「ダメでしょ!」と叱るのは意味がない。親子で問題解決をするための対話テクニック
子どもが悪いことをしてしまったとき、つい「だめ!」と叱ってしまいがちですよね。でもそれだけでは、子どもの問題はまったく解決されません。反抗心も手伝って、また同じことを繰り返してしまうことも。
家庭でのしつけのヒントにもつながる実践法が、アメリカやイギリスなどの学校、そして日本にも徐々に広まってきています。子育てのブレない柱となりうる「Restorative Practice(修復的実践)」から学んでみましょう。
加害者と被害者が対話。被害者の8割以上が満足する
“Restorative”の動詞形”restore”は「復元する・修復する」という意味。
「修復的実践」とは、「コミュニティの中でいかに人間関係を円滑によりよいものにするか」を目指す社会科学理論です。
その目的は、よりよい社会の実現、犯罪など社会的弊害の回避と、それによる被害の修復と復元。つまり、「何か問題が起こったとき、当事者を含めた関係者全員が、納得するまで話し合うことで、問題解決を目指そうとする」こと。
その元となったのは、司法で使われる「Restorative Justice(修復的司法)」。修復的司法では、犯罪は加害者だけが悪いわけではなく、「地域社会に起きた害悪」であるというとらえ方をします。そして、被害者はもちろんのこと、加害者、それぞれの家族、地域の人々にとってプラスになるよう、その害悪を修復しようと考えるのです。実際に、米ミネソタ大学の調査では、犯罪の被害者と加害者が対話をすることで、被害者の8割以上が満足し、加害者の再犯率が約3割減少したのだそう。
この原理が欧米の学校教育にも取り入れられ、問題を起こした子どもへの懲罰の代わりに、対話で解決する方法の試行錯誤が修復的実践として始まったのです。
海外での「修復的実践」の取り組みとその効果
「修復的実践」は、オーストラリア、アメリカ、イギリスなどで実践が進められ、その効果が証明されてきました。
■オーストラリアでの修復的実践
対話を取り入れた「修復的実践」は、オーストラリアの学校教育に、1994年頃に初めて実践的に取り入れられました。その際の核となる方針は次のとおりです。3つの原理、「尊重」「配慮」「参加」のもと、以下のような原則が設けられました。
5つの原則
- 関係者はそれぞれみな変わりうる存在であるという認識
- 人格尊重が基本
- いじめによる弊害に耳を傾ける
- 害されたものの回復に努める
- 最終的には関係者全員がコミュニティに再統合され、より強い絆で結ばれることを目指す
この取り組みの実績が認定され、2000年代前半にはオーストラリア全土の学校で実験的に採用されるように。