 吉見・ホフストラ・真紀子訳(2018)