非認知能力は育っているか? 子どもが「目をキラキラさせる世界」があれば安心です
年々、教育界における注目度が上がっている「非認知能力」。読者のみなさんも、何度となく見聞きしているでしょう。しかし、研究者によって非認知能力に対する見解はさまざま。今回は、幼稚園教諭の経験もあり、著書『非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』(講談社)で注目を集める、玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友先生に非認知能力に対する見解を聞きました。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
非認知能力だけが重要ではないことに要注意
「認知能力」とは、読み書きや計算のようにテストなどで測ることができる、いわば目に見える力のことです。それに対して、「非認知能力」は、「非認知」というだけにテストなどでは測りにくい、目に見えづらい力といえます。それに含まれるものは本当にさまざまですが、社会性や情動性、意志力、自己肯定感、なにかをやり抜く忍耐力、コミュニケーション能力、他者に対する思いやり、自分をコントロールする自己制御など、主に「心」や「社会性」にまつわる力です。
非認知能力が注目されるようになった大きなきっかけは、アメリカの経済学者であるジェームズ・ヘックマンが行った子どもたちの追跡調査でした。
その追跡調査の結果、幼児期に質の高い教育を受けた子どもとそうではない子どもでは、大人になってからの経済力などに大きな差が生まれたことがわかったのです。そして、大人になって経済力や社会的地位が高くなった人は、幼児期に非認知能力を高めるような教育を受けていた。
ただ、誤解してはならないのは、「非認知能力が重要」だからといって「認知能力が重要ではない」というわけではないこと。そのどちらも大切な力ですから、しっかり伸ばしてあげるべきでしょう。
時代の変化によって、非認知能力を獲得する機会が激減
また、非認知能力が注目を集めることとなった背景には、先のヘックマンの研究の他に、時代の変化が挙げられます。本来、非認知能力とはなにか特別なものなどではなく、むかしであれば子どもの普段の遊びやあたりまえの子育てのなかで勝手に育っていたものです。
かつての子どもたちは、豊かな自然のなかで元気にたくさん遊び、異年齢の子どもたち、あるいは異世代の大人とも触れ合う機会が数多くあり、多様で具体的な体験を通した経験を積み重ねていました。すると、遊びのなかでうまくいかないことがあっても、熱中して続けるうちにうまくいくといった経験を通じて、困難を乗り越えるために必要な意志力や忍耐力、やり抜く力を獲得することができた。