「私には才能がない」は努力をしない人の言い訳。スズキ・メソードの人間教育
『すべての子どもたちに音楽を――フランスの “感性を育てる” 音楽教育』では、音楽が子どもたちにすばらしい影響を与えることについて詳しくご紹介しました。その本質を理解し、「音楽を通した人間教育」を世界に広めた人物が、ヴァイオリニストの鈴木鎮一氏です。
歌手のさだまさし氏やヴァイオリニストの葉加瀬太郎氏、海外では世界的ヴァイオリニストのヨーヨー・マ氏も、スズキ・メソードを経て、音楽の世界で成功した方々です。そして音楽家に限らず、医師や弁護士、科学者など、音楽とは違う分野で大成された人が多くいるのは、音楽を通して育む「人間教育」の賜物でしょう。
70年の長きに渡って46か国の子どもたちを導いてきた教育法はどんなものなのでしょうか。そこには、AIの時代を生き抜いていかねばならない今だからこそ必要な「人間力」を育む要素が、たくさん詰まっているようです。今回は、そんな「人間教育」の面にフォーカスした音楽教育「スズキ・メソード」をご紹介します。
赤ちゃんが言葉を覚えるように音楽を学ぶ「母語教育法」
戦前、鈴木氏が帝国音楽学校教授だった頃に子どもたちへの早期教育の道がスタートし、“才能教育第1号”と言われる桐朋学園元学長の江藤俊哉氏へのヴァイオリン指導が、「母語教育法」を生むきっかけになりました。
江藤少年への指導に悩んでいたとき、「日本人は皆、流暢な日本語をしゃべっている」ことに気づき、衝撃を受けた鈴木氏は、この事実に才能教育の礎を見いだします。
日本で育つ日本人はもれなく完璧に日本語を操るようになります。その点において、ほぼ例外はありませんよね。“母国語”でなくあえて“母語”となっているのは、第一言語(はじめに覚える言葉)は、必ずしも国と結びつかないから。そこに潜む教育のヒントはとても大きなものでした。
赤ちゃんは毎日繰り返し耳にしている言葉を、いつのまにか話せるようになります。それを誰も特別なこととは思いません。お父さんお母さんがていねいに、よく話しかけることで、言葉が話せるようになり、たくさんの言葉を身につけていきます。
(引用元:スズキ・メソード音楽教室|母語教育法)
音楽についても同じことが言えるのではないか?母語が育つときと同じように、毎日音楽に触れる教育があればいいのではないか?まさにスズキ・メソードの原点はここにあります。
そして、「母語のような教育」